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◆ 超大国の自殺 (11) 政治的兵器としての平等

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パトリック・J・ブキャナン著/河内隆弥訳
超大国の自殺
―アメリカは2025年まで生き延びるか?―

2012年11月5日発行 幻冬舎

第6章 平等か、自由か?


11政治的兵器としての平等

平等が金科玉条とされた革命 ― フランス、ロシア、中国、キューバの革命 ― で、旧体制の放擲 (ほうてき) は、
しばしば極悪非道に行われた。

政敵、富裕層、聖職者、詩人たちは、ギロチン、ルビヤンカ刑務所、絞首台、銃殺隊、強制収容所に送り込まれた。

旧支配者たちが監獄、追放、墓のなかに消え去ると、もっと醜悪で野蛮な革命のエリートたちが、宮殿、邸宅、
ダーチャ (別荘) に入り込んだ。



ジョージ・オーウェルの 『動物農場』 がそのあたりを正確に描いている。

「すべての動物は平等である」。

革命はこのスローガンで始まった。

しかしいったん権力が確立されるや、豚たちが農家を占領した。

スローガンは読み替えられた。

「みんな平等だが、ある動物たちは他のものより、もっと平等なのだ」。

平等を標榜する革命は例外なく、少数の独裁権を確立して終わるのである。



「どんな革命にも神話があるはずである」 とイギリスの分学教授、ダンカン・ウィリアムズが書く。

   「もっとも根強い神話は、人々の経験とは大違いだが、過去を支配してきたとされる 『ロマンチック』 な、半分
   信じられてきた 『人間の平等』 である」。



マーガレット・ミードの人類学者としての集大成では、平等の信念は神話と夢から生まれた、と結論されている。

   「人々は平等につくられており、努力し、正当な報酬を受ける能力も等しい、という考え方は、経験が毎日の
   ように否定しているのにもかかわらず、われわれの民間伝承と白日夢のなかに生き続けている」。



「スポーツの世界では、そんな考えは一笑に付されよう」 とウィリアムズは述べる。

   「人類平等を基盤として、誰でもオリンピックで国を代表する、侵すべからざる権利を持っている、などとは
   誰も思わないのである。

   それは、男の子が、自動的に学校のフットボールのチームに入れるとは思っていないことと同じである」。



スポーツは、アメリカインが人類平等の神話を崇めることについて、きわえて重い要素となっている。



過去半世紀、数兆ドルが公共教育に注ぎ込まれた。

そのほとんどの部分は人種のギャップを狭めることを目的にしていた。

しかし、テストの点数の差が縮まることはまったくなかった。



われわれは福祉のマンモスのような国を創りあげたが、それでも貧困ライン以下の数値は 40年前から下げ止ま
っている。

国民の半数は所得税を支払わず、有能な 10分の 1 の国民が、その重荷の 4分の 3を担っている。

しかしわれわれは富の平等を決して実現せず、自由な国民であるかぎり、それを実現するつもりもない。



たしかに、知識の源泉を、労働におかず経済においている限り、格差はますます拡大する。

イデオロギー信奉者の胸のうちにしか存在しない平等社会実現のため、偉大なグレーテスト・ジェネレーション
(訳注: 1930年依然生まれの世代) から受け継いだ素晴らしい国は破壊されようとしているのである。



数十年にわたって、官僚という大部隊をわれわれは養ってきた。

その俸給と恩典はそれを支え、負担する納税者の能力をはるかに上回っている。

一階級から他の階級への、この富と権力の移動は、実際に 「平等」 ゲームが何を意味するのか、最終的にわれ
われに教えてくれる。



   平等の原理はさして重要なものではない。

   多分、ポル・ポトと、ベン・ウォッテンバグ (訳注: アメリカの政治コメンテーター。1933 ― ) 以外には誰も
   実際には信じていないし、また声高に叫ぶ者ほど真面目に取り組んでいないから・・・。

   平等原理の真の存在価値は、政治的な武器として使えることにある。

著作家、エッセイストのサム・フランシスも同じことを言う。



150年前、トクヴィルは平和主義を見透かし ― その背後に権力への意思があることに気づいた。

   民主主義社会で最高権力の集中に成功する唯一の条件は、平等を愛する、また人をして自分が平等を
   愛していると信じ込ませることにある。

   かくして、専制主義の理屈は、昔は難しいものだったが、いまは極めて単純なものとなり・・・たった一つの
   原理に集約される。



ナチ占領時代を生きたベルトラン・ド・ジュヴネル (訳注: フランスの著作家、ジャーナリスト。1903 ― 1987) は、
トクヴィルに呼応する。

   「平等は、ユートピアを追求する国家権力の拡大主義者にとって、力強い味方である。

   強力な武器が一つあれば、政府は万能薬の伝道者として何でも約束できる」。



そのかなり前、イタリアの哲学者、ヴィルフレド・パレートは、

   平等とは、「自分たちに不都合な不平等から逃れようとする個人の直接的利害に関係するものである。

   そして、自分たちに有利な、別の不平等を、つくりあげようとし、そのことに力点がおかれる」

と書いた。



クイ・ボーノ? ― 誰が得する?

これは永遠の問いである。

新たな階層が平等の福音を説きはじめるtき、権力の座にあるのは誰なのか?




意外なところからフランクフルト学派を理解する (^^;
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16 )
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超大国の自殺
  ★ 国家とは何ぞや?
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第6章 平等か、自由か?
  ( 1建国の父たちの信じていたもの
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  ( 2アメリカは平等に関心を持っていたか?

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       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23 )
  ( 4) 「われわれは・・・かれらを平等にはあつかえない
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23-1 )
  ( 5平等について――昔と今
       1963年 ― 自由の鐘をならせ
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23-2 )
       1965年 ―自由だけでは充分ではない
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23-3 )
  ( 6) 「不平等こそ自然である
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  ( 8試験の点数を平等に
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  (10異端者の火刑
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  (11政治的兵器としての平等
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