OZZY OSBOURNE ~ So Tired (1984)
森友問題が招きかねない日本外交の危機
2018.03.20
(http://www.sankei.com/premium/news/180320/prm1803200007-n1.html )
平成14年9月17日、会談を前に握手する小泉純一郎首相(左)と
北朝鮮の金正日総書記。奥左は当時官房副長官だった安倍晋三首相=平壌
学校法人「森友学園」(大阪市)の国有地売却に絡む決裁文書改竄(かいざん)問題の展開を注視しているのは日本国民だけではない。
北朝鮮や中国、韓国のように
国際社会での安倍晋三首相(63)の存在感に
眉をひそめる国々も
日本の政治状況をみているはずだ。
北朝鮮情勢をめぐっては、4月末に南北首脳会談、5月には史上初の米朝首脳会談が予定されている。
これで事態が本当に動くかは現時点ではわからない。
それでも、米朝が動き出した場合を想定してバスに乗り遅れるなと言わんばかりに、日本国内でも日朝首脳会談への期待がじわじわと出始めた。
韓国は待望の南北首脳会談だけでなく、米朝首脳会談も日朝首脳会談も自分たちが実現につなげたと誇示したいのかもしれない。
しかし、まだ北朝鮮の非核化に向けた具体的な動きが一つも見えてこない中で前のめりになってもいいことはない。
日朝首脳会談は現段階ではまだ確実なものになっていない。
そもそも南北首脳や米朝首脳会談の成否も見通せない。
米朝首脳会談が失敗に終われば、米国による軍事攻撃が現実味を帯びるとの指摘もある。
早期の拉致被害者の帰国を実現する必要性や緊急性もあるだけに、チャンスがあれば最大限にいかさなければいけない。
複数の日本政府関係者は「何があっても大丈夫なようにしておく」と慎重に言葉を選びながら話す。
軍事攻撃があるのであれば、一層のこと日朝首脳会談の開催が強く求められるところだ。
ただ、日朝首脳会談をやろうとなっても、その準備は簡単ではない。
仮に会談が実現すれば、安倍首相は金正恩朝鮮労働党委員長との会談で日朝国交正常化の条件である核、ミサイル、拉致問題の包括的解決を求めるだろう。
とりわけ拉致問題が譲れないことは明確だ。
しかし、平成14年の小泉純一郎首相と金正日総書記(いずれも当時)の日朝首脳会談の時と同じように、金正恩氏が「拉致被害者は全員死亡した」と言ってきたらどうするのか。
または、被害者数人は帰国させるが、それ以外は死亡したと説明したらどうするのか。
北朝鮮との首脳会談実現に踏み切る場合、ありとあらゆる事態を想定した上での準備が必要となる。
そうした決断や準備は政権が強ければ進展する可能性が高い。
ところが、いまはタイミングが悪すぎる。
決裁文書改竄問題をきっかけに北朝鮮と有利な交渉をする際に不可欠である強い政権基盤を失いつつあるからだ。
どの国もそうだが、北朝鮮も強い相手には下手に出るが、弱い相手には強気に出る。
安倍政権の政治基盤が弱ければ弱いほど交渉に有利だと見て高圧的に出るはずだ。
「安倍首相は内閣支持率を上げるために外交での得点が欲しい」とにらんで、日本に何らかの妥協を迫るかもしれない。
強い政権は譲歩も妥協も突っぱねる力を持つが、弱い政権は受け入れることが精いっぱいかもしれない。
韓国でさえ、米朝首脳会談のおぜん立てをしたとの自負と勢いで、日本に対する優位性をちらつかせてくる可能性がある。
例えば慰安婦問題や徴用工問題について2国間問題で攻勢に出てきかねない。
中国は共産党が国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正を決めたことで、習近平体制の長期化が確定的になった。
その強権ぶりはこれまでにも増して大胆になりかねない。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領海侵入が常態化するのではないか。
だが、もっとも懸念されるのは米国だ。
トランプ大統領が安倍首相に感銘を受けたことの一つは、一度辞任した後に再び首相の座に就き、さらにその後の国政選挙で勝利し続けていることだ。
トランプ氏のように「力」を信望する指導者にとって、他国の指導者の国内政治基盤の脆弱化は頼りなく映るに違いない。
安倍首相のことを「戦士」と呼ぶほど敬意を持っているトランプ氏だが、日本国内の政治状況次第では現在の強固な日米関係の変質を招きかねない。
日米の離反にもつながりかねず、北朝鮮や中国が歓迎しないわけはない。
トランプ氏と強い関係を築いた安倍首相に対する欧米などの対応も変わってくるだろう。
麻生太郎副総理兼財務相(77)の辞任と、それをきっかけに始まる安倍政権の弱体化が実際に始まったとした場合、米朝などは日本を蚊帳の外に置いて物事を決め、拉致問題は置き去りにされる悪夢が現実味を増すだろう。
森友問題を利用した安倍政権倒閣運動は、国際社会のパワーゲームに直結し、日本の立ち位置を極めて危うくしかねないことを深刻にとらえるべきである。(政治部 田北真樹子)
2018.03.20
(http://www.sankei.com/premium/news/180320/prm1803200007-n1.html )
平成14年9月17日、会談を前に握手する小泉純一郎首相(左)と
北朝鮮の金正日総書記。奥左は当時官房副長官だった安倍晋三首相=平壌
学校法人「森友学園」(大阪市)の国有地売却に絡む決裁文書改竄(かいざん)問題の展開を注視しているのは日本国民だけではない。
北朝鮮や中国、韓国のように
国際社会での安倍晋三首相(63)の存在感に
眉をひそめる国々も
日本の政治状況をみているはずだ。
北朝鮮情勢をめぐっては、4月末に南北首脳会談、5月には史上初の米朝首脳会談が予定されている。
これで事態が本当に動くかは現時点ではわからない。
それでも、米朝が動き出した場合を想定してバスに乗り遅れるなと言わんばかりに、日本国内でも日朝首脳会談への期待がじわじわと出始めた。
「悪夢」の再来にならなければいいけど・・・
1971年10月: 中国(中華人民共和国)国連加盟。
中国(中華民国)国連脱退。
1972年02月:「ニクソン・ショック」(ニクソン大統領が北京を訪問)
1972年09月: 慌てふためいた日本は「日中共同声明」を発表。
1978年08月:「日中国交正常化」(日本は台湾が中国の一部を承認)
1979年01月:「米中国交正常化」
(米は台湾が中国の一部を認識したが承認はしていない)
その後の中国、何か変わったかといえば、
何も変わらず中華思想のまんま (>_<)
1971年10月: 中国(中華人民共和国)国連加盟。
中国(中華民国)国連脱退。
1972年02月:「ニクソン・ショック」(ニクソン大統領が北京を訪問)
1972年09月: 慌てふためいた日本は「日中共同声明」を発表。
1978年08月:「日中国交正常化」(日本は台湾が中国の一部を承認)
1979年01月:「米中国交正常化」
(米は台湾が中国の一部を認識したが承認はしていない)
その後の中国、何か変わったかといえば、
何も変わらず中華思想のまんま (>_<)
韓国は待望の南北首脳会談だけでなく、米朝首脳会談も日朝首脳会談も自分たちが実現につなげたと誇示したいのかもしれない。
しかし、まだ北朝鮮の非核化に向けた具体的な動きが一つも見えてこない中で前のめりになってもいいことはない。
日朝首脳会談は現段階ではまだ確実なものになっていない。
そもそも南北首脳や米朝首脳会談の成否も見通せない。
米朝首脳会談が失敗に終われば、米国による軍事攻撃が現実味を帯びるとの指摘もある。
早期の拉致被害者の帰国を実現する必要性や緊急性もあるだけに、チャンスがあれば最大限にいかさなければいけない。
複数の日本政府関係者は「何があっても大丈夫なようにしておく」と慎重に言葉を選びながら話す。
軍事攻撃があるのであれば、一層のこと日朝首脳会談の開催が強く求められるところだ。
ただ、日朝首脳会談をやろうとなっても、その準備は簡単ではない。
仮に会談が実現すれば、安倍首相は金正恩朝鮮労働党委員長との会談で日朝国交正常化の条件である核、ミサイル、拉致問題の包括的解決を求めるだろう。
とりわけ拉致問題が譲れないことは明確だ。
しかし、平成14年の小泉純一郎首相と金正日総書記(いずれも当時)の日朝首脳会談の時と同じように、金正恩氏が「拉致被害者は全員死亡した」と言ってきたらどうするのか。
または、被害者数人は帰国させるが、それ以外は死亡したと説明したらどうするのか。
北朝鮮との首脳会談実現に踏み切る場合、ありとあらゆる事態を想定した上での準備が必要となる。
そうした決断や準備は政権が強ければ進展する可能性が高い。
ところが、いまはタイミングが悪すぎる。
決裁文書改竄問題をきっかけに北朝鮮と有利な交渉をする際に不可欠である強い政権基盤を失いつつあるからだ。
どの国もそうだが、北朝鮮も強い相手には下手に出るが、弱い相手には強気に出る。
安倍政権の政治基盤が弱ければ弱いほど交渉に有利だと見て高圧的に出るはずだ。
「安倍首相は内閣支持率を上げるために外交での得点が欲しい」とにらんで、日本に何らかの妥協を迫るかもしれない。
強い政権は譲歩も妥協も突っぱねる力を持つが、弱い政権は受け入れることが精いっぱいかもしれない。
韓国でさえ、米朝首脳会談のおぜん立てをしたとの自負と勢いで、日本に対する優位性をちらつかせてくる可能性がある。
例えば慰安婦問題や徴用工問題について2国間問題で攻勢に出てきかねない。
中国は共産党が国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正を決めたことで、習近平体制の長期化が確定的になった。
その強権ぶりはこれまでにも増して大胆になりかねない。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領海侵入が常態化するのではないか。
だが、もっとも懸念されるのは米国だ。
トランプ大統領が安倍首相に感銘を受けたことの一つは、一度辞任した後に再び首相の座に就き、さらにその後の国政選挙で勝利し続けていることだ。
トランプ氏のように「力」を信望する指導者にとって、他国の指導者の国内政治基盤の脆弱化は頼りなく映るに違いない。
安倍首相のことを「戦士」と呼ぶほど敬意を持っているトランプ氏だが、日本国内の政治状況次第では現在の強固な日米関係の変質を招きかねない。
日米の離反にもつながりかねず、北朝鮮や中国が歓迎しないわけはない。
トランプ氏と強い関係を築いた安倍首相に対する欧米などの対応も変わってくるだろう。
麻生太郎副総理兼財務相(77)の辞任と、それをきっかけに始まる安倍政権の弱体化が実際に始まったとした場合、米朝などは日本を蚊帳の外に置いて物事を決め、拉致問題は置き去りにされる悪夢が現実味を増すだろう。
森友問題を利用した安倍政権倒閣運動は、国際社会のパワーゲームに直結し、日本の立ち位置を極めて危うくしかねないことを深刻にとらえるべきである。(政治部 田北真樹子)