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◆ (39) 第五章 ⑦ 予言への返答

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PANIC! AT THE DISCO ~ Bohemian Rhapsody
                ――1975-QUEEN
Billboard TP 25 HOT ROCK SONGS (2016.08.27付)
No.7 (New)



パトリック・J・ブキャナン著
宮崎哲弥監訳
病むアメリカ、滅びゆく西洋
2002年12月5日 成甲書房



第五章 大量移民が西洋屋敷に住む日

7. 予言への返答



7世紀初め、地中海世界はキリスト教国だった。
が、622年のメディナへの聖遷から 50年足らずのうちにイスラム勢力が地中海南岸を制する。
8世紀初頭にはアラブ人とベルベル人が軟弱な西ゴート族を一蹴、スペイン、ピレネー山脈を越えフランスに進撃、歴史合戦を繰り広げた。
イスラム軍はこのツール・ポワチエの戦いで 「フランク王国の鉄槌」 カールマルテルに撃破され撤退した。
「かくしてキリスト教は救われた。シャテルローの南からポワチエの北、二本の川が作る小さな三角州にて」と、ヒレア・ベロックは書いた。
小さな王国アストゥリアス――スペイン国土回復運動 (レコンキスタ)の基地――を除き、イベリア半島は数世紀に渡ってイスラム支配が続いた。
1492年、イスラム最期の拠点が制圧されるまでは。



イスラムの東欧侵攻は遅かった。
14世紀にバルカンに進出したオスマン帝国は 1389年、コソヴォの戦いでセルビアを掌握する。
1453年にはコンスタンチノープルが陥落した。
1683年、ウィーンを包囲したトルコ軍はポーランド国王ヤンⅢ世に撃退されるも、結局、1913年までバルカン諸国を支配し続けた。



西側帝国の絶頂は第一次大戦終結とともに訪れた。
1917年 11 月、英国外相アーサー・バルフォアはパレスティナにユダヤ人の祖国を建設すると宣言、アレンビー将軍率いる英軍がエルサレム入城を果たした。
英仏両国はサイクス・ピコ協定を結び、戦利品を分割。
30年後の 1948年、イギリス帝国およびアメリカ主導の国連の庇護の下、アラブにユダヤ人国家が誕生した。
もっとも、インド、パレスティナ、ヨルダン、エジプト、イラク、湾岸を手放したイギリスは衰退に入り、フランスもすぐあとを追う。



今日、世界中でイスラム勢力が盛り返している。
フィリピンではイスラム分離主義者の活動が広がり、インドネシアではイスラム軍とキリスト教分離主義者が小競り合いを起こしている。
パレスティナからパキスタンにかけては群雄がペンタゴンと世界貿易センター (WTC) の殺戮者に拍手喝采を送った。
タリバンは長年に渡り雄様・ビン・ラディンとテロ集団を保護し、チェチェンの反乱軍援護のために中央アジアに武装集団を送り込んでいる。
2001 年 3月、タリバン指導者オマルは偉大なるバーミヤン石仏像を含むすべての像を、「異端の偶像」 を理由に破壊を命じた。



イスラエルはヒズボラ神の党の攻勢によりレバノンから締め出され、さらにハマス主義と目される 「インティファーダ」 によってガザと西岸地区からも追い出されつつある。
トルコとアルジェリアでは 90年代、選挙でイスラム勢力が台頭すると、軍の圧力で阻止する手段に出た。
エジプトでは原住民クリスチャンに対する迫害が再燃。
ナイジェリアでは北部の 10州でイスラム法が施行されている。



ヨーロッパでもキリスト教は滅びつつある。
閑散とした教会を尻目にモスクは人で溢れんばかりだ。
ムスリム人口はフランスで 500万人、EU 全体では 1200万人から 1500万人。
ドイツにあるモスクの数は 1500。
イスラム教はユダヤ教に代わり、欧州第二の宗教の座に就いた。
キリスト教時代は去り、イスラム時代が始まったのだ。
2000年、世界のムスリム人口は初めてカトリック人口を上回った。



アフガニスタン、イラン、スーダンは周辺国の模範たつ現代国家を築き上げるために 「イスラム帝国」 思想は捨てたが、彼らのイスラム信仰は滅びていない。
科学技術、経済、産業、農業、軍事力、民主的ルール、どれをとっても欧米、日本に大きく水をあけられているイスラム世界ではあるが、彼らは先進国がとうの昔に失ったものを持っている――子供を欲する気持ち、自分たちの文化文明、家族、信仰を維持しようとする意志を。
現在、土着民が滅びそうにない西洋の国を探すのは、土着民が激増しそうにないイスラム国を見つけるのと同じくらい難しい。
彼らは西洋が忘れた箴言を覚えている。
「信仰なきビジョンは存在しない」 ということを。

          ◇


目 次
(
http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2016-08-15 )

日本版まえがき
序として

第一章 西洋の遺言
第二章 子供たちはどこへ消えた?
第三章 改革要項
第四章 セラピー大国はこうして生まれた
第五章 大量移民が西洋屋敷に住む日
第六章 国土回復運動
レコンキスタ
第七章 新たな歴史を書き込め
第八章 非キリスト教化されるアメリカ
第九章 怯える多数派
第十章 分断された国家
著者あとがき
監訳者解説



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