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パトリック・J・ブキャナン著/河内隆弥訳
超大国の自殺
―アメリカは2025年まで生き延びるか?―
2012年11月5日発行 幻冬舎
訳者あとがき
この訳書が書店に出回る頃 (2012年 11月) は、アメリカ大統領に現職のオバマが再選されているか、ロムニーが新大統領として選出されているか判明しているだろう。
しかし、いずれがアメリカのトップの座を射止めても、本書が示すアメリカ、そして世界の趨勢が大きく変わることはあるまい。
本書は、アメリカ保守派の重鎮、パトリック・J・ブキャナンの近著、2011年 10月に出版された、『SUICIDE of a SUPERPOWER ― Will America Survive to 2025』 の全訳である。
アメリカは、あたかもソ連が消滅したごとく、いまや自殺の道を歩んでいる、という衝撃的な本書の内容は反響を呼び、出版直後の11月第 1 週のニューヨーク・タイムズのベストセラー第 4位を占めた。
一方この本の、リベラルに対するブキャナンの歯に衣着せぬ物言いから、MSNBC (NBC とマイクロソフトが共同で設立したニュース専門放送局) は、10年ほど起用していた同局コメンテーターのポストをブキャナンから取り上げた、とウェブサイトはつたえている。
You Tube で視聴するかぎり、ブキャナンの語り口はソフトであるが、アメリカのいわば大久保彦左衛門として現代米国の病根を剔出 (てきしゅつ) することにリベラルは耐えられないのだろう。
「孤立主義者 (アイソレーショニスト)」、
「人種差別主義者 (レイシスト)」、
「反ユダヤ主義者 (アンチ・セミテック)」、
「ホモ嫌い (ホモフォビック)」、
「右翼」
等々、貼られるレッテルをものともせず、現実主義者 (リアリスト) ブキャナンは淡々と、丹念に拾い集めた諸統計、世論調査結果、投票行動の分析を通じ、またいつもの方法であるが、古今東西にわたる該博な知識を基礎に、内外論者からの膨大な引用を交えて持論を展開する。
本書の系譜につらなる著作として、ブキャナンは、10年前、『病むアメリカ、滅びゆく西洋』 (原題=The DEATH of the WEST: How Dying Populations and Immigrant Invasions Imperial Our Country and Civilization ― 邦訳; 宮崎哲弥訳、成甲書房、2002年) を世に問うている。
「われわれが育った国に何が起ったのか?」 の設問に答えることがその主題である。
『病むアメリカ』 と本書 『超大国の自殺』 の間にはほぼ10年の間隔がある。
著者は序文で、本書では 『病むアメリカ』 と違ったアメリカを問題にすると述べている。
その間、アメリカはアフリカ系大統領を選び、2つの戦争を深化させ、住宅バブル崩壊、リーマンショックの大金融危機を迎えた。
アメリカの多様性が強さである、とリベラルが叫んでいるうちに、多様性は、政治、経済、文化、宗教、道徳すべての面での国内の分裂につながってしまった。
ソ連消滅にアメリカの消滅を連想させるとき、人々は反射的に、それとアメリカとの比較を拒するだろうが、両国の類似点には驚かされる、と著者は指する。
なぜなら、ソ連を解させた民族 (エスニック) ナショナリズム、部族主義 (トライバリズム) に宿るすさまじい力は、世界を分割させるのみならず、いまやアメリカ統合の縫い目をも裂こうとしているからである。
「国家とは何ぞや?」
国家とは共通の祖先、文化、言語をいただき、同じ神をうやまい、同じヒーローをあがめ、同じ歴史を大事にし、同じ祝日を祝い、同じ音楽、詩、美術、そしてリンカーンのいう情愛の絆を共有するものではなかったか?
それが国家というものならば、われわれはアメリカが依然として国家とある、と本当に言えるだろうか?
と著者は問う。
本書で印象に残ったいくつかのキーワードを改めて振り返ってみたい。
(1) e pluribus unum = Out of Many, One (多数でできた一つ)
(2) Globalization (グローバリゼーション)
(3) Christian America (キリスト教国アメリカ)
(4) White America (白いアメリカ、白人のアメリカ)
(5) Demography (人口統計ないし人口動態)
(6) Equality (平等)
(7) Diversity (多様性)
(8) Tribalism (部族主義) ないし、Ethnonationalism (民族ナショナリズム)
(9) GOP (グランド・オールド・パーティ=共和党)
この本は 580ページ余にギッシリと書かれた分厚いものです。しかしその内容は、どこを広げても思わず引き込まれ、そして考えさせられます。
とても要約して紹介できるものではないので、いっそのこと全ページを転載・・・とも考えたのですが、かなり決心と時間と忍耐が必要です (^^;
それで、訳者の 「あとがき」 を転載させていただきます。
その後で、私が現在もっとも関心のある問題の 「第 6章 平等か、自由か?」 を転載させていただきます。
◆ 意外なところから 「フランクフルト学派」 を理解する (^^;
(http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16 )
☆ 片岡義男著 『音楽風景』 より
☆ ワッツの暴動
☆ ブラックパンサー党
◆ 超大国の自殺
★ 国家とは何ぞや?
(http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-20 )
★ 超大国の自殺 ☆ 概要 (上)
( )
★ 超大国の自殺 ☆ 概要 (下)
(http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-21 )
◆ ここでもう一度、フランクフルト学派 (トロイの木馬革命)
(http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2015-12-21-1 )
第6章 平等か、自由か?
( 1) 建国の父たちの信じていたもの
( 2) アメリカは平等に関心を持っていたか?
( 3) マディソン氏の沈黙
( 4) 「われわれは・・・かれらを平等にはあつかえない」
( 5) 平等について――昔と今
1963年 ― 「自由の鐘をならせ」
1965年 ― 「自由だけでは充分ではない」
( 6) 「不平等こそ自然である」
( 7) ドードー
( 8) 試験の点数を平等に
( 9) 試験成績における世界のギャップ
(10) 異端者の火刑
(11) 政治的兵器としての平等
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◆ 超大国の自殺 ☆ 概要 (上)
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