【古森義久の緯度経度】
トランプ大統領の出現は
「オバマ的統治」を排すことへの
期待の表れではないか?
2017.02.04
(www.sankei.com/premium/news/170204/prm1702040033-n1.html )
2日、米ワシントンで演説するトランプ大統領 (UPI=共同)
米国のドナルド・トランプ大統領の新たな動きが
日本の主要メディアの総攻撃を浴びている。
とくに同大統領の 「テロ懸念」 7カ国からの入国制限は
全米が一致して非難しているかのような構図が描かれた。
だが、肝心の米国民はこの制限策への支持が 57% と、
反対の 33% を大幅に上回る世論調査結果が出た。
米国の現実のどこかが日本側のレーダーに映されないのでは、
という疑問がわく。
そんな現実の一つは米国の国際関係の権威たちの
「世界も米国もいまや戦後最大の安保面での転換点を迎え、
既存の国際秩序の瓦解 (がかい) の危機に直面するにいたった」
という見解である。
その危機が
トランプ氏という異端の人物の選出の基盤となった
ともいうのだ。
こうした見解の第 1 は、
民主党系のブルッキングス研究所上級研究員、
ロバート・ケーガン氏が 1 月下旬に発表した
「自由主義世界秩序の衰退」 と題する論文だった。
米国有数の国際戦略の権威とされる同氏は
本来、保守志向だが、オバマ前政権にも起用されてきた。
同論文は
第二次大戦以降、米国主導で構築し運営してきた
自由主義の国際秩序がいまや、
中国とロシアという反自由主義の軍事重視 2 大国の挑戦で
崩壊への最大の危機を迎えた、と指摘する。
その原因は
1991 年のソ連崩壊以後の歴代米国大統領が
「唯一の超大国」 の座に安住し、
とくにオバマ前政権が
「全世界からの撤退」 に等しい軍事忌避の
影響力縮小を続けたことだという。
同種の見解の第 2 は、
共和党系のアメリカン・エンタープライズ研究所 (AEI) の
安保研究部長、トーマス・ドナリー氏が 1 月下旬に公表した
「冷戦後時代の次の時代」 というタイトルの論文である。
国際戦略や軍事史を専門とする同氏は
議会の超党派の安保関連各委員会の顧問などを務めてきた。
同論文によると、
ソ連崩壊で始まった 「冷戦後時代」 は
米国が唯一の超大国としてなお
世界の安全保障の基本を押さえてきたが、
オバマ前政権の国際関与からの 「離脱」 や 「漂流」 で
その時代も終わった。
いまやその混迷の世界の
力関係を変えようとする最大の主役は中国であり、
それを抑止してきた米国の軍事力が
オバマ前大統領の政策で
実効力を失ってきた、というのだ。
その結果、
世界は戦後でも最大の地域戦争の危険に面し、
米国は軍事面での抑止のための
リーダーシップ再発揮を迫られているという。
第 3 の見解は、
政治雑誌 「ウィークリー・スタンダード」 の編集長、
ウィリアム・クリストル氏が同誌 1 月下旬号に掲載した
「長い休日」 と題する論文だった。
同氏は共和党政権の副大統領首席補佐官なども務めた
保守派の論客である。
同論文は
米国がソ連崩壊後の 25年ほど
根本的な危機や脅威のないまま
「休日」 に近い安逸を過ごしてきたが、
いまや荒波への真剣な航海を強いられるのだ、
と警告する。
その理由は
中国の軍事的な膨張や
ロシアのクリミアへの侵略などを
放置したオバマ前政権の消極策だという。
これら 3 論文は、
米国でこうした国際的変動への意識が
「危機での強い指導者志向」 とも相乗して
オバマ氏的な統治を排し、
従来の枠組みを破るトランプ氏への期待に寄与した
という判断をも示していた。
日本側でも認識すべき現実だといえるだろう。
(ワシントン駐在客員特派員 古森義久)
◆ 病むアメリカ、滅びゆく西洋 ― 目次 ―
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◆ トランプ大統領の制限策、アメリカでの支持率は57%
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