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◆ 超大国の自殺 (7) ドードー (飛べない鳥)

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SHINEDOWN ~ Oblivion

商品の詳細
SHINEDOWNTHREAT TO SURVIVAL』 (2015.09.18)
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パトリック・J・ブキャナン著/河内隆弥訳
超大国の自殺
―アメリカは2025年まで生き延びるか?―

2012年11月5日発行 幻冬舎


第6章 平等か、自由か?


7ドードー


結果の平等にこだわるひねくれた空論家たちを見ていると、『不思議な国のアリス』 の 「コーカス・レース」 を思い出す。

みんなは 「好きなときに駆け出し、好きなときに止める」。

そして 「30分ほど走ったところで・・・、ドードー (訳注: 絶滅した飛べない鳥の一つ) が突然、『駆けっこ止め!』 と叫ぶ。

みんなが集まる。

息を切らしながら問いかける。

『それで誰が勝ったの?』」



「ドードーが最後に告げる、『みんなが勝ったんだ。みんな賞品がもらえるよ』」。



空論家たちは、一つの考え ― みんなが平等で、生活の良い部分はみんなで平等に分け合うべきである ― から始め、この理想に合うような社会を強引につくろうとした。

「空論家たちは」、とラッセル・カークが記す。

   「政治を、社会改良そして人の本性すら変える革命の道具と考えている。

   ユートピアへの行進に、かれらは臆するところがない」。



空論家たちにとっては、とグローヴ・シティ・カレッジのギリス・ハープ教授がつけ加える。

   「事実はどうでもよいのだ。人身攻撃も許されているのだ」。

今日の 「人種差別主義者」、「性差別主義者」、「ホモ嫌い」 等々、悪口雑言の公共の場における反乱は、自分たちの中心原理を信じないものたちに対して、平等主義者たちが、いかに不寛容であるかを証明している。



「平等のユートピアは生物学的に終わりを告げた」 とデュラン夫妻は述べた。

「干し草三つ又 (干し草用フォーク) で自然を追い出してもよい」 とローマの詩人、ホラティウスは言った。

「しかし自然はすぐさま戻って来る」。



スポーツ、美術、音楽、教育、または政治、どんな世界にあっても、自由で公正な競争が、ある者をしかるべき位置に際立たせる自然な序列というものが出来上がる。

自由が、知性、才能、忍耐心を基礎としたヒエラルキーをつくるのである。



1930年のエッセイで、アフリカ系アメリカ人の指導者、W・E・B・デュボワは、自分たち黒人の最高の優先順位を向上心と教育に置き、アメリカ黒人の間に 「タレンテッド・テンス (= 才能ある 10人目。訳注: 黒人 10人のうち 1人は指導者層になる、という意味) 」 と名づける自然の階層を育むべきである、と書いた。

   黒人種は、ほかの人種と同じように、特別な人間たちによって守られなければならない。

   黒人は、まず教育の問題としてタレンテッド・テンスに取り組もう。

   それはわれわれの中の最優秀者を育てるという課題である。

   かれらは指導者となって、大衆を、いまのわれわれと他の人種が浸かっている汚濁と死の最悪の世界から
   救い出してくれるだろう。

すべての人間が平等で、平等な報酬を受け取るべきである、という考えが蔓延している国民は、恒常的に、そのタレンテッド・テンスを差別する結果となる。

自由国家が社会的、経済的平等を保障するには、その方法しかないからである。



平等の名のもとに ― かかった費用、実現された不正、そして失われた自由のすべてのことを、ここで考えてみよう。


   ■ 数十万人もの子どもが、近隣から遠く離れた学力の低い、また、しばしば危険な区域の学校へのバス通学を
    強制されている。

    これが人種間の争いと白人の逃避行動のもととなり、― 米国文明の宝石だった公立学校の崩壊をもたらす。


   ■ ここ数十年、企業が従業員を能力と成果によって採用し、昇進させるという権利は、数万人にのぼる政府職
    員による監視対象となった。

     労働者が性の平等と、地域の人種構成を反映していない場合、企業は訴訟をおこされかねない。


   ■ 政府は企業に、莫大な費用を負担させる事実上の人種と性別の割当制度を課している。

    米国史上有数のバカ騒ぎ、差別を申し立てる集団訴訟で、数百億ドルを企業から巻き上げている。


   ■ 賃金俸給所得のトップ層 1% が、いまや、全所得税の 40% を負担してるが、下からの 50% はいっさい納め
     ていない。

     これは共産党綱領にある 「重累進課税」 えはないだろうか?


   ■ かつて言論の自由が謳われた国家で、学内における言論統制、また全ての人種、民族グループ、性的嗜好
     が、平等であることを尊重しなければならないという、平等主義ドグマを、言論で攻撃することを罰するヘイト
     ・クライム (憎悪犯罪) の法体系に関する検閲が拡大している。


   ■ すべての宗教の平等のために、わが国の揺籃たる信仰、キリスト教は、公立学校と公共の場から追放され、
     単なる一つの宗教として扱われている。


   ■ 大学は、いまや男子と女子のスポーツ関係費用を均衡させる義務を課す、タイトル・ナイン (訳注: 1972年
     に成立した教育現場における男女の不均衡を是正させる法律) により、男子チームを排除し、ほとんど、
     ないしは全く要望のない女子のチームを作っている。


   ■ ほとんどの男子カレッジが女史の受け入れを強制された。


   ■ VMI (バージニア陸軍士官学校) とシタデル陸軍士官学校も、女性候補生の受け入れを強制された。

     しかし、法的に認められたこの措置に、150年の伝統に反するものとして、学校そのもの、卒業生、母親
     たち、妻たち、姉妹たちが、抗議運動を展開した。


   ■ 男性は容赦なく就職活動で差別され、いまや女性の勤労者が男性を上回っている。

    大不況に伴う失業の 70% から 80% は男性のものである。


   ■ 南部諸州は、依然、選挙法の小改正をするよう法務官僚に運動しなければならない。


   ■ 多分アメリカで随一の黒人エリートの高校ダンバー高校は、将官や上院議員を排出し、ワシントン DC で
     最上位の大学進学率を示していたが、平等の名のもとに “その辺の学校” とされてしまい、街中でもっとも
     トラブルの多い学校の一つとなっている。


   ■ ベーカー対カー事件 (1962年) で、最高裁は、全州において、立法府が連邦議会に範をとることを禁じ、
     各州住民人口に比例してのみ議員数を定めることを命じた。

     目的は、“一人 1 票の民主主義” を貫くことにある。

     しかし、建国の父たちはこの “原則” を拒絶し、デラウェア―とロードアイランドに、マサチューセッツとバージ
     ニアと同じ数の上院議員を割り振ったのである。


   ■ 平等の名のもとに、最高裁は、ホモセクシュアリティを憲法上の権利である、と宣言した。


   ■ サンフランシスコの連邦判事、ゲイのヴォーン・ウォーカーは、同性婚は、憲法修正第 14条で保障されてい
     る、と判断した。

     議会が第 14条を採択したとき、こんなバカげた平等を意図していたなどと、誰が信じるだろうか?


   ■ 31 州が住民投票でゲイ同士の結婚を忌避しているのにもかかわらず、判事たちは、こういった関係を結婚
     として扱う宣言をしようと、うずうずしている。

     有権者によって民主的に拒否された平等の概念が、独裁的に圧しつけられるるある。


   ■ 何でも反対のリベラル連邦議会は、2010年 12月、同性愛者がどこの部隊にでも入隊できる、とサンフラン
     シスコの価値観を軍隊に持ち込んだ。

     新兵、兵士、将校に、ゲイのライフ・スタイルを受け入れるよう強化をはかることは、米国でもっとも尊敬を
     集める組織である軍の権威を、怒りを禁じ得ない忌むべき策謀国家の手先に売り渡すこととなるだろう。


   ■ 白人と釣り合わせるため、黒人とヒスパニックに自家保有をさせることで、ジョージ・W・ブッシュは数百万件
     のサブプライム・モーゲイジ融資をするよう、銀行を煽った。

     それら融資の弁済不履行は、わが国の自由企業システムを破壊しかねない状況に追い込んだ。

     平和主義は、アメリカ資本主義の殺人兵器となることを証明しようとしている。


   ■ 世界全人類の平等の名のもとに 1965年の移民法は、アメリカを、セオドア・ルーズベルトの名づける、世界
     の 「乗合船」 国家として、その門戸を開放した。



連邦政府、州政府、地域行政機構、大学、企業というあらゆる職場に、人種、民族グループ、性別の比例配分を保障しなければならないということを考えると、平等と自由がいかに衝突しているか、なぜアメリカが転落国家になりつつあるか、ということが分かり始める。



人種、性別、民族、経済の平等の追求とは、夢想家の夢である。

絶対平等を保障する体制では国民のすべての財産と富が召し上げられて平等に分配される。

有能で頑張る市民が、もう一度、富を手にするまでに、どのくらい時間がかかるか?

収奪と再分配がまた新しくはじまるに違いない。



「平等社会では」 とロスバードが記した。

   「その目的達成のためには全体主義的強制を採用しなければならなくなる。

   そしてその状況においてすら、蟻塚のような世界を築きあげるためには、個人の人間精神が育ってゆくことが
   求められているのである」。



ロスバードとジョージ・ケナン (訳注: アメリカの外交官。1904 ― 2005) ほど違っていた二人はいない。

しかしこの点で二人は合意する。

「わたしが平等主義者でないことは確かだ」 とケナンはエリック・セバレイド (アメリカのコメンテーター。1912 ― 1992) に語った。

「わたしはあらゆる種類の平等傾向に真っ向から反対する」。

伝記作家のレオ・コングドンは、ケナンは 「平等への感情を羨望と遺恨の産物と見ている」 と言った。



とはいえ、自称保守主義者たちも平等主義の誘惑に負けてしまっている。

カリフォルニア州民が、結婚を男と女に限定するプロポジション 8 に賛成票を投じたとき、元州法務部長のテッド・オルソンは、有権者は憲法の平等保護条項に違反している、と指摘した。

「トマス・フェファーソン、ジェームズ・マディソン、アブラハム・リンカンのつくった憲法は」、同性愛者が結婚する権利を、否定することを 「許していない」。



オルソンは、ジェファーソン、マディソン、リンカーンの憲法が、「等しい」 とか 「平等」 という言葉をつかっていないこととか、平等保護条項がなかったことに気づいているのだろうか?

この三人の大統領は、みな修正第 14条が追加される以前に死んでいる。

オルソンはまた、ジェファーソンがホモ行為をレイプと同等なものとみなし、ホモセクシュアルは去勢されるべきである、レズビアンは罰として 「鼻の軟骨を削りとって少なくとも直径半インチの穴を開け」 られるべきである、と考えていたことを知っているのだろうか?



ジェファーソンの考えに裏付けがあるわけではない。

しかしそのことは、20世紀の終わりから 21世紀の初めにかけての極端な平等主義が、この国の歴史に根差すものではなく、現代のイデオロギーに基づくものであることを明らかにしている。




意外なところからフランクフルト学派を理解する (^^;
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16 )
  ☆ 片岡義男著音楽風景より
  ☆ ワッツの暴動
  ☆ ブラックパンサー党

超大国の自殺
  ★ 国家とは何ぞや?
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-20 )
  ★ 超大国の自殺 ☆ 概要
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-20-1 )
  ★ 超大国の自殺 ☆ 概要
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-21 )
  ◆ ここでもう一度、フランクフルト学派トロイの木馬革命
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-21-1 )

第6章 平等か、自由か?
  ( 1建国の父たちの信じていたもの
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-21-2 )
  ( 2アメリカは平等に関心を持っていたか?

  ( 3マディソン氏の沈黙

       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23 )
  ( 4) 「われわれは・・・かれらを平等にはあつかえない
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23-1 )
  ( 5平等について――昔と今
       1963年 ― 自由の鐘をならせ
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23-2 )
       1965年 ―自由だけでは充分ではない
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23-3 )
  ( 6) 「不平等こそ自然である
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23-4 )
  ( 7ドードー
       ( )
  ( 8試験の点数を平等に
  ( 9試験成績における世界のギャップ
  (10異端者の火刑
  (11政治的兵器としての平等


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