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◆ 超大国の自殺 ( 9) 第1章 ⑦ 痩せ細った時代の肥った街

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パトリック・J・ブキャナン著/河内隆弥訳
大国の自殺
― アメリカは、2025年まで生き延びるか? ―
2012年11月5日 第1刷発行 幻冬舎


第1章 超大国の消滅

(7痩せ細った時代の肥った街


「赤字 (デフィシット) の心配はやめる時が来た
―― そして債務 (デット) について騒ぎ始めよう」

ワシントン・ポストの社説が警告した。

「リセッションより前に、財政状況の方が深刻である。

いまそれは大変なことになっている」。



   2009年度、一会計年度のみで、
   債務は GDP の 41% から 53% に跳ね上がった。

   この額は、政府が自己の信託基金から借りたものを
   含んでいない。

   2018年までには経済の 85% まで上昇する道筋を歩んでいる。



「公的債務」
――市民、会社、年金基金、外国政府に負う債務――
に焦点を当てると、
14兆ドルを優に超えている本当の国家債務を
過小に述べることとなる。

しかしこの数字ですら、
社会保険、医療保険、政府と軍人の恩給といった
制度的コミットメントに伴う 「構造的財政不足」 に
見合うものではない。

会計検査院の元院長、デヴィッド・ウォーカーによれば、
これら資金の裏付けのない債務は62兆ドルに及ぶという。

2011年に最初のベビーブーマーの波が
社会保障の全額支給対象として適格となる。

そして 2029年にはブーマー世代の全員が対象となる。

債務のエベレストは世界から見えることとなる。

合衆国の債務破裂のリスクとはどんなものなのだろうか?



中国、日本、湾岸諸国のそれぞれの政府、
そして国家ファンド運営者は、自分たちの保有する米国国債に、
いつの日か、アメリカがデフォルトを起こすか、
またはインフレーションによって激安になってしまうのではないかと、
疑うことになるだろう。

彼らの不安が増大すると、
債権者たちは新規購入を手控えたり、
売却に向かうか、
リスクの上昇に応じる高金利を要求するようになるだろう。

連銀は貸主を引きつけるために金利引き上げに動くだろうし、
その金利上昇は経済をリセッションに陥れる。

一旦悪循環の過程に入ると、とウォーカーは警告する。

合衆国債務の金利払いが連邦予算の最大項目となるだろう。



議会はこの怖さを認識しているだろうか?

2009年、議会は明らかにこのことを知らなかった。

12月14日のワシントン・ポストのトップ記事は、こうはじまっていた。



   「日曜日、上院は、
   4470億ドルにのぼる多項目支出案に対する
   オバマ大統領御の署名を得た。

   法案は、多数の支払いひも付き項目と、
   政府機関の一部に対する二桁の支出増加を含んでいる」。



   上院法案の総合計は莫大なコストとなる ――

   「 1 兆 1000億ドル。

   これは何十もの連邦機関の
   平均 10% の支出増加を含んでいる」。



この最後の数字は重複している。

 1 兆ドルの不足を視野におさめ、
政府与党の民主党が制する議会は、
すべての連邦機関の予算を
平均 10% 増加させる法案に賛成したのである。

アメリカにとって最悪の時は、
コロンビア特別区にとって最良の時なのである。



民主党員は、
ブッシュ時代の不作為を埋め合わせるため、
カネを注ぎ込むことが必要であると言う。

しかし、ブッシュ時代は
L・B・ジョンソンの 「偉大な社会」 以来、
最大に連邦予算を肥大化させた。

ブッシュは 1 兆ドルの戦争と 1 兆ドルの減税を実行したのだ。

彼が大統領を辞めたとき、
保守陣営は、彼を、最初の 「偉大な社会の共和党員」 と呼んだ。



とはいえ、2009 年、ディック・ダービン上院議員は、
もっと多くの予算が必要だ、
「ご家庭の安全のために・・・お巡りさんが街にいてもうらうのに。
緊急電話の受付、消防士、警官たちへの支出は
必要不可欠の投資である」
と述べた。



しかし、警官、消防士、電話受付などは、
州ないし地域の責任に属するものではないか?

「酔っ払いの船乗りみたいにカネを使うのだ、普通の仕事である」
と、ジョン・マケインは言う。

しかし陸の休暇で船員が飲酒するときは、
自分たちの金を支出している。

彼らがまた船に乗り込むときは、もう酔いは醒めている。

議員たちは金遣いを止めようとはいない。

それが彼らのやっていることだ。

しかし、彼らがいま使っているカネは、
将来世代が返さなければならない。



民主党員は、ホワイトハウスの首席補佐官、
ラーム・エマニュエルの決めたルールの一つを守っている。

「危機をおさめてはいけない。
それはデカいことの出来るチャンスなのだ」。

小さいことも同じことだ。

タックスベイヤーズ・フォー・コモンセンス
  (訳注: TCS = 常識的納税者の会。
  連邦予算を監視する無党派 NPO)
によれば、
上院議員法案には 5200ものひも付き項目があり、
それは、それぞれ平均して
下院議員一人あたり 12件、上院議員一人あたり 50件にのぼる。

政権与党は政府を大きくすることに、
2008年 ~ 2009年の危機を利用した。

2009年のオバマの景刺激法案のときから
2010年 9月にかけて、
100万人単位の民間雇用が消滅したが、
新たな 41万 6千人の政府の仕事が創られた。

「アメリカ人の 85% は民間で働いているが、
政府の再生行動データベースは、
『創られた、ないし、守られた』 仕事の
5つのうち、4つは政府部門だったことを示している」。

その意味するところは、政治的私欲にほかならない。

政策の受益者たる膨大な多数がそうしたように、
官僚の膨大な多数が民主党に票を投じたのである。

ポストが報じた同じ週に、USA トゥデイは一面トップに
次のように書いた。



   リセッションの最初の 1 年半で、
   10万ドル以上の俸給を受け取る連邦職員の数は
   公務員の 14% から 19% に跳ね上がった
   ―― これには時間外手当とボーナスを算入していない。

   連邦職員はわが世の春を謳歌している
   ―― 給料と雇用の両面で ――
   民間部門の 730万人に及ぶ雇用喪失を犠牲とした
   リセッションのもとで。



リセッションが始まったとき、国防総省は、
15万ドルを稼ぐ文民職員、1,868名を抱えていた。

2009年12月までに、国防総省職員の
15万ドル以上を稼ぐ職員は 10,100名となった。

リセッションが始まったとき、運輸省では、
17万ドルを稼ぐ職員が 1 人いた。

2010年までに同省では、
報酬 17万ドル以上の職員数は 1,690名に達した。



2005年から 2010年にかけて、
15万ドル以上を得る連邦職員数は 10倍となった。

「大恐慌以降最悪のリセッション」 となったオバマ政権の
最初の 2年で、それは倍増した。



     
   そういえば日本でも、民主党政権のときに、
   「脱官僚、政治主導」 とか掲げながら、
   実際には裏で官僚 OB を大量に登用して
          アンチョコを作ってもらってましたっけね。
 
   だけど、なんたって 「OB」 ですからね、
   政府案の古臭いことといったらなかったw

   それと同時に、やたら新しい部門を新設したり、
   新しい役職を新設したりしてましたっけ。
 
   「民主党」 とは、いかなるものや?!

   独裁者の手から、権利を人々の手に ・・・
   の、はずなのですが、実際には共産主義政権と同じく、
   「人々」 は愚かだから、指導者が必要だ
   と、差別するんですよねw
 
   そしてその 「指導者と仲間たち」 が 「独裁者」 となって行く。

   「政治主導」 なんて掲げること自体、
   自分が主導したいだけなんでしょうw
   



コロンビア特別区の北方と西方にある 3つの選挙区、
メリーランド第 8区、バージニア第 11区、同 8区は、
アメリカのもっとも有権者数の多い 10の選挙区の中に入っている。

また 10の主要首都圏地区の中で、特別区メトロ沿線地区は、
1 人当たりの所得で第 1 位を示している。



金融危機は、ワシントンとウォールストリートの所産である。

しかしワシントンにとってこれ以上良い日はなかった。

2010年 8月に USA トゥデイが報告したように、
21 世紀の最初の 10年、合衆国政府職員は
仲間のアメリカ人を放っておいた。



   9年連続して連邦職員は民間労働者に比べて
   より良い報酬と増強する各種恩典にあずかっていた。

   その 10年で連邦職員と民間との待遇の格差は
   2倍に拡がった。



   2009年、連邦の文民職員の平均賃金と各種恩典の
   合計は 12万 3049ドルだった一方で、
   民間労働者はすべて合計して、
   6万 1051ドルがその報酬だった・・・。

   職員との格差は、2000年の 30415ドルから
   2009年度は 6万 1998ドルに拡大した。



とんでもないことである。

合衆国職員、アメリカ人の誰よりも雇用の安定を享受している連中が、
平均的アメリカ人の 2倍の年収と福祉の恩典を得ているのである。

これはわれわれの仲間の何人かが育ったコロンビア特別区ではない。



この政府は、我々の父親が思い描いた政府なのだろうか。

それとも、それを倒そうと銃をとった政府なのだろうか?



2010年の 「失敗」 のあと、
オバマは、世の中の連邦職員給与に対する怒りに呼応して、
2年間の凍結を提案した。

しかし、USA トゥディが伝えたように、
その凍結にはタネも仕掛けもあった。

全面的には昇給は凍結される。

しかし、「連邦職員の多くの、他の給料はアップする。

年功給 (ステップと称する) 部分の昇進、資格の昇進、ボーナス、
時間外賃金などの現金支払いのかたちで」。



連邦職員のほとんどは、ジェネラル・スケジュール (GS=一般俸給表)
にしたがって、1 級から 15級までランクづけられ、
それぞれの中に 10のステップがある。

ステップの上昇は、勤続年数によって概ね自動的である。

しかし、メリット (成績) が昇給を促進し、
中にはステップを多段階特進することもある。

必ずしも全員が毎年ステップの昇給を得られるわけではないが、
職員をグループとしてみると、毎年平均 2% の昇給となっている。




国債の海外保有率
(http://money.smart-ness.net/1213.html )

日    本 :  6.3% 
アメリカ :45% 
イギリス:32% 
ド  イ  ツ:63% 
フランス :39% 
イタリア : 51% 
ギリシャ :61% 

※ 日米欧は2011年9月末時点、
  他の国は2011年6月時点 財務省調べ 


ということで、日本は特出して、
自国民の、国債保有率が高いです。


円が強いのはこのためですね。




もくじ
(hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2017-01-28
 )

日本語版への序文
序文
まえがき 分裂してゆく国家
 1 超大国の消滅
 2 キリスト教国アメリカの死
 3 カソリックの危機
 4 白いアメリカの終焉
 5 人口統計の示す冬
 6 平等か、自由か?
 7 多様性 (ディヴァーシティ) カルト
 8 部族主義 (トライバリズム) の勝利
 9 「白人党 (ホワイト・パーティ)」
10 緩慢な後退
11 ラスト・チャンス
謝辞
訳者あとがき



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