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◆ 超大国の自殺 (10) 異端者の火刑

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パトリック・J・ブキャナン著/河内隆弥訳
超大国の自殺
―アメリカは2025年まで生き延びるか?―

2012年11月5日発行 幻冬舎


第6章 平等か、自由か?


10異端者の火刑


人類の経験が何を教えているかを受け入れない度合いは、イデオロギーを測るよすがとなる。

2005年 1 月の学術会議で、ハーバードの学長、ラリー・サマーズは、数学と自然科学で女性の終身教授がなぜすくないのかを問われた。

サマーズは、男女の能力に違いがあるからだろう、と正直に答えた。

   「科学とか工学などの特別な部門では、生徒の素質といった問題がある。

   なかでも変化に対応できる素質の問題が」。

サマーズは波に逆らって踏み込んだ。

   それら素質が、「高い目標に向かってたような変化を遂げさせる」。



「わたし、病気になりそう」、と MIT の生物学教授、ナンシー・ホプキンズが口にした。

   「心臓がパクパク、胸がキリキリしました・・・。

   こんな偏見で、本当に病気になり呼吸が出来なくなったわ」。



彼女が部屋を出てゆかなかったら、「わたしは気を失わされるか、放り出されるかしていただろう」、とサマーズは言った。



1 年後、サマーズは 「信頼感欠如」 に問われ、学術教授会の不信任投票可決となり ― 大学を去った。

平等主義とは、異端者に決して甘くないイデオロギーである。



サマーズが辞めさせられた 1 年後、フランシス・クリック博士と一緒に、DNA の二重螺旋構造を発見したことで 1962 年のノーベル賞を受賞したジェームズ・ワトソン博士はサンデー・タイムズに寄稿して述べた。

   「わたしはアフリカの将来について、まことに悲観的に考えている」

   「あらゆる試験の結果が、そのことを真実ではないと伝えているのにもかかわらず ― 社会政策のすべてが、
   かれらの知性がわれわれと同じである、ということを事実として前提にしているからである」



2007年のワトソンの自伝 『うんざりする人たちはお断り ― 科学人生からの教訓』 には、次のような異端の説が述べられている。

   進化の過程で、地理的に分断されている人々の知的理解力が同一に進化したという証拠がどこかにあるはず
   だ、と期待することに決定的な理屈はない。

   何か普遍的な人間性の財産として平等な理性の力を持っていたい、と希望するだけでは、不十分である。



ロンドン科学博物館におけるワトソンの講演はキャンセルされ、出版記念講演旅行も取り消された。

そしてワトソンは、40年間つとめたコールド・スプリング・ハーバー研究所の所長を辞めさせられた。



「きみの言うことは認めないが、死ぬまできみにそう言う権利があることは守る」 とヴォルテールはルソーに言った。

「真実が論議されることは自由だから、意見の間違いは許される」 とジェファーソンは言った。

アメリカの偉大な科学者の一人が鞭打たれ、首になり、生涯の学問と経験から形づくった自らの信念を棄てるよう強制されたことを、21 世紀のリベラリズムはどう説明するのか?

21 世紀のアメリカはどう説明するのか?



『人間の成し遂げたこと ― 紀元前 800年から1950年までの素晴らしい美と科学の探求』 で、マレーは 4000人の重要人物と、科学、美術、音楽、哲学、数学における世界の偉業を振り返っている。

かれは、最重要人物の 97%、天文学、生物学、地球科学、ブル違く、数学、医学、技術の 97% を、欧州と北米が排出した、と結論づけた。

1 個の文明として大変な記録である。

達成されたもののなかで、女性に与えられたのは、哲学 = 0%、科学 = 1・7%、西洋美術 = 2・3%、西洋文学 = 4・4%、西洋音楽 = 0・2% だった。



いまや真実を語るときである。

高校で、ほとんどの子どもがスポーツは得意ではなく、バンドで演奏する音楽能力がなく、ディベートで勝つ言語能力もないように、すべての子どもが高校で教わることの学習能力があるわけではない。

どの二人の子も同じようにはつくられていない。

一卵性双生児とても違っている。

過程が不平等の培養者であり、神が作者である。

平等の機会が与えられれば才能のある力が伸び、運動能力で、芸術的才能で、学問だ、劣る方が落伍する。

にもかかわらず、40年というもの、「子どもたちが教室に持ち込む学習能力には差異があるということの議論に、アメリカのリーダーたちは背を向けてきた」 とチャールズ・マレーは記す。



2005年 9月号のコメンタリーのエッセイ、「不平等のタブー」 で、マレーは、アファーマティブ・アクション (人種差別撤廃運動) の背後に潜む誤れる前提 ― 病づを阻む社会のすべての障害を除去すれば、真の平等が生まれる、という前提について書いた。

   アファーマティブ・アクションは・・・、助けようとしている人種グループと各個人の間には、もともと差異などある
   はずはない、と前提している。

   人種間に生来の相違なぢとする仮定がアメリカの社会政策を覆っている。

   この仮定は間違っている。

   これら政策の結果が思わしくない方向に動き、あるグループが落ちこぼれると、うまくいかなかった責任が社会
   に押しつけられる。

   そして、より良い計画、より良い規制、または正しい法廷の判決が、その差異を埋めてゆく、と信じ続けられる。

   こういった考えもまた間違っているのである」。



達成し得ないアメリカの努力 ― アファーマティブ・アクション、割当制、補助金、累進課税、そしてマンモス状態となった州の福祉政策などによるもの ― を見ているとナサニエル・ホーソンの 『母斑』 を想い起こす。

この短編では、美しい若妻ジョージアナを、熱烈に愛しているが、その頬にある手の形をした赤い痣に強迫観念を抱く科学者マイルマーが描かれる。

その痣を憎むあまり、アイルマーはそれを取り除く危険な手術に挑む ― 妻の美はこれで完璧となる。

手術は失敗し、妻は死ぬ。

最終的に全員を等しくするという理想国家の完璧主義は、国家を死に追いやるだろう。




意外なところからフランクフルト学派を理解する (^^;
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超大国の自殺
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第6章 平等か、自由か?
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