FIVE FINGER DEATH PUNCH ~ Digging My Own Grave
ああだ、こうだと取り沙汰されている「米朝首脳会談」。
6月初頭から You Tube に一挙にアップされたファイヴ・フィンガー・デス・パンチの2枚のアルバム全曲の1曲目は「墓穴を掘る」なんてタイトルですが、それとは関係なく(笑)個人的には、金正恩が人格形成に最も重要な17歳前後を「スイス」で過ごしたことと、「母親」が「韓国・済州島に出自」を持つ「在日朝鮮人」だという「3点」から、ひょっとして「高句麗~北朝鮮」という国の歴史は変わるってこともあるかな?という視点で、斜めに見ていたいと思います (;一_一)
中国大陸 & 朝鮮半島の、チョ―簡単な歴史
(http://natsunokoibito.blog.fc2.com/blog-entry-1818.html )
池上 彰 著
『わからなくなった世界情勢の読み方』
朝鮮半島で戦争が起きた
(http://natsunokoibito.blog.fc2.com/blog-entry-901.html )
【検証6・12(上)】
突然の「演習中止」発言に衝撃
真意めぐり米政界、国防関係者が騒然
日韓も当惑
2018.06.13
(https://www.sankei.com/world/news/180613/wor1806130067-n1.html )
「こいつとはやっていけそうだ」
シンガポール南部セントーサ島のカペラホテルで12日午前9時過ぎ(現地時間)、史上初の米朝首脳会談が始まった。
会談に臨んだ米大統領、ドナルド・トランプは北朝鮮の朝鮮労働党委員長、金正恩(キム・ジョンウン)と固い握手を交わし、こう直感した。
通訳を交えた2人だけの話し合いは41分間に及んだ。
2人だけで41分間
トランプは金とこの日7回目の握手をして別れた後、長年の盟友で「影の補佐官」とも呼ばれるFOXニュースのスター司会者、ショーン・ハニティに金の印象をこう明かす。
「彼はとても人柄がいい。
愉快で、しかも極めて利口だ。
非常に交渉上手で戦略的な男でもある」
トランプは、これまで金を「ちびのロケットマン」と呼び、北朝鮮が「炎と怒りに見舞われる」と威嚇してきた。
一連の発言は、金を対話の場に引き出すための方便にすぎず、「本当は言いたくなかったし、ばからしくも思ったが、仕方がなかった」とハニティに弁明した。
首脳会談が実現するや、トランプは金へのガードを一気に下げたかにみえる。
かつては呪文のように唱えていた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)すら口にしなくなった。
そんなトランプから、この日午後4時過ぎに始まった記者会見で衝撃的なひと言が飛び出す。
「米韓の合同軍事演習(ウオー・ゲーム)を中止する」
「莫大(ばくだい)な費用かかる」
軍事演習に関し、この日発表された共同声明では言及がなかった。
トランプは、軍事演習を
「(北朝鮮に対して)挑発的だ」
「莫大な費用がかかる」
とまで言い放った。
この「爆弾発言」は、たちまち米本国の政界と国防関係者を震撼(しんかん)させた。
上院議員(共和党)、ルビオは「演習中止」発言について、ツイッターに「不愉快だ」と書き込んだ。
トランプが専用機で12日午後6時過ぎにシンガポールをたって帰国の途上、ワシントンでは副大統領のマイク・ペンスが共和党の有力議員らをひそかに集めて事情を説明するなど釈明に追われた。
説明会に出席した上院外交委員会の東アジア・太平洋小委員長、コリー・ガードナーはツイッターで「通常の即応訓練や訓練交流は継続されると聞いた」と明かした。
しかし、大規模軍事演習に関しては情報が錯綜(さくそう)していた。
ホワイトハウスは騒ぎの拡大を受け、
「半年ごとの大規模軍事演習は行わない」
と表明し、トランプ発言が「事実」であると確認した。
トランプの「演習中止」発言は、国防総省にも明確に知らされていなかったとみられる。
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、同省の関係部局は発言の真意を探るため連絡や対応に追われた。
国防当局者は同紙にこう強調した。
「米韓の大規模軍事演習は、即応能力の維持には不可欠だ。
小規模の訓練だけでは(有事の際に)役に立たない」
とトランプの発言に異を唱えた。
自賛「うまくやった」
「演習中止」発言は韓国をはじめ、同盟国、日本を当惑させた。
韓国大統領府の報道官は13日、
「トランプ大統領の発言の正確な意味や意図を把握する必要がある」
と困惑した様子だ。
米朝首脳会談の結果については、韓国で保守系のメディアや野党から強い批判が起きている。
韓国紙、朝鮮日報は13日付1面トップに「トランプ、CVIDなく、韓米演習中断」との見出しを掲げた。
同紙主筆はコラムで「韓国全体がだまされたようだ」と落胆を吐露した。
同紙は「非核化をひと言も言わない金正恩にトランプ大統領は韓米軍事演習の中断を与えた」とも批判。
トランプ発言の背景に、金正恩が体制保証を求めた際、軍事演習の中断を求めたのではないかとの見方を伝えた。
一方、官房長官の菅義偉は13日午前の記者会見で、演習中止などについて「米国から詳細な説明を受けたい」と述べ、事前に聞いていなかったことを明らかにした。
会談を終えたトランプは周囲の波紋をよそに、ツイッターでこう自画自賛した。
「金正恩とうまくやった。平和を作るのは最も勇気のある人たちだけだ」
=敬称略
◇
世界が注目した米朝首脳会談。焦点の核問題や体制保証をめぐる米朝間の攻防など、その舞台裏を追う。(シンガポール 黒瀬悦成、ソウル 名村隆寛)
突然の「演習中止」発言に衝撃
真意めぐり米政界、国防関係者が騒然
日韓も当惑
2018.06.13
(https://www.sankei.com/world/news/180613/wor1806130067-n1.html )
「こいつとはやっていけそうだ」
シンガポール南部セントーサ島のカペラホテルで12日午前9時過ぎ(現地時間)、史上初の米朝首脳会談が始まった。
会談に臨んだ米大統領、ドナルド・トランプは北朝鮮の朝鮮労働党委員長、金正恩(キム・ジョンウン)と固い握手を交わし、こう直感した。
通訳を交えた2人だけの話し合いは41分間に及んだ。
2人だけで41分間
トランプは金とこの日7回目の握手をして別れた後、長年の盟友で「影の補佐官」とも呼ばれるFOXニュースのスター司会者、ショーン・ハニティに金の印象をこう明かす。
「彼はとても人柄がいい。
愉快で、しかも極めて利口だ。
非常に交渉上手で戦略的な男でもある」
トランプは、これまで金を「ちびのロケットマン」と呼び、北朝鮮が「炎と怒りに見舞われる」と威嚇してきた。
一連の発言は、金を対話の場に引き出すための方便にすぎず、「本当は言いたくなかったし、ばからしくも思ったが、仕方がなかった」とハニティに弁明した。
首脳会談が実現するや、トランプは金へのガードを一気に下げたかにみえる。
かつては呪文のように唱えていた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)すら口にしなくなった。
そんなトランプから、この日午後4時過ぎに始まった記者会見で衝撃的なひと言が飛び出す。
「米韓の合同軍事演習(ウオー・ゲーム)を中止する」
「莫大(ばくだい)な費用かかる」
軍事演習に関し、この日発表された共同声明では言及がなかった。
トランプは、軍事演習を
「(北朝鮮に対して)挑発的だ」
「莫大な費用がかかる」
とまで言い放った。
この「爆弾発言」は、たちまち米本国の政界と国防関係者を震撼(しんかん)させた。
上院議員(共和党)、ルビオは「演習中止」発言について、ツイッターに「不愉快だ」と書き込んだ。
トランプが専用機で12日午後6時過ぎにシンガポールをたって帰国の途上、ワシントンでは副大統領のマイク・ペンスが共和党の有力議員らをひそかに集めて事情を説明するなど釈明に追われた。
説明会に出席した上院外交委員会の東アジア・太平洋小委員長、コリー・ガードナーはツイッターで「通常の即応訓練や訓練交流は継続されると聞いた」と明かした。
しかし、大規模軍事演習に関しては情報が錯綜(さくそう)していた。
ホワイトハウスは騒ぎの拡大を受け、
「半年ごとの大規模軍事演習は行わない」
と表明し、トランプ発言が「事実」であると確認した。
トランプの「演習中止」発言は、国防総省にも明確に知らされていなかったとみられる。
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、同省の関係部局は発言の真意を探るため連絡や対応に追われた。
国防当局者は同紙にこう強調した。
「米韓の大規模軍事演習は、即応能力の維持には不可欠だ。
小規模の訓練だけでは(有事の際に)役に立たない」
とトランプの発言に異を唱えた。
自賛「うまくやった」
「演習中止」発言は韓国をはじめ、同盟国、日本を当惑させた。
韓国大統領府の報道官は13日、
「トランプ大統領の発言の正確な意味や意図を把握する必要がある」
と困惑した様子だ。
米朝首脳会談の結果については、韓国で保守系のメディアや野党から強い批判が起きている。
韓国紙、朝鮮日報は13日付1面トップに「トランプ、CVIDなく、韓米演習中断」との見出しを掲げた。
同紙主筆はコラムで「韓国全体がだまされたようだ」と落胆を吐露した。
同紙は「非核化をひと言も言わない金正恩にトランプ大統領は韓米軍事演習の中断を与えた」とも批判。
トランプ発言の背景に、金正恩が体制保証を求めた際、軍事演習の中断を求めたのではないかとの見方を伝えた。
一方、官房長官の菅義偉は13日午前の記者会見で、演習中止などについて「米国から詳細な説明を受けたい」と述べ、事前に聞いていなかったことを明らかにした。
会談を終えたトランプは周囲の波紋をよそに、ツイッターでこう自画自賛した。
「金正恩とうまくやった。平和を作るのは最も勇気のある人たちだけだ」
=敬称略
◇
世界が注目した米朝首脳会談。焦点の核問題や体制保証をめぐる米朝間の攻防など、その舞台裏を追う。(シンガポール 黒瀬悦成、ソウル 名村隆寛)
【検証6・12(下)】
金正恩氏は鄧小平になれるか
経済再建危うい綱渡り
2018.06.15
(http://www.sankei.com/world/news/180615/wor1806150007-n1.html )
11日、シンガポールの観光名所を訪れた北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(手前左から3人目)(朝鮮中央通信撮影・共同)
南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で14日、10年半ぶりに開かれた将官級軍事会談の冒頭、北朝鮮側首席代表で朝鮮人民軍陸軍中将のアン・イクサンは「どんな逆風下でも板門店宣言を履行するとの初心を曲げてはいけない」と強調した。
米の支援明記されず
4月の首脳会談で南北が宣言に盛り込んだ軍事的緊張緩和が協議の主題だが、北朝鮮側の狙いは、南北双方の“軍縮”を通じた経済建設へのシフトにある。
朝鮮労働党委員長の金正恩(キム・ジョンウン)は5月の党中央軍事委員会拡大会議で、米朝首脳会談を見据えた新たな国防方針を決め、経済建設への軍の貢献に期待を示した。
軍首脳3人を入れ替える大なたも振るったとされ、6月12日の米朝会談には穏健派とされる新人民武力相の努光鉄(ノ・グァンチョル)を同行させた。
だが、米大統領のトランプと正恩が署名した共同声明には、米国からの経済支援は一切、明記されなかった。
会談中、トランプが正恩に見せたのは、漆黒の闇に包まれた夜の北朝鮮の衛星写真が突如、光にあふれる状況を映した動画だ。
トランプは「北朝鮮には素晴らしいビーチがある。そこには世界最高のホテルを建てることができる」とも力説した。
完全な非核化を履行すれば、明るい未来が待っているとのメッセージだが、
「米政府は直接支援しない。
・日中韓の支援と
・自助努力で
どうぞ発展してください」
との意図もにじむ。
北朝鮮は「米国に期待して経済建設をしたことはない」と主張しており、そうした意図は百も承知だろう。
会談前夜には、代表団一行を引き連れ、シンガポールの市内観光に出るサプライズも行ったが、注目すべきは北朝鮮メディアが伝えた正恩の言葉だ。
「多くの分野でシンガポールの知識と経験を学ぼうと思う」
「シンガポールの経済的潜在力と発展の姿をはっきりと理解した」。
名所巡りにすぎない場面で、わざわざ経済発展に力点を置いた発言を取り出しているのだ。
北朝鮮国内に向け、今後はシンガポール並みの経済発展を目指すと宣言したとも受け止められる。
「正恩は成功した中国の鄧小平になるか、失敗した旧ソ連のゴルバチョフになるかの瀬戸際にある」
韓国情報機関傘下の国家安保戦略研究院副院長の李基東(イ・ギドン)はこう分析する。
両者の違いについて李は
(1)政治的安定
(2)経済的成果
(3)融和的国際環境
を挙げる。
3つの条件に恵まれ、改革開放を導いた鄧に対してゴルバチョフは当初、米国との軍拡競争に直面した上、派閥争いを抱え、経済的成果も見込めず、社会主義体制を崩壊させた。
いびつな南巡講話
「正恩は党や軍幹部の粛清や更迭を繰り返し、政治体制の安定を手にした。
経済政策でも4月の党中央委員会総会で核開発との「並進路線」から経済建設に集中する方針を打ち出し、経済政策に関しては「内閣の指揮に無条件で服従せよ」と指示。
経済再建に向けた土壌を整えた。
シンガポールでの発言は、鄧が1992年に深圳など南方都市を巡り、経済発展の指針を説いた「南巡講話」の “金正恩版” に今後、位置付けられる可能性がある。
ただ、肝心の制裁はいまだ解けない上、国内にも大きな障壁を抱える。
米韓との敵対関係ゆえに軍事費が国内総生産(GDP)の推定約24%を占めてきた。
約120万人の兵力を維持するため、若い労働力を兵役に投じている。
北朝鮮の民主化に取り組む韓国の団体代表で北朝鮮の内情に通じる金永煥(キム・ヨンファン)は
「戦争中の国家並みの軍事費比率であり、これでは経済開発を望みようもない」
と指摘する。
内なる軍事的圧迫の打開のためにも、米国との直談判は避けられなかったとみられる。
トランプは会談で、米韓合同軍事演習の中止を表明。
米メディアのインタビューで、将来的に在韓米軍を撤退させる可能性も示唆した。
正恩は思いがけない譲歩を得た形だ。
一方で、永煥は「北朝鮮が核を完全に放棄する可能性はない」とみる。
国内的には
核兵器が完成したからこそ軍事費を削減するとの大義名分となり、
対外的に
安全を保証する手立てを核以外に持たないからだ。
そのため、一部の兵器や核物質を温存したまま、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など象徴的な兵器や施設の放棄に応じると予想する。
米国には完全な非核化に応じるポーズを取り、
国内軍部に向けては米国と「核軍縮交渉」を進めるとして
異論を封じる二重基準で対応することも想定される。
正恩が目指すであろう経済再建の道は、危うい綱渡りというほかない。
=敬称略(シンガポール 桜井紀雄)
【南巡講話】
1992年初め、中国の最高実力者だった鄧小平氏が広東省など南方を視察した際の一連の談話を指す。
1989年6月の天安門事件で、民主化を求める学生らの武力鎮圧に踏み切った鄧氏は、事件後に台頭した保守派を激しく攻撃し、改革開放を号令した。
この講話が、経済成長の起点になったとされる。
金正恩氏は鄧小平になれるか
経済再建危うい綱渡り
2018.06.15
(http://www.sankei.com/world/news/180615/wor1806150007-n1.html )
11日、シンガポールの観光名所を訪れた北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(手前左から3人目)(朝鮮中央通信撮影・共同)
南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で14日、10年半ぶりに開かれた将官級軍事会談の冒頭、北朝鮮側首席代表で朝鮮人民軍陸軍中将のアン・イクサンは「どんな逆風下でも板門店宣言を履行するとの初心を曲げてはいけない」と強調した。
米の支援明記されず
4月の首脳会談で南北が宣言に盛り込んだ軍事的緊張緩和が協議の主題だが、北朝鮮側の狙いは、南北双方の“軍縮”を通じた経済建設へのシフトにある。
朝鮮労働党委員長の金正恩(キム・ジョンウン)は5月の党中央軍事委員会拡大会議で、米朝首脳会談を見据えた新たな国防方針を決め、経済建設への軍の貢献に期待を示した。
軍首脳3人を入れ替える大なたも振るったとされ、6月12日の米朝会談には穏健派とされる新人民武力相の努光鉄(ノ・グァンチョル)を同行させた。
だが、米大統領のトランプと正恩が署名した共同声明には、米国からの経済支援は一切、明記されなかった。
会談中、トランプが正恩に見せたのは、漆黒の闇に包まれた夜の北朝鮮の衛星写真が突如、光にあふれる状況を映した動画だ。
トランプは「北朝鮮には素晴らしいビーチがある。そこには世界最高のホテルを建てることができる」とも力説した。
完全な非核化を履行すれば、明るい未来が待っているとのメッセージだが、
「米政府は直接支援しない。
・日中韓の支援と
・自助努力で
どうぞ発展してください」
との意図もにじむ。
北朝鮮は「米国に期待して経済建設をしたことはない」と主張しており、そうした意図は百も承知だろう。
会談前夜には、代表団一行を引き連れ、シンガポールの市内観光に出るサプライズも行ったが、注目すべきは北朝鮮メディアが伝えた正恩の言葉だ。
「多くの分野でシンガポールの知識と経験を学ぼうと思う」
「シンガポールの経済的潜在力と発展の姿をはっきりと理解した」。
名所巡りにすぎない場面で、わざわざ経済発展に力点を置いた発言を取り出しているのだ。
北朝鮮国内に向け、今後はシンガポール並みの経済発展を目指すと宣言したとも受け止められる。
「正恩は成功した中国の鄧小平になるか、失敗した旧ソ連のゴルバチョフになるかの瀬戸際にある」
韓国情報機関傘下の国家安保戦略研究院副院長の李基東(イ・ギドン)はこう分析する。
両者の違いについて李は
(1)政治的安定
(2)経済的成果
(3)融和的国際環境
を挙げる。
3つの条件に恵まれ、改革開放を導いた鄧に対してゴルバチョフは当初、米国との軍拡競争に直面した上、派閥争いを抱え、経済的成果も見込めず、社会主義体制を崩壊させた。
いびつな南巡講話
「正恩は党や軍幹部の粛清や更迭を繰り返し、政治体制の安定を手にした。
経済政策でも4月の党中央委員会総会で核開発との「並進路線」から経済建設に集中する方針を打ち出し、経済政策に関しては「内閣の指揮に無条件で服従せよ」と指示。
経済再建に向けた土壌を整えた。
シンガポールでの発言は、鄧が1992年に深圳など南方都市を巡り、経済発展の指針を説いた「南巡講話」の “金正恩版” に今後、位置付けられる可能性がある。
ただ、肝心の制裁はいまだ解けない上、国内にも大きな障壁を抱える。
米韓との敵対関係ゆえに軍事費が国内総生産(GDP)の推定約24%を占めてきた。
約120万人の兵力を維持するため、若い労働力を兵役に投じている。
北朝鮮の民主化に取り組む韓国の団体代表で北朝鮮の内情に通じる金永煥(キム・ヨンファン)は
「戦争中の国家並みの軍事費比率であり、これでは経済開発を望みようもない」
と指摘する。
内なる軍事的圧迫の打開のためにも、米国との直談判は避けられなかったとみられる。
トランプは会談で、米韓合同軍事演習の中止を表明。
米メディアのインタビューで、将来的に在韓米軍を撤退させる可能性も示唆した。
正恩は思いがけない譲歩を得た形だ。
一方で、永煥は「北朝鮮が核を完全に放棄する可能性はない」とみる。
国内的には
核兵器が完成したからこそ軍事費を削減するとの大義名分となり、
対外的に
安全を保証する手立てを核以外に持たないからだ。
そのため、一部の兵器や核物質を温存したまま、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など象徴的な兵器や施設の放棄に応じると予想する。
米国には完全な非核化に応じるポーズを取り、
国内軍部に向けては米国と「核軍縮交渉」を進めるとして
異論を封じる二重基準で対応することも想定される。
正恩が目指すであろう経済再建の道は、危うい綱渡りというほかない。
=敬称略(シンガポール 桜井紀雄)
【南巡講話】
1992年初め、中国の最高実力者だった鄧小平氏が広東省など南方を視察した際の一連の談話を指す。
1989年6月の天安門事件で、民主化を求める学生らの武力鎮圧に踏み切った鄧氏は、事件後に台頭した保守派を激しく攻撃し、改革開放を号令した。
この講話が、経済成長の起点になったとされる。
FIVE FINGER DEATH PUNCH
『GOT YOUR SIX』 (2015)
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