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◆ (56) 第九章 ② 二つのアメリカ

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ROYAL REPUBLIC ~ American Dream (2016.10.17 公開)

商品の詳細
ROYALREPUBLIC  『WEELEND MAN
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パトリック・J・ブキャナン著
宮崎哲弥監訳
病むアメリカ、滅びゆく西洋
2002年12月5日 成甲書房

第九章 怯える多数派



(2) 二つのアメリカ



分かれ道に来たらとにかく進め、とヨギ・ベラは言った。



共和党は今、分かれ道に立っている。
1964年、サンフランシスコ・カウパレスにおけるバリー・ゴールオウォーター選出同様、
運命の分かれ道に。



解説者こぞって指摘のとおり、
人種・文化は大統領選の結果を左右する決め手となりつつある。
黒人・ヒスパニック・ユダヤ票は根こそぎゴアに流れても、
白人男性票の 6割を押さえたブッシュ氏が勝利を収めた。
郡別得票マップがアメリカの二層分裂を如実に示している。
ワシントン、オレゴン、カリフォルニア 3州において、
ゴアは海外沿いの郡は制覇したが内陸部の郡で勝ったのはかろうじて 1 つ。
ネヴァダ、ユタ、アイダホ、ワイオミング、ネブラスカ、カンザスの計 230郡のうち
ゴアが制したのはわずか 3郡。
ミシシッピ周辺ではかなりの健闘を見せ、
ニューオーリンズ、バトンルージュ、メンフィス、セントルイスの 4都市と
セントポールを制したものの、それ以外の中西部では全滅だ。



歴史家ラルフ・ライコによれば、ゴアの勝った郡を 1つも通らず大陸横断ドライブができる。
だが、ロードアイランドを除き、ブッシュの取った郡を通らずに横断できる州はほとんどない。



21世紀の政治を決する要因は何か。
『ワシントン・ポスト』 紙は道徳と文化だと指摘する ――



中絶、銃規制、その他種々の文化価値論争が
有権者の投票行動に劇的変化を及ぼしている。
長いこと民主党を支持してきた白人労働者階級が共和党寄りに、
逆に共和党の支持母体である白人富裕層が
一挙にルーズヴェルトの党に鞍替えした・・・
強制バス通学や消極的姿勢等、人種問題が
ブルーカラー票を共和党に呼び込み、
文化論争 ―― とりわけ中絶の権利 ―― が
白人知識階級を民主党支持に走らせた。



年収 5万ドル超の有権者からの得票では、
ブッシュは敵をわずか 7% 上回っただけ。
全米法律家協会と全米医師会はかつては共和党の牙城だった。
が、今や両者とも敵の地盤えある。
メディアに関してはとっくの昔に。
投票日の夜、
「CNN
 のスタッフは・・・ニュースでゴア勝利を伝えても、
歓声に沸く局内の様子まで伝えないよう予め注意されていたに違いない」
と、テリー・ティーチアウトは述べている。




専門職エリートが左傾化する一方、
白人貧困層は右傾化するという逆転現象が生じている。
ポストのトム・エドソは、
「ケンタッキーで貧困にあえぐ10の郡・・・
かつてトルーマン民主党が共和党を凌駕していた ―― のうち
9つまでをブッシュが制し、
それと対称をなすかのように、裕福で教育どの高い郡はあらかたゴアが制した」
事実を発見した。



白人票では、ゴアは年収海藻階層にかかわらず完敗した。
唯一の例外、
年収 1 万 5千ドル未満の貧困層は
49% 対 46% でブッシュと票を分けた。
貧しき者の味方のはずが、目を瞠 (みは) るばかりの支持率低下だ。
「うちの選挙区での論点はたったの 3つ」。
数年前、あるオクラホマ州議員が言っていた。
「神とゲイと銃だ!」



人種にかかわらず、教会を訪れる頻度は
その人の投票傾向を示すバロメーターである。
頻繁に通う人は圧倒的に共和党派、
そうでない人は民主党を支持する傾向にある。
やはりこの国は二分している。



2000年の選挙で共和党陣営は人種・文化・生命論争を避けた。
クリントンとゴアへの敵意、嫌悪感が保守回帰の流れを生むに違いないと踏んで。
その読みは当たった。
が、ゴアとネイッダーの得票数合計がブッシュの得票を 300万票上回るという事実が、
もしかしたら共和党の最終警告となるかもしれない。



ブッシュ政権は
生命、人種偏見のない社会、伝統的価値をしっかり擁護しないと
すべては失われてしまうだろう。
共和党も経済論議のみならず
文化・倫理問題についてもリーダーシップを発揮しないと
国民に見切りをつけられる。
ブッシュ氏にとって最高裁判事指名が試金石となろう。
中絶賛成派の指名は右派を意気阻喪させる。
仮に次回選ばれる判事が
スーター、スティーヴンス、ギンズバーグ、ブライアー側につくような人物であれば、
共和等に残された議論はどの悪魔がいちばんましかというレベルになってしまう。
政界王者ジョー・ルイスの挑戦者ビリー・コンに対する台詞は、
文化闘争に身を置く大統領にも当てはまる。
「逃げはできても隠れることはできないぜ」

          ◇


目 次
(
http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2016-08-15  )

日本版まえがき
序として

第一章 西洋の遺言
第二章 子供たちはどこへ消えた?
第三章 改革要項
第四章 セラピー大国はこうして生まれた
第五章 大量移民が西洋屋敷に住む日
第六章 国土回復運動
レコンキスタ
第七章 新たな歴史を書き込め
第八章 非キリスト教化されるアメリカ
第九章 怯える多数派
第十章 分断された国家
著者あとがき
監訳者解説




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