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(1375) Billboard 200 は、とっくに忘れて「次郎物語」 (^^♪

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次郎物語・全5巻
1941年(昭和16年)~1954年(昭和29年)
下村 湖人





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少年の心理を見事に描いた温かくかつ味わい深い作品
2005.02.20 by 黒猫ヤまと


 
次郎物語(上)には、第一部と第二部が掲載されている。


第一部は、幼い頃に里子に出された次郎が、実家に連れ戻され、家族間の葛藤の中で成長していくところから、一家の没落、母の死までが描かれている。


第二部は、母の死後、父の再婚から、中学に入学し朝倉先生に出会い、「愛されようとすること」から「他者を愛することへ」自らの生き方を転換させていこうと次郎が決意するまでが描かれている。


この手の作品(少年の成長を描いた作品)は数多くあるが、次郎物語はその中でも群を抜いて優れた作品だと思う。それは、少年の心理描写の緻密さと、物語としての不自然ではない面白さが群を抜いているからだ。


物語は、たくさんの小さい出来事から構成されているが、ひとつひとつの出来事の描写が味わい深く、何度でも読み返したくなる。


愛されないことからくる苛立ちからつい犯してしまう乱暴や失敗、大人に誉めてもらいたいがためのスタンドプレーのような行動、そしてその後にくるほろ苦い気持ち・・・子どもの頃なら誰でも覚えがあるのではないだろうか。


この作品を読むと、少年の成長過程に、「大人」がいかに重要であるかを思い知らされる。下村湖人は、この少年心理を誰よりも深く理解していたに違いない。


大人が読めば、子どもの頃の気持ちを切々と思い出すこと間違いなしであるし、少年少女が読めば、夢中になって読み、自らの生き方について考えることができることと思う。


この次郎物語(上)は、文句なしの秀逸な日本文学である。





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人生についての思想が織り込まれている
2005.12.01 by りあるあのにます


「運命」「愛」「永遠」というテーマが作者によって提供され、それを軸に物語が進行します。


運命が重々しかった幼年期に比べ、運命を自覚することにより愛と永遠という開放的な視点が次郎に宿り始めます。


このように書くと堅苦しい哲学小説だと思われそうですが、作者の筆致は愛情に溢れていて読んでいて胸が熱くなります。


きわめて稀有な作者の愛情の発露を味わうことになります。





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次郎は苦悩をどのようにして克服するのだろうか
2005.02.21 by 黒猫ヤまと


次郎物語(下)は、第五部から構成されている。


第五部は、中学を退学になった後、朝倉先生を追って上京した次郎が、先生が開いた青年塾「友愛塾」で助手として働く姿が描かれている。


時は昭和9~11年、軍国主義の波は友愛塾に容赦なく襲いかかる。次郎は、兄の許婚道江への断ち切れぬ想いに悩む。ニ・ニ六事件の衝撃を受け、「友愛塾」は閉鎖を余儀なくされる・・・。


第五部は、第四部に引き続いて、作者の教養主義・勧善懲悪的側面が出ており、第一部~第三部と比べると、若干退屈だといえるかもしれない。


しかし、次郎が道江への想いに悩む部分は、まるで夏目漱石の小説を読んでいるかような絶妙な心理描写であり、非常に面白い。この部分を読むだけでも、本章は読む価値があると私は思う。


しかし、次郎のこの苦悩は、さらなる深化・克服の目をみないまま、絶筆となる。非常に残念である。






『次郎物語』の第5巻の「あとがき」には、〔戦争末期の次郎を第六部、終戦後数年たってからの次郎を第七部として描いてみたいと思っている〕と書かれてあるそうですが、それを果たせないまま、下村湖人は病床に伏し、70歳で世を去りました。







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こちらは、下村湖人が、少年少女たちのために書き直したものだそうです。





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下村湖人






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