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◆ 超大国の自殺 (2 & 3) アメリカは平等に関心を持っていたか?

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パトリック・J・ブキャナン著/河内隆弥訳
超大国の自殺
―アメリカは2025年まで生き延びるか?―

2012年11月5日発行 幻冬舎


第6章 平等か、自由か?


2アメリカは平等に関心を持っていたか?


憲法と権利章典は共和国の基本文書であり、アメリカ連合の根本となる文書である。

そしてその双方に 「平等」 という言葉は出てこない。

「民主主義」 という言葉も同じである。

それらの言葉は国家の基礎的文書に出てきていないにもかかわらず、それらが合衆国の目的であるといえるの
だろうか?



ジェファーソンが平等を標榜していたとすれば、かれの言行に沿ってそのことを検証してみよう。

この若きバージニア人は、奴隷労働によるプランテーションを経営していたとき、ヘミングスの一家を除いて、その
半世紀後の自らの死にいたるまで奴隷を解放しようとはしなかった。

かれは本当に、すべての人間が平等につくられていると信じていたのだろうか?



ジョージ 3世告発の文書にジェファーソンは記載した。

   「かれは国内のわれわれの反乱に興奮し、辺境住民 ――老人、女子供、病人も無差別に情け容赦なく殺戮
   することを生業 (なりわい) とする野蛮なインディアン―― を動員した」



ジェファーソンは、先住アメリカ人、「情け容赦のない野蛮なインディアン」を、同国人と平等と見ていたか、または
平等であるべきだと思っていたのだろうか?

1924年の、インディアン市民権法成立まで、先住民は完全な市民ではなかった。

筆者が大学へ入学するときまで、どこの州でもインディアンに選挙権はなかった。



同じジョージ 3世告発書でジェファーソンは、国王が反乱鎮圧のために大西洋を横断させた軍隊について書いた。

   「王はそのとき、外国傭兵の大群を送り込んだ。

   すでに国内は未開の時代に比肩し得る、文明国の首長が行うこととしてはまったく相応しくない残虐と不信が
   渦巻く環境となっていた


   遠征軍の仕事は、そこで、殺人、略奪、暴虐の仕上げをすることにあった」。


明らかにジェファーソンは英国兵士を 「外国傭兵」 より上においていたし、英国王を 「文明国の首長」 と見ていた。

過去の野蛮な統治者と同じ行動をとるものとは見ていなかったのである。



国王が国民に対してとった最悪の行動は植民者をつかまえて兵士とし、仲間のアメリカ人と戦わせ、「友人、同胞
の処刑人にさせた」 ことである。



「同胞」 という言葉はジェファーソンの宣言に繰り返し出てきている。

国王に対する最大の憤りの一つは、かれがこのことを外国人とか 「情け容赦のない野蛮なインディアン」 にさせ
ず、同じ血の流れるものにさせたことである。

何度も何度もジェファーソンは、血族関係、血のつながりを訴える。

   「イギリスの同胞に対する思いが欠けているわけではない」。

   われわれは 「同じ血縁関係の絆でかれらと接した」 が、かれらは 「血族の呼びかけに・・・耳をふさいだ」

したがって、われわれは絆を断ち切らねばならない、とジェファーソンは書く。

もはやイギリス人は同胞に非ず。

   「われわれは・・・ほかの人間と同じように、かれらを、戦時にあっては敵、平時にあっては友、と見なければ
   ならない」。



ジェファーソンは、イギリスからの来るべき分離は、単なる政治的分離ではない、と言う。

それは一国民の解離であり、「同胞」 であった根幹を同じくする人々の溶解である。

著述家、ケビン・フィリップの言葉だが、独立戦争は 「従兄弟同士の戦争」 だったのである。



ジェファーソンの奴隷制度に関する見解としてしばしば引用される 「バージニア覚書」 で、かれは自分のプランテ
ーションで働く男女について記録した。

   記憶力、理性、想像力をくらべてみると、記憶力は白人に等しく、理性ではかなり白人に劣るように見受けら
   れた。

   ユークリッドの理屈についてゆける、理解するという局面には弱いように思われ、想像力においては、鈍感で
   味気なく、また常識を欠いていた。

こんな乱暴な文章を読んでもまだトマス・ジェファーソンが  「すべての人間は平等につくられている」 と、文字通り
の真理を保持していた、といえるだろうか?



1813年、ジェファーソンは、かつてのライバル、いまは友人となっているジョン・アダムズに手紙を書いた。

   わたしは、人間の間に自然の貴族階級が存在しているという、あなたの意見に賛成します。

   その基盤にあるのは、徳と才能です・・・。

   社会の教育、信頼醸成、統治において、この自然の貴族階級は、自然の恵むもっとも貴重な贈りものと考え
   ます。

   それはたしかに人を社会的に位置づけることと矛盾するかも知れないし、社会不安をうまく治めるに充分な
   徳と知恵を発揮できないかも知れません。

   さはさりながら、こういう貴族たちを選んで政府に送り込むことがもっとも効率的な政府を作りあげると、あえて
   申し上げたいように思います。



ジェファーソンはアダムズに、自然はすべての人間を平等につくってはいない、と言っているのである。

自然はわれわれを不平等につくっている。

そしてわれわれは、「創造」 がわれわれに、徳と才能を持つ 「貴族階級」 を用意してくれた「貴重な贈りもの」 に
感謝すべきなのである。

なぜなら、この最優秀の貴族たちは、われわれを導き、教化するために自然がわれわれに与えてくれたものたち
だからである。

かれらは単に優れたある個人たちというのではなく、優秀な人々のグループなのである。

「合衆国の自由民はパリの愚民とはちがいます」、とジェファーソンは、1815年、ラファイエットへの手紙に書いた。



ジェファーソンと建国の父たちは、自分たちをその監督のもとでのみ国家が最良に運営され得る、貴族的エリート
に属しているとみていたのである。

ジェファーソンは生涯、この考えを変えることはなかった。

独立宣言の 45年のちに書かれた自叙伝で、ジェファーソンは、引き続き 「自然が賢明にも社会に実益をもたらす
ために与えた、徳と才能の貴族政治」 について語っている。



ジェファソンと平等の問題について、バートランド・ラッセルが評している。

「アメリカでは誰もが、社会的に自分より上にいる者はいない、と考えている。

すべての人間は平等だからだ。

しかし、自分より下にいる者もいない、ということは認めようとしない。

ジェファーソンのときから、すべての人間が平等である、という原則は、自分から上に向かったときの原則で、下に
向かうものではなかったからである」。



3マディソン氏の沈黙


驚くべきことに、憲法は平等について記していないのみならず、その言葉すら使っていない。

ウィリアム・F・バックリー・ジュニア (訳注: アメリカの保守派コラムニスト。1925 ― 2008) の教師、エール大学
教授
ウィルモア・ケンドールが記している。

   憲法の起草者たちは政府という新しい機構に、平等の概念を持ち込もうとしなかった――

   想い起こしてみよう、われた人民がかたちづくる憲法の前文には、その目的 (より完璧な連合をつくること。
   自由、正義その他の擁護) が明示的に羅列されている。

   しかしその前文にすら、平等に関する記載はない。

   そして人がそのもとに大戦争を戦った独立宣言に、何としてでも書き込まれるべきであると期待していたとして
   も、
独立宣言の第一案にはそのことは書かれていなかった。



1787年フィラデルフィアで、ジェームズ・マディソンが憲法の大部分を起案したが、バージニアの隣人が 1776年に
記述した独立宣言の、そのもっとも有名な言葉については何も触れられていない。

また、マディソンが主な筆者であった 「ザ・フェエラリスト・ペーパーズ」にも、平等についての記載はない。

権利章典にも、第一回議会でマディソンが導入した 10項目の憲法改正にもその言葉はない。

しかし、マディソンが明らかに手を染めた、バージニア州権利章典は、「恭 (うやうや) しい平等の尊重の言葉で
はじまっている」。



ケンドールは書く。

    「ピュブリウス・・・のやり方は、こう言ってもよいなら、いつでも (しばしば起ったことだが) 平等の話が出よう
   とすると、口をつぐんでいる」。

ピュブリウスとは 「ザ・フェデラリスト・ペーパズ」 上の、マディソン、ハミルトン、ジョン・ジェイで共有したペンネーム
である。



アメリカの出生証明書である憲法に、平等の記載がない。

マディソンを含めアメリカの最初の 7人の大統領のうち 5人までが奴隷所有者だった。

憲法批准後 70年経つまで最高裁判所が奴隷を市民とは認めなかった。

そんなアメリカが誕生のときから、すべての人は平等につくられているという原則に忠実だったなどと、どうすれば
言えるのだろうか?




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       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16 )
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超大国の自殺
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第6章 平等か、自由か?
  ( 1建国の父たちの信じていたもの
       (http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-21-2 )
  ( 2アメリカは平等に関心を持っていたか?

       ( )
  ( 3マディソン氏の沈黙

  ( 4) 「われわれは・・・かれらを平等にはあつかえない
  ( 5平等について――昔と今
       1963年 ― 自由の鐘をならせ
       1965年 ―自由だけでは充分ではない
  ( 6) 「不平等こそ自然である
  ( 7ドードー
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