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◆ 追い込まれるプーチン、習近平 (1) 今年の世界情勢、鍵は米金利と石油

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日曜経済講座
追い込まれるプーチン、習近平
今年の世界情勢、鍵は米金利と石油

編集委員・田村秀男
2016.01.10
(http://www.sankei.com/world/news/160110/wor1601100004-n1.html )




2016年世界政治経済情勢を左右するは、「米金利」 と 「石油価格」 だとみる。

米連邦準備制度理事会』 (FRB による市場の利上げ期待は原油価格をさらに押し下げエネル
ギー収入が政府予算の 5割近くを占めるロシア
苦しめる

中国の対外膨張を担う国有企業人民元安債務負担増株暴落の泥沼に沈む。


グラフは 「FRB のドル資金発行残高」 と 「原油相場」 と 「中国最大の国有石油資本・ペトロチャイナの
株価の変動」 を重ね合わせている。


FRB 」 は 2008年 9月のリーマンショックのあと 3度にわたって資金を大量増発する量的緩和QE
を実施し、2014年 10月に打ち切った

QE 原油相場見事に連動している

QE の終了観測が出始めた 2014年半ばから余剰ドルは市場から引き揚げ、原油価格は下落し始めた。

利上げの動きの表面化とともに下落傾向は加速している。


ロシア経済」 は旧ソ連時代のエネルギー依存体質を受け継いだ。

1980年代、当時の米レーガン政権は高金利によって石油相場を押し下げた。

資金難のモスクワはワシントンが仕掛ける軍拡に対抗できなくなった。

結末が 1991 年のソ連崩壊である。


ロシア帝国復興をもくろむプーチン政権に対し、ワシントンはレーガン時代の戦略を参考にしているかの
ようだ。

FRB 首脳陣は、2015年 12月中旬に景気への衝撃を憂慮する内外の根強い慎重論を押し切って利上げ
に踏み切ったが、今年も段階的に追加利上げする姿勢だ。

利上げの数日後には米議会が 「米国産石油輸出解禁」 に踏み切り、石油市場急落に弾みをつけた。


ワシントンに振り回されるプーチン政権としては、エネルギー市場の支配権を確保したい。

2014年 3月の 「クリミア編入」、2015年 9月の 「シリアへの軍事介入」 には石油や天然ガスのパイプ
ライン戦略がからんでいる。

ロシア産天然ガスの大半は親米のウクライナを経由して欧州に供給されている。

パイプライン・ルートのクリミア半島はロシアにとって地政学的要衝である。


シリア」 はイラクやイランなど中東の 「欧州向け石油パイプライン計画の中心」 である。

シリア政権が親米欧派に代わってパイプライン計画を実現すれば、欧州はロシアへのエネルギー依存度
を大きく下げられる。

ロシアが反米のアサド政権を見放すはずがない。


ペトロチャイナ」 は国有エネルギー企業の中核として、石油相場が上昇を続けているとき、イランなど
中近東、ベネズエラなど中南米、スーダン、ナイジェリアなどアフリカの産油国への進出を担ってきた。

FRB の QE が終了とともに、原油相場が落ち込むと、海外プロジェクトの多くは巨大損失しか生まなくな
り、相次いで撤収に追い込まれている。

ワシントンは FRB の政策転換によって、反米産油国に浸透する北京の戦略を頓挫させつつある。


ロシア中国は今後、結束を強めるだろうか。

1 月中旬に初の総会が開かれる 『アジアインフラ投資銀行』 (AIIB) は中露間の石油・ガスのパイプラ
イン建設資金提供の母体となるが、ドルが立ちはだかる。

AIIB』 には 「世界最大の資金の出し手である日本」 と 「ドル金融の本家米国」 が加盟していな


このため、『AIIB』 が外貨調達のために発行する債券は米格付け機関から格付けを得られていない。

得られたとしても、信用度は低く、金利が高くなる。

米利上げも足かせになる。


本紙産経新聞を除くわが国の主要メディアの大半が、昨年の 『AIIB』 設立時には 「バスに乗り
遅れるな」 という論調を掲げ、中国共産党が仕切る習近平国家主席のためのこの多国間融資機関
への参加
安倍晋三政権に迫った

AIIB』 が中国膨張の一環であるという現実を無視した甘い考えだ。

不参加はまさに正解だった。


『AIIB』 は人民元建ての資金を活用するしかない。

元は 2016年 10月から 『国際通貨基金』 (IMF)・特別引き出し権 (SDR) 構成通貨入りする予定だが、
元や株式の相場は暴落不安がつきまとうし、金融市場は閉鎖的だ。

貴重なエネルギー資源の代金を使い勝手が悪い通貨で受け取るのはばかげている。

プーチン大統領としても元建ての取引には慎重になるだろう。


ワシントンの金融政策によって追い込まれるプーチン政権はウクライナ、中東でこれまで以上に武力に
ものを言わせようとするのか。

習政権は米利上げというデフレ圧力によって膨れ上がる巨大企業債務 (本欄昨年 12月 27日付参照)
の重圧の中で、破れかぶれのダンピング輸出攻勢をかけるのか。

あるいは、対米協調に転じてワシントンの警戒を解こうとするのだろうか。



2016年世界経済の焦点
米利上げで中国の企業債務危機も

編集委員・田村秀男
2015.12.27
(http://www.sankei.com/premium/news/151227/prm1512270015-n1.html )




2016年世界経済最大の焦点は、中国の企業債務問題のようである。

2015年は中国の生産過剰が世界のモノの市場を揺さぶった。

今度はカネ版チャイナリスクである。

株式を含む世界の市場が中国製債務爆弾に脅かされるのか。


グラフは、主要国・地域の企業債務残高の推移で、国内総生産 (GDP) で米国の約 6割の中国が、
米国をはるかにしのぐ。

党支配の異形市場経済がつくり出した金融バブルである。


中国人民銀行は 2008年 9月のリーマンショック後、「党中央の指令」 を受けて 『国有商業銀行』 を
通じて 『国有企業』 などに巨額の融資を行ってきた。

可能にしたのは 『米連邦準備制度理事会』 (FRB) による量と金利両面での史上空前絶後の 「超金融
緩和政策」 である。

海外にあふれ出たドル資金の多くが中国に向かい、人民銀行はそれを吸い上げて人民元に置き換えた。

地方政府は不動産開発に熱中し、国内需要を盛り上げる。

企業は借り入れては生産設備や不動産に投資し、供給能力を肥大化させてきた。


ところが 2013年から 2014年にかけて不動産バブルがはじけ、景気は失速した。

中国需要減退の影響で国際商品市況は総崩れとなってきた。

モノ版チャイナリスクである。


米 『FRB』 は 2014年 10月末に量的緩和を打ち止め、『FRB』 は金融政策の正常化に踏み出した。

近い将来のゼロ金利解除予想が市場に広がり、余剰ドル流入に支えられた新興国市場が調整局面に
入った。

『FRB』 は 2015年 12月に続き、小幅で緩やかながら利上げを継続していく考えのようで、2016年に
ドル資金の U ターンの流れはさらに強まるだろう。


グラフに戻ると、中国と米国を除けば世界の 「企業債務」 の縮小が続いている。

通常、景気の後退局面で需要が低迷する場合、企業は債務の圧縮に努める。

日欧のパターンがそうだ。

新興国の場合、米利上げ予想と中国需要減退による打撃が重なったために、債務縮小は早く始まった。


対照的に、「中国企業」 のほうは相変わらず債務を膨らませている。

デフレ圧力を受けた企業は返済ができず、金融機関の潜在的な不良債権が増える。

中国の製品価格指数を見ると、2003年末にマイナスに転じた後、下落幅は広がる一方で、2015年
10月には前年比マイナス 7・4% となった。

企業の借入金利は 2014年秋の 6% が 1 年後には 4・35% まで下がったが、企業にとっての実質
金利負担は 12% 近い。


日本ではありえない異常な高金利だ。

中国」 の場合、『国有企業』 は党幹部の口利きで銀行から返済繰り延べ追加融資を受けられる。

さらに高利回りの理財商品発行によって資金難から当面は逃れる。

理財商品を含む中国の国内債務証券発行額は 2015年 3月末で 4・7 兆ドルに上り、前年比で 10%
伸びている。

特に、不動産業大手が 「債務証券発行」 を急増させている。


中国側の統計によれば、対外債務は銀行融資・証券合わせて 1・3 兆ドルで前年比 21% 増と膨らんで
いる。

1 件でも 「デフォルト」 となれば国際金融市場を揺さぶるだろう。

それは 「上海株暴落」 時のケースから見ても明らかだ。


債務問題緩和のためには、人民元の大幅切り下げが一番手っ取り早い。

そうすれば国内産業界の輸出増強とデフレ圧力を緩和できる。

その 「元」 は 2016年 10月から 『国際通貨基金』 (IMF)・特別引き出し権 (SDR )構成通貨となる。

『IMF』 は、「元」 を数年後には変動相場制に移行させるよう求めているので、この際、管理変動相場制
を放棄して、市場実勢にまかせるまま元安を放置すればよい。


ところが、習近平政権にはその気は全くないようだ。


今でも資金流出は止まらず、人民銀行は外貨準備を取り崩して元を買い支えざるをえない。

「元安容認」 となると、資本逃避に加速がかかる。

外準は 2014年 6月の 4 兆ドルから 2015年 11 月には 3・44 兆ドルまで落ち込んだ。

約 5 兆ドルとみられる対外負債を考慮すると、外国からの借金が減ると雲散霧消しかねない。

中国が主導する 『アジアインフラ投資銀行』 (AIIB) は 「対外借り入れ」 を容易にするための隠れみの
なのだ。


ドル相場は円、ユーロなど主要通貨に対して上昇基調にある。

中国がドルにほぼ連動させる外国為替市場の管理変動相場制を続けると、元高によるデフレ圧力が
かかる。

今後、米国が追加利上げに踏み切ると、中国の債務不安はさらに深刻化する恐れがある。

日本としては、「中国の債務爆弾」 に振り回されないよう、財政・金融の両輪をフル稼働させ、内需
主導の成長を確保するしかない。

消費税増税どころではない。



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