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◆ 超大国の自殺 (9) 試験成績における世界のギャップ

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パトリック・J・ブキャナン著/河内隆弥訳
超大国の自殺
―アメリカは2025年まで生き延びるか?―

2012年11月5日発行 幻冬舎


第6章 平等か、自由か?


9試験成績における世界のギャップ


「それは明日を誰が引っ張ってゆくのかの問題である」、とパリに本部を置く、経済協力機構 (OECD) のエンジェル・グリア事務局長が語った。

OECD は 3年ごとに、世界中の 15歳児を対象に、読解力、数学、科学について、学習到達度調査 (PISA) を行っている。

グリアは、2009年度の PISA テスト結果に言及した。

参加国は 65カ国。

中国人が席捲した。

上海の学校の生徒が数学、読解力、科学でトップだった。

香港は数学と科学で 3位。

在外中国人が支配している都市国家、シンガポールが数学で 2位、科学で 4位だった。



そして合衆国は?

アメリカは読解力で 17位、科学で 23位、数学で 31位だった。

「これはアメリカへの究極の目覚まし時計だ」、と教育省のアーン・ダンカンが口にした。

「おぞましい真実に向き合わなければならない。教育投資について真剣に考えなければならない」。



とはいえ、PISA の点数を詳細に眺めると、色々と気がつかなかった真実が浮かび上がる。

北東アジア人がトップ・グループにおり、ヨーロッパ人、カナダ人、オーストラリア人、ニュージーランド人がそれに続くが、その下のトップ30カ国以内には、ラテン・アメリア人、アメリカ人、アフリカ人、イスラム圏人、南アジア人、東南アジア人 (シンガポールを除く)、ラトビア人とエストニア人を除く旧ソビエト連邦人が、1 カ国たりとも入っていない。

OECD 加盟の最先進国、34カ国のなかで、アメリカの学校の主要な浸食者、メキシコは読解力でビリだった。



スティーブ・セイラーは 65カ国のリストの詳細を手に入れ、アメリカの読解力の特典を人種別に分析した。

そしてアメリカの生徒たちの実力をヨーロッパ大陸各国、家族の出身国の生徒だちのものと比較した。

その結果発見されたのは驚くべきものだった。

アジア系アメリカ人は、上海の生徒を除き、すべてのアジア人を上回っていた。

アメリカの白人は、フィンランドを除き、37カ国のすべての優秀な白人国の生徒を抜いていた。

ヒスパニックは、参加したラテン・アメリカ 8カ国すべての上位にあった。

アフリカ系アメリカ人のこどもは、参加した唯一の黒人国、トリニダード・トバコを25ポイント上回った。



アメリカの学校は決してどうしようもないものではない。

移民とその子孫の教育を上手に行い、アメリカに移住するとき、両親や先祖が本国に残した親戚たちを実力で凌駕しているのである。

アメリカの学校が失敗しているのは、1965年以来、小中等教育に数兆ドルが投じられているにもかかわらず、人種間の差が縮まっていないことにある。

読解力、科学、数学における試験点数の、一方を、白人とアジア系、他方を、ヒスパニックと黒人とする、その間のギャップをどのようにして近づけるか、よく分からない。

PISA の結果を見る限り、世界もこの辺を把握していない。



東アジアとヨーロッパの国民、と、ラテン・アメリカとアフリカの国民、の間の点数のギャップは、合衆国におけるアジア人と白人、と、黒人とヒスパニック、の間のギャップの鏡のようになっている。



PISA の読解力テスト結果を分析して、ヘリテージ財団は、

   「アメリカの白人生徒が別のグループとして算定されれば、その PISA 点数は世界第 3位に位置づけられる。

   しかしアメリカのヒスパニックと黒人は、それぞれ 31位、33位となる」

と報告した。



「アメリカの教育問題の悩みは、すべて生徒が人種混合であることが招いている」、とワイスバーグは書いている。

   いまの学校は英語に苦労しているヒスパニック数百万人と、その他、成績のことを小馬鹿にする凡庸な数百万
   人の若者に満ち満ちている・・・。

   政治的には間違っている方向だが、こういった無関心な厄介な生徒は、学校へ行くのと、上の空になるのが
   同じ程度となるならば放っておいて、もっと勉強熱心な韓国、日本、インド、ロシア、アフリカ、カリブ海の生徒に
   置き換えれば、アメリカの教育上の悩みはほとんど消えてしまう。



教育改革者のミシェル・リーは断言する。

   「子どもの成績を決定するものは、何といっても学級に臨む教師の質にあることを調査結果がはっきりと示して
   いる」。



しかし本当にそれは 「何といってもはっきりと」 示しているのだろうか?

コールマン報告、チャールズ・マレー、ワイスバーグは、反対意見である。

子どもの成績の 80% は、子どもたちが学級で発揮する、おもてに現われている能力と気質にあり、教科書や、「教壇に立つ教師」 ではない、と彼らは主張する。

学ぼうとする頭脳と欲がなければ、教育予算、教師の俸給、家庭教師費用、参考書などの費用は、無駄遣いとなるのである。



家庭や学校の環境を、すべての児童に平等になるよう整えたとしても、試験の点数を同じにすることは出来ない。

雑誌ディスカバーの科学ブロガー、ラジブ・カーンが書いているように、「環境という変数を動かしてみても、理解力という変数は変わらない」。




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第6章 平等か、自由か?
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