若狭和朋著
『昭和の大戦と東京裁判の時代』 より
ナチを逃れてアメリカに亡命した
多数のマルクス主義者たち
(前略)
アメリカで 『西洋の死』 が出て衝撃を与えた。
日本では 『病むアメリカ、滅びゆく西洋』 として刊行されている。
このフランクフルト学派の理解を抜きには、
いまの日本や世界の世相の病根を理解することはできないだろう。
ロシア革命のあと、
ハンガリー革命に敗れたルカーチは、
ソ連に亡命した。
次々に敗北していくヨーロッパ革命の退潮を見て、
彼は革命が起らない原因を次のように考えた。
それは人民の頭を縛る文化の力と考えたのである。
それは著書 『歴史と階級意識』 のなかで、
プロレタリアートだけではない人間全体の 「自己疎外」 からの解放、
つまり古い価値観の廃絶、
それに替わる新たな価値観なしには
革命の成就はありえないと考えた。
一時勝利したハンガリーの革命政府で、
彼は教育人民委員 (教育大臣) 代理に就き、
自分の理論を実践した。
学校の生徒たちは
恋愛の自由や古い性道徳からの脱却を教えられた。
女性は古い性道徳から脱却するように求められた。
疎外からの脱却ということから、
あらゆる 「文化」 規範が批判の対象となったのである。
女性の貞操観念などは反革命的と嘲笑された。
キリスト教、教会、家族制度、父権、権威、
性的制度、伝統、国家、愛国心、尊敬心・・・
ありとあらゆる徳目や 「価値」 は批判されなければならないとされた。
ハンガリー革命が再び敗北すると、
彼はワイマール共和国 (ドイツ) に逃れ、
フランクフルト大学にマルクス研究所を創設した。
1923 年 (大正 12 年) のことである。
「古い」 マルクス・レーニン主義は
自覚しないままに権力奪取に成功してしまったのだ、
と彼は考えた。
彼のこの考えには明らかにマックス・ウェーバーの影響がある。
資本主義社会の誕生には、
資本主義の精神 (エトス) が産業革命等を指導したからだ
と彼らは考えたからである。
マックス・ウェーバーもユダヤ人である。
革命意識に鋭く目覚めた一団の 「前衛」 たちが、
文化破壊をロシアで成し遂げ、革命に成功したのであり、
このように人間を疎外している文化を破壊しなければ
共産主義には到達できない。
そして、革命の主導者は
疎外された労働者ではなく
知識人でなければならない。
なぜなら、
「批判理論」 を駆使し、
諸学問を学際的に結合し、
資本主義社会の構造を批判の対象として構造化できるのは
知識人だからである。
インテリゲンチュアこそ物象化の止揚の任務を担う主体なのだ。
このような思想のフランクフルト学派は、
コミンテルン的な旧式なマルクス・レーニン主義と違って
(重なった部分も大きいが)、
知識人向きのマルクス主義として
大学・メディアの世界に広がっていった。
(中略)
『日本国憲法』 法制工作で名の出るイノマンも、その一人である。
日本人では、あの福本イズムの福本和夫が初期の紹介者だ。
フランクフルト学派の一派が
戦後の日本を改造した
(前略)
高校教師の世界も同じである。
ほとんどの都道府県で
教育委員会の最高幹部のなかに
「隠れキリシタン」 ならぬ、隠れマルキストがいる。
現に文部省の最高幹部 (事務次官) には
「カクメイをやるには入るしかない」
と若き日に公言した人物がいた。
彼は今日の 「ゆとり教育」 なる教育破壊の責任者のひとりである。
名など知る人ぞ知る、だ。
彼は文部省 (旧) のキャリアとして入省していた。
※彼=後に小泉内閣の文部科学事務次官となった小野元之氏
彼らの生き方のモデルは 「騙しも可」 のマルクーゼである。
彼はライヒやフロムを引きながら、
父権の確立した家族、
つまりは権威主義的家族は全体主義や軍国主義の基盤になるから、
家族ではなく個人の人格を尊重する家庭にならねばならないのだ
と言っている。
そしてくだんの次官は、
民主教育の理論を体した者こそが、教育界を指導しなければならない
と、ルカーチを賞賛していた。
「俺は国家の中枢に入るつもりだ。
プロレタリアートなんぞ、いまや幻想だ。
二・二六 (事件) では、俺は一個中隊を指揮したかった。
諸君もこれからどんどん国家の中枢に入れよ。
総評 (当時) なんかにいくら説教しても革命は来ない。
中から、そして上から、知力と権力で革命はやるのだ。
マルクスも 『ドイツ・イデオロギー』 あたりでは、そう言えばよかったのだ。
マックス・ウェーバーはマルクスの裏を取ったのだ。
ルカーチはそれを知ったのだ。
だから潜るさ・・・」
これは 23 歳当時の会話だった。
彼は文部省に入った。
そして彼は、ジェンダーフリーや、ゆとり教育の旗手でいる。
同類の一人が外務大臣になった時には、
私はさすがにささやかな義憤を感じたものである。
※ 同類の一人=おそらく川口順子氏
私は法学の徒だが、
東大法学部憲法学 (元) 教授宮沢俊義氏
(この先生はフランクフルト学派として令名が高い)
門下のイデオローグたちが何を考えているかぐらいは
想像できるつもりである。
GHQ 御用達のフランクフルト学派の牙城は
簡単には揺るがないだろう。
(後略)
イデオロギーとは
「虚偽意識」 にほかならない
(抜粋)
ユダヤ人の不幸な天才ルソーは、『社会契約論』 や 『エミール』 を著し、
「人民」 解放の語り口で
差別に苦しむ同胞の解放のために気を吐いた。
アメリカ建国のエネルギーは、
ユダヤ人たちの生存への意志と情動に大きく依拠している。
フランクリン・デラノ・ルーズベルトは
モーゼの再来とユダヤ人世界では囁かれたものである。
彼の先祖は 17 世紀にオランダから移住したユダヤ人社会の名門である。
ルーズベルトたちが、
ユダヤ人のホロコースト (抹殺) を進めるナチス・ドイツを
許すはずがない。
『三国同盟』 (※日・独・伊) の愚を、
日本人はまるで知らなかったのである。
マッカーサーは 「真っ赤さー」 と言われた時代があった。
GHQ のピンカーズ (赤いやつ) が持ち込んだ
マルクス主義の虚偽意識 (イデオロギー) を
条文化したものが 『日本国憲法』 である。
これらは、
民法・教育基本法・男女共同参画法・家族・相続・扶養・・・税制に至るまで、
敗戦日本の骨格・血肉となっている。
(第一次) 安倍内閣が
「戦後レジューム」 の改革を標榜したが、
挫折した。
安倍氏に向けられた凄まじい敵意は、
利権とイデオロギー構造の深部から発している。U
◆ (28) 第四章 ① フランクフルト学派、アメリカ上陸
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◆ トロイの木馬 (中からの破壊)
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