【湯浅博の世界読解】
アヘン戦争180年
屈辱晴らす中国の「帝国プロジェクト」とは
2018.01.10
(www.sankei.com/world/news/180110/wor1801100021-n1.html )
19世紀の英国が清国を攻めたアヘン戦争から180年近くたって、
今度はその中国が、
過去の屈辱を晴らすかのように「帝国のプロジェクト」を推進している。
かつての帝国主義が、アヘンという毒を使って東方に砲艦外交を展開したように、
中国は逆に南シナ海から西方へ「海のシルクロード」を延ばそうとしている。
中国が使うのは19世紀の麻薬アヘンではなく、
21世紀の巨額債務という “毒” である。
インドの南にある島、スリランカは
昨年末、戦略的な要衝であるハンバントタ港を
正式に中国に引き渡した。
それは、かつての英国が
香港を99年にわたって借り受けたように、
中国が99年の賃貸借契約を結んだ。
この契約の中には、
スリランカの債務から11億ドルを棒引きする約束までが
含まれている。
インド政策研究センターのブラーマ・チェラニー教授によると、
中国のローン貸し付けは、
商業的な価値よりも
戦略的な価値の高い土地に着目しているという。
このハンバントタ港はその典型で、
中東とアジアを結ぶインド洋の要衝に位置している。
それをチェラニー教授は「債務のワナ」と呼ぶ。
はじめに中国がインフラ建設の資金を調達し、
対象国が返済できなくなると、
戦略的な価値をもつ当該国の港を借り受ける。
スリランカに対しては
1世紀に及ぶ租借になるから、
ハンバントタ港は
半永久的に中国の思うままになる。
これに習近平国家主席が進める「一帯一路」構想をかぶせる。
あたかも、共存共栄のイメージになるが
実態は借金のカタ(抵当)である。
地中海でも、資金繰りに悩むギリシャから、
中国企業がピレウス港を買収している。
値打ちのあるものには、いくらでも用立てるのが金貸しの定石であろう。
冷戦時代のギリシャは、
ソ連艦隊が黒海から地中海に抜ける出口にあたり、
西側にとっては対ソ封じ込めの重要拠点であった。
中国はその要衝を押さえ、
欧州に向かう「一帯一路」の竜頭の役割を担わせる。
このほか、2015年には中国企業が
オーストラリア北部の拠点、ダーウィン港を
3億8800万ドルでやはり99年リースで手に入れている。
近くにはオーストラリア軍の基地があり、
米海兵隊がローテーション配備していることに
留意したい。
同じく米軍基地や自衛隊駐屯地のある
アフリカのジブチにも、
中国は数十億ドルを貸し付けた後に、
昨年、初めての海外基地をつくった。
ジブチはやはり、
中東のアデン湾から紅海への出入り口にあたる
要衝である。
債務危機に陥っていたジブチは、
年間2000万ドルで、中国に用地を貸すしかなかった。
さらに、アルゼンチン、ラオス、ケニアなど
いくつかの国々が、
中国による「債務のワナ」にはまって、
苦しい選択を余儀なくされた。
これらの動きは、
「中華帝国のプロジェクト」、
あるいは
「中国式グローバル化」と呼ばれる。
債務の縛りにあった国々は、
経済活力を失い、
民族の誇りを奪われ、
自然遺産が破壊されていく。
それは中国自身が19世紀に受けた苦渋ではなかったか。
ハンバントタ港の悪夢は、
香港式植民地協定が
現代によみがえったかのようだ。(東京特派員)
アヘン戦争180年
屈辱晴らす中国の「帝国プロジェクト」とは
2018.01.10
(www.sankei.com/world/news/180110/wor1801100021-n1.html )
19世紀の英国が清国を攻めたアヘン戦争から180年近くたって、
今度はその中国が、
過去の屈辱を晴らすかのように「帝国のプロジェクト」を推進している。
かつての帝国主義が、アヘンという毒を使って東方に砲艦外交を展開したように、
中国は逆に南シナ海から西方へ「海のシルクロード」を延ばそうとしている。
中国が使うのは19世紀の麻薬アヘンではなく、
21世紀の巨額債務という “毒” である。
インドの南にある島、スリランカは
昨年末、戦略的な要衝であるハンバントタ港を
正式に中国に引き渡した。
それは、かつての英国が
香港を99年にわたって借り受けたように、
中国が99年の賃貸借契約を結んだ。
この契約の中には、
スリランカの債務から11億ドルを棒引きする約束までが
含まれている。
インド政策研究センターのブラーマ・チェラニー教授によると、
中国のローン貸し付けは、
商業的な価値よりも
戦略的な価値の高い土地に着目しているという。
このハンバントタ港はその典型で、
中東とアジアを結ぶインド洋の要衝に位置している。
それをチェラニー教授は「債務のワナ」と呼ぶ。
はじめに中国がインフラ建設の資金を調達し、
対象国が返済できなくなると、
戦略的な価値をもつ当該国の港を借り受ける。
スリランカに対しては
1世紀に及ぶ租借になるから、
ハンバントタ港は
半永久的に中国の思うままになる。
これに習近平国家主席が進める「一帯一路」構想をかぶせる。
あたかも、共存共栄のイメージになるが
実態は借金のカタ(抵当)である。
地中海でも、資金繰りに悩むギリシャから、
中国企業がピレウス港を買収している。
値打ちのあるものには、いくらでも用立てるのが金貸しの定石であろう。
冷戦時代のギリシャは、
ソ連艦隊が黒海から地中海に抜ける出口にあたり、
西側にとっては対ソ封じ込めの重要拠点であった。
中国はその要衝を押さえ、
欧州に向かう「一帯一路」の竜頭の役割を担わせる。
このほか、2015年には中国企業が
オーストラリア北部の拠点、ダーウィン港を
3億8800万ドルでやはり99年リースで手に入れている。
近くにはオーストラリア軍の基地があり、
米海兵隊がローテーション配備していることに
留意したい。
同じく米軍基地や自衛隊駐屯地のある
アフリカのジブチにも、
中国は数十億ドルを貸し付けた後に、
昨年、初めての海外基地をつくった。
ジブチはやはり、
中東のアデン湾から紅海への出入り口にあたる
要衝である。
債務危機に陥っていたジブチは、
年間2000万ドルで、中国に用地を貸すしかなかった。
さらに、アルゼンチン、ラオス、ケニアなど
いくつかの国々が、
中国による「債務のワナ」にはまって、
苦しい選択を余儀なくされた。
これらの動きは、
「中華帝国のプロジェクト」、
あるいは
「中国式グローバル化」と呼ばれる。
債務の縛りにあった国々は、
経済活力を失い、
民族の誇りを奪われ、
自然遺産が破壊されていく。
それは中国自身が19世紀に受けた苦渋ではなかったか。
ハンバントタ港の悪夢は、
香港式植民地協定が
現代によみがえったかのようだ。(東京特派員)
経営難の仏原子力大手、中国が救う
再処理工場受注へ
マクロン訪中さなかに覚書調印
2018.01.10
(www.sankei.com/world/news/180110/wor1801100035-n1.html )
北京の人民大会堂で握手する中国の習近平国家主席(右)と
フランスのマクロン大統領=9日(ロイター)
フランスの原子力大手アレバは9日、
中国での核燃料再処理工場の建設で
国営「中国核工業集団」(CNNC)と合意に達し、
北京で覚書に調印したと発表した。
事業総額は100億ユーロ(約1兆3300億円)とみられ、
経営危機にあるアレバを中国資本が救うことになる。
調印式には、
中国を訪問中のマクロン仏大統領と
習近平・中国国家主席が立ち会った。
欧州連合(EU)では
中国の投資増大に伴い、
戦略産業の技術流出への懸念が高まっているが、
マクロン氏は記者会見で
「協力には相互バランスが大切。
あらかじめ決められた産業で中国の対欧投資を容易にし、
中国には欧州からの投資も容易にしてもらう」
と主張した。
アレバによると、中国に建設する再処理工場は
フランス北部のラ・アーグ再処理工場をモデルとし、
処理能力は800トン。
マクロン氏とともに訪中したルメール経済・財務相は
「今春には契約に調印できるだろう」と記者団に述べた。
アレバとCNNCは2015年に資本協力を発表。
再処理工場の30年操業開始に向け、交渉を続けてきた。
アレバはフランス電力の傘下にあり、実質的な国営企業。
2011年の福島第一原発事故以降、
世界的な原子力産業の冷え込みで経営が悪化。
フィンランドやフランスで建設中の新型原子炉の完成が遅れ、
巨額の負債を抱えている。
再処理工場受注へ
マクロン訪中さなかに覚書調印
2018.01.10
(www.sankei.com/world/news/180110/wor1801100035-n1.html )
北京の人民大会堂で握手する中国の習近平国家主席(右)と
フランスのマクロン大統領=9日(ロイター)
フランスの原子力大手アレバは9日、
中国での核燃料再処理工場の建設で
国営「中国核工業集団」(CNNC)と合意に達し、
北京で覚書に調印したと発表した。
事業総額は100億ユーロ(約1兆3300億円)とみられ、
経営危機にあるアレバを中国資本が救うことになる。
調印式には、
中国を訪問中のマクロン仏大統領と
習近平・中国国家主席が立ち会った。
欧州連合(EU)では
中国の投資増大に伴い、
戦略産業の技術流出への懸念が高まっているが、
マクロン氏は記者会見で
「協力には相互バランスが大切。
あらかじめ決められた産業で中国の対欧投資を容易にし、
中国には欧州からの投資も容易にしてもらう」
と主張した。
アレバによると、中国に建設する再処理工場は
フランス北部のラ・アーグ再処理工場をモデルとし、
処理能力は800トン。
マクロン氏とともに訪中したルメール経済・財務相は
「今春には契約に調印できるだろう」と記者団に述べた。
アレバとCNNCは2015年に資本協力を発表。
再処理工場の30年操業開始に向け、交渉を続けてきた。
アレバはフランス電力の傘下にあり、実質的な国営企業。
2011年の福島第一原発事故以降、
世界的な原子力産業の冷え込みで経営が悪化。
フィンランドやフランスで建設中の新型原子炉の完成が遅れ、
巨額の負債を抱えている。
中国、エアバスA320型機を184機購入へ
2018.01.10
(www.afpbb.com/articles/-/3158008 )
中国が
欧州航空機大手エアバスのA320型機
184機を発注していたことが分かった。
複数のフランス当局者が10日、明らかにした。
中国の航空会社13社に納入される予定という。
購入金額は明らかになっていないが、
エアバスのホームページによると
単通路機のA320型機の平均価格は9900万ドル(約110億円)、
A320neo型機では1億840万ドル(約120億円)だという。
訪中しているフランスのエマニュエル・マクロン大統領は
9日、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席と会談。
また会談にあわせ、原子力や航空など
主要産業に関する複数の事業契約の調印が行われたが、
総額は公表されていない。(c)AFP
2018.01.10
(www.afpbb.com/articles/-/3158008 )
中国が
欧州航空機大手エアバスのA320型機
184機を発注していたことが分かった。
複数のフランス当局者が10日、明らかにした。
中国の航空会社13社に納入される予定という。
購入金額は明らかになっていないが、
エアバスのホームページによると
単通路機のA320型機の平均価格は9900万ドル(約110億円)、
A320neo型機では1億840万ドル(約120億円)だという。
訪中しているフランスのエマニュエル・マクロン大統領は
9日、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席と会談。
また会談にあわせ、原子力や航空など
主要産業に関する複数の事業契約の調印が行われたが、
総額は公表されていない。(c)AFP