【防衛オフレコ放談】
中国を排除した世界最大演習「リムパック」
米軍は「陸自から学びたい」
2018.06.15
(www.sankei.com/premium/news/180615/prm1806150006-n1.html )
米海軍主催で 6月下旬からハワイ沖で開かれる世界最大規模の海軍演習「環太平洋合同演習」(リムパック)に、中国海軍が直前になり招待を取り消される事態となった。
中国の南シナ海での軍事拠点化に米政府の堪忍袋の緒が切れたためだが、今回のリムパックで最も注目されるのが陸上自衛隊の「地対艦誘導弾(SSM)」を使った日米初の共同訓練だ。
中国排除により対中牽制(けんせい)の色合いがいっそう強まった形だ。(社会部編集委員 半沢尚久)
対中融和から転換
リムパックは米国の同盟国など 20カ国以上の軍が参加する合同演習で、1971年からおおむね 1 年おきに実施されている。
今回は 6月 27日から 8月 2日にかけて行われる予定だ。
中国は 2014年と 2016年の 2 回、リムパックに参加している。
米国のオバマ前政権の中国に対する融和的な政策のひとつとされた。
ところが、米国防総省は 5月 23日、今回のリムパックで中国海軍の招待を取り消すと発表した。
理由として中国が南シナ海で人工島の軍事拠点化を続け、「地域を不安定化させている」ことを挙げた。
今年 4月、中国は南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島に造成した人工島で通信やレーダーなどの電波を妨害する装置を設置したと伝えられた。
同諸島の人工島では 3千メートル級の滑走路や戦闘機の格納庫なども整備されている。
5月にはパラセル(中国名・西沙)諸島で初めて爆撃機を離着陸させた。
こうした中国の南シナ海での軍事拠点の強化と活動の活発化を受け、米政府は開催直前にリムパックから中国を締め出した。
オバマ前政権の対中融和政策からの転換点と位置づけられそうだ。
日米初の地対艦弾訓練
中国不在となるリムパックでは、海上部隊ではない陸自と米陸軍が陸自の最新鋭 SSM「12式」を使った共同訓練を初めて実施する。
目的は中国海軍艦艇への抑止力と対処力を強化するためだ。
SSM は沿岸防衛用で地上から発射され、洋上に出ても低空で飛行する。
12式の射程は約 200キロで、発射機 1 両から 6 発が発射できる。
12式は中国海軍艦艇の脅威を踏まえた陸自の南西防衛強化の柱だ。
鹿児島県の奄美大島や沖縄県の宮古島などに配備する計画を進めている。
一方、太平洋と大西洋で脅威対象から距離的に離れている米国には沿岸防衛用のSSMは不要とされてきたため、米軍は SSM を保有していない。
ただ、ここにきて米軍は SSM の運用に意欲を示し始めた。
防衛省幹部は「南シナ海での対中シフトに SSM が欠かせないと認識しているからだ」と指摘する。
その認識を象徴するのが太平洋軍のハリス司令官(当時)が昨年 5月に東京都内で行った講演だ。
「列島線防衛の新しい方策を検討すべきで、(米陸上部隊に)艦艇を沈める能力の強化を指示した」
ハリス氏はそう発言し、SSM を念頭に「陸自から学びたい」とも述べている。
中国の眼前でも
米軍は共同訓練を通じ SSM の装備・運用のノウハウを陸自から習得し、将来的には自衛隊が東シナ海で進めている南西防衛を南シナ海に援用することを視野に入れている。
ハリス氏が講演で言及した列島線とは九州から沖縄、フィリピンなどに至る第1列島線を指す。
その防衛で列島線沿いに位置する同盟国や友好国のフィリピンやインドネシアなどと連携して SSM を配置し、中国海軍艦艇ににらみを利かせる。
それにより中国海軍艦艇を第1列島線の内側に封じ込める狙いがある。
米陸上部隊に海上防衛を担わせることは「マルチ・ドメイン・バトル(複数領域での戦闘)」という米軍の新たな構想の一環でもある。
それに向け米軍は一昨年から SSM を使った共同訓練を自衛隊に打診してきており、今回のリムパックで実現することになった。
自衛隊幹部はリムパックに中国が不参加となったことについて「中国海軍の目の前で 12式の能力をみせつけるつもりだったが…」と語る。
「東シナ海で訓練を重ね、日米の抑止力と対処力を知らしめることも重要」(防衛省幹部)であることを踏まえれば、12式を使った共同訓練を中国の眼前で行う日も遠くはないだろう。
中国を排除した世界最大演習「リムパック」
米軍は「陸自から学びたい」
2018.06.15
(www.sankei.com/premium/news/180615/prm1806150006-n1.html )
米海軍主催で 6月下旬からハワイ沖で開かれる世界最大規模の海軍演習「環太平洋合同演習」(リムパック)に、中国海軍が直前になり招待を取り消される事態となった。
中国の南シナ海での軍事拠点化に米政府の堪忍袋の緒が切れたためだが、今回のリムパックで最も注目されるのが陸上自衛隊の「地対艦誘導弾(SSM)」を使った日米初の共同訓練だ。
中国排除により対中牽制(けんせい)の色合いがいっそう強まった形だ。(社会部編集委員 半沢尚久)
対中融和から転換
リムパックは米国の同盟国など 20カ国以上の軍が参加する合同演習で、1971年からおおむね 1 年おきに実施されている。
今回は 6月 27日から 8月 2日にかけて行われる予定だ。
中国は 2014年と 2016年の 2 回、リムパックに参加している。
米国のオバマ前政権の中国に対する融和的な政策のひとつとされた。
ところが、米国防総省は 5月 23日、今回のリムパックで中国海軍の招待を取り消すと発表した。
理由として中国が南シナ海で人工島の軍事拠点化を続け、「地域を不安定化させている」ことを挙げた。
今年 4月、中国は南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島に造成した人工島で通信やレーダーなどの電波を妨害する装置を設置したと伝えられた。
同諸島の人工島では 3千メートル級の滑走路や戦闘機の格納庫なども整備されている。
5月にはパラセル(中国名・西沙)諸島で初めて爆撃機を離着陸させた。
こうした中国の南シナ海での軍事拠点の強化と活動の活発化を受け、米政府は開催直前にリムパックから中国を締め出した。
オバマ前政権の対中融和政策からの転換点と位置づけられそうだ。
日米初の地対艦弾訓練
中国不在となるリムパックでは、海上部隊ではない陸自と米陸軍が陸自の最新鋭 SSM「12式」を使った共同訓練を初めて実施する。
目的は中国海軍艦艇への抑止力と対処力を強化するためだ。
SSM は沿岸防衛用で地上から発射され、洋上に出ても低空で飛行する。
12式の射程は約 200キロで、発射機 1 両から 6 発が発射できる。
12式は中国海軍艦艇の脅威を踏まえた陸自の南西防衛強化の柱だ。
鹿児島県の奄美大島や沖縄県の宮古島などに配備する計画を進めている。
一方、太平洋と大西洋で脅威対象から距離的に離れている米国には沿岸防衛用のSSMは不要とされてきたため、米軍は SSM を保有していない。
ただ、ここにきて米軍は SSM の運用に意欲を示し始めた。
防衛省幹部は「南シナ海での対中シフトに SSM が欠かせないと認識しているからだ」と指摘する。
その認識を象徴するのが太平洋軍のハリス司令官(当時)が昨年 5月に東京都内で行った講演だ。
「列島線防衛の新しい方策を検討すべきで、(米陸上部隊に)艦艇を沈める能力の強化を指示した」
ハリス氏はそう発言し、SSM を念頭に「陸自から学びたい」とも述べている。
中国の眼前でも
米軍は共同訓練を通じ SSM の装備・運用のノウハウを陸自から習得し、将来的には自衛隊が東シナ海で進めている南西防衛を南シナ海に援用することを視野に入れている。
ハリス氏が講演で言及した列島線とは九州から沖縄、フィリピンなどに至る第1列島線を指す。
その防衛で列島線沿いに位置する同盟国や友好国のフィリピンやインドネシアなどと連携して SSM を配置し、中国海軍艦艇ににらみを利かせる。
それにより中国海軍艦艇を第1列島線の内側に封じ込める狙いがある。
米陸上部隊に海上防衛を担わせることは「マルチ・ドメイン・バトル(複数領域での戦闘)」という米軍の新たな構想の一環でもある。
それに向け米軍は一昨年から SSM を使った共同訓練を自衛隊に打診してきており、今回のリムパックで実現することになった。
自衛隊幹部はリムパックに中国が不参加となったことについて「中国海軍の目の前で 12式の能力をみせつけるつもりだったが…」と語る。
「東シナ海で訓練を重ね、日米の抑止力と対処力を知らしめることも重要」(防衛省幹部)であることを踏まえれば、12式を使った共同訓練を中国の眼前で行う日も遠くはないだろう。
リムパック2018に
海自、陸自が参加
2018.06.18
(www.jwing.net/news/2389 )
リムパック2018に参加する護衛艦「いせ」(提供:海上自衛隊)
「いせ」、P-3C2機、
12SSM、水陸機動連隊など
海上自衛隊と陸上自衛隊は 6月 15日、今年度のリムパック 2018への参加概要を発表した。
海自からは
・ヘリ搭載大型護衛艦「いせ」(ヘリ 3機搭載)1隻(人員約 390名)と
・P−3C 哨戒機 2機(人員約 60名)
・掃海要員約 10名
が参加し、陸自は
・日米共同対艦戦闘訓練に 12式地対艦ミサイル 1 式(人員約 100名)
・米海兵隊との実動訓練に第 2水陸機動連隊の約 70名
がそれぞれ参加する予定。
海自は米国派遣訓練の一環としてリムパックに参加するもので、日米印共同訓練に参加した「いせ」は、そのまま 6月 16日からハワイに向かい、6月 27日から 8月 2日までのリムパック 2018に参加し、8月 20日に帰国の計画。
指揮官は第 2護衛隊群司令の大判英之海将補が務める。
海自派遣航空部隊は那覇基地から P-3C 哨戒機 2機を第 5航空隊の宮崎裕介 2等海佐が指揮官としてハワイに向かう。
掃海部隊は人員のみで掃海隊群司令部の深坂一磨 3等海佐が指揮する。
一方、陸自の参加する日米共同対艦戦闘訓練は 6月 15日から 7月 21日までの期間で、ハワイのカウアイ島太平洋ミサイル射場、オアフ島スコフィールドバラックス基地で行われ、西部方面総監部、整備方面特科隊、第 5地対艦ミサイル連隊などから約 100名が参加し、12式地対艦ミサイルを 1 セット派遣する。
米側は HIMARS ロケット砲を装備する陸軍第 17砲兵旅団等から約 100名が参加する。
米海兵隊との共同訓練はオアフ島カネオヘ・ベイ基地、ハワイ島ポハクロア訓練場などで 6月 20日から 8月 5日まで行われる。
陸自からは陸上総隊司令部と水陸機動団第 2水陸機動連隊などから約 70名が参加し、装備は小銃、軽機関銃、無反動砲、偵察ボートなど。
米側は海兵隊太平洋司令部、第 3海兵連隊等などから約 100名規模で、水陸両用車と小銃、60ミリ迫撃砲を装備して参加する。
このほか陸上部隊による人道支援/災害救援訓練が 7月 1日から 20日まで行われ、これには陸自からは陸上総隊司令部と国際活動教育隊の約 5名が参加する。
リムパック今回は26カ国参加
今回のリムパックは日米を含め参加予定国が 26ヵ国となり、そのうちブラジル、イスラエル、スリランカ、ベトナムが初参加となる。
日米と初参加以外の国々は豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、トンガ、英国となっている。
艦艇 47隻、潜水艦 5隻、航空機約 200機、人員約 2万 5000人以上という大規模な訓練となる。
海上では対潜戦・対水上戦・対空戦・対機雷戦等、各種戦術訓練を行い、ミサイル発射訓練、海賊対処、人道支援・災害救援訓練も実施する。
海自の「いせ」はグアムからハワイの間、米、印、シンガポール、フィリピン、マレーシアの艦艇と巡航訓練も行う。
海自、陸自が参加
2018.06.18
(www.jwing.net/news/2389 )
リムパック2018に参加する護衛艦「いせ」(提供:海上自衛隊)
「いせ」、P-3C2機、
12SSM、水陸機動連隊など
海上自衛隊と陸上自衛隊は 6月 15日、今年度のリムパック 2018への参加概要を発表した。
海自からは
・ヘリ搭載大型護衛艦「いせ」(ヘリ 3機搭載)1隻(人員約 390名)と
・P−3C 哨戒機 2機(人員約 60名)
・掃海要員約 10名
が参加し、陸自は
・日米共同対艦戦闘訓練に 12式地対艦ミサイル 1 式(人員約 100名)
・米海兵隊との実動訓練に第 2水陸機動連隊の約 70名
がそれぞれ参加する予定。
海自は米国派遣訓練の一環としてリムパックに参加するもので、日米印共同訓練に参加した「いせ」は、そのまま 6月 16日からハワイに向かい、6月 27日から 8月 2日までのリムパック 2018に参加し、8月 20日に帰国の計画。
指揮官は第 2護衛隊群司令の大判英之海将補が務める。
海自派遣航空部隊は那覇基地から P-3C 哨戒機 2機を第 5航空隊の宮崎裕介 2等海佐が指揮官としてハワイに向かう。
掃海部隊は人員のみで掃海隊群司令部の深坂一磨 3等海佐が指揮する。
一方、陸自の参加する日米共同対艦戦闘訓練は 6月 15日から 7月 21日までの期間で、ハワイのカウアイ島太平洋ミサイル射場、オアフ島スコフィールドバラックス基地で行われ、西部方面総監部、整備方面特科隊、第 5地対艦ミサイル連隊などから約 100名が参加し、12式地対艦ミサイルを 1 セット派遣する。
米側は HIMARS ロケット砲を装備する陸軍第 17砲兵旅団等から約 100名が参加する。
米海兵隊との共同訓練はオアフ島カネオヘ・ベイ基地、ハワイ島ポハクロア訓練場などで 6月 20日から 8月 5日まで行われる。
陸自からは陸上総隊司令部と水陸機動団第 2水陸機動連隊などから約 70名が参加し、装備は小銃、軽機関銃、無反動砲、偵察ボートなど。
米側は海兵隊太平洋司令部、第 3海兵連隊等などから約 100名規模で、水陸両用車と小銃、60ミリ迫撃砲を装備して参加する。
このほか陸上部隊による人道支援/災害救援訓練が 7月 1日から 20日まで行われ、これには陸自からは陸上総隊司令部と国際活動教育隊の約 5名が参加する。
リムパック今回は26カ国参加
今回のリムパックは日米を含め参加予定国が 26ヵ国となり、そのうちブラジル、イスラエル、スリランカ、ベトナムが初参加となる。
日米と初参加以外の国々は豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、トンガ、英国となっている。
艦艇 47隻、潜水艦 5隻、航空機約 200機、人員約 2万 5000人以上という大規模な訓練となる。
海上では対潜戦・対水上戦・対空戦・対機雷戦等、各種戦術訓練を行い、ミサイル発射訓練、海賊対処、人道支援・災害救援訓練も実施する。
海自の「いせ」はグアムからハワイの間、米、印、シンガポール、フィリピン、マレーシアの艦艇と巡航訓練も行う。