NAT KING COLE ~ An Affair To Remember (Our Love Affair)
【国難を問う(4)】
安保妨げる「財政均衡」の呪縛…
財務官僚のシナリオ捨てて積極財政で成長を
特別記者・田村秀男
2017.10.15
(http://www.sankei.com/politics/news/171015/plt1710150008-n1.html )
自民党候補の応援演説を行う安倍晋三首相
=12日、長岡市大手通のアオーレ長岡前(松崎翼撮影)
安全保障、少子化と「国難」への対処が待ったなしだというのに、
衆院選は今一つ、切迫感に欠ける。
与野党とも財務省が仕掛けた「財政均衡」に
文字通り金縛りになっているからだ。
大局を忘れ、ちまちましたカネのやりくり談義に終始する。
選挙後、日本再生は大丈夫なのか。
一触即発の危機は北朝鮮の核・ミサイルによる威嚇ばかりではない。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)では武装船を含め、
月間延べ平均10隻以上の中国公船が領海に侵入している。
これに対し、憲法に「自衛隊」を書き込むのは至極当然だが、
唱えるだけで相手が引き下がるはずはない。
効くのは防衛システムであり、必要なのは軍資金だ。
なのに、防衛費を国内総生産(GDP)の1%にとどめることに、
主要政党は異議を唱えない。
財政支出拡大はタブーなのだ。
昭和57年、アルゼンチン沖の英国領
フォークランド諸島(アルゼンチン側の呼称はマルビナス諸島)に
侵攻したアルゼンチン軍に対し、
英首相のマーガレット・サッチャーは軍を出動させ、撃退した。
サッチャーは「費用の観点から考えてはならない」と言い、
戦時内閣メンバーから財務相を外した。
× × ×
日本では財務官僚が財政を仕切る。
長年、用意周到に政財界やメディアに対し、財政均衡主義を浸透させてきた。
増税と歳出削減による緊縮財政によって、
借金せずに政策経費を税金でまかなう
「基礎的財政収支(プライマリー・バランス=PB)ゼロ」の考え方だ。
策謀にまんまと乗せられたのは、平成21年に発足した民主党政権だ。
2010年(平成22年)6月、
カナダ・トロントで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議で
首相の菅直人に2020年(平成32年)度のPB黒字化を、
翌年のフランス・カンヌでのG20では
首相の野田佳彦に消費税増税を、
それぞれ国際公約させた。
国際公約なら政権が代わっても、破棄できないと踏んだのだ。
官僚に洗脳された野田は
自民・公明両党を巻き込んだ「3党合意」で
消費税増税法案を成立させた。
× × ×
2012年(平成24年)に自民、公明両党が政権復帰し、
首相の安倍晋三は「国際公約とは言っていない」と距離を置くが、
副総理兼財務相の麻生太郎はPB黒字化、消費税増税とも
「国際公約に近い」と繰り返す。
財界も主要メディアも「国際公約」の大合唱だ。
安倍はこの包囲網に抗しきれず、
2014年(平成26年)4月、消費税率を8%に引き上げた。
結果は個人消費の萎縮、デフレ圧力再燃を招いた。
家計消費は
安倍が2012年(平成24年)12月に「アベノミクス」を打ち出し、
めざましく回復した。
だが、8%に増税した途端に急落し、
いまだに東日本大震災後の不況時よりも低い。
一般会計の歳出増減額から税収増減額を差し引いた値をみると、
民主党政権、安倍政権とも緊縮を基調としている。
安倍政権は2014年(平成26年)度から3年間の
消費税増収分の4割強を社会保障に回している。
安倍は予定通り2年後に消費税率を10%に引き上げ、
増収分の半分相当を教育・社会保障に振り向けるというが、
心持ち還元率を引き上げるだけだ。
安倍は「2020年(平成32年)度黒字化」目標を無視したものの、
PB均衡論に縛られている。
× × ×
希望の党などの「消費税増税凍結」はどうか。
増税をしないで教育や福祉を充実させようとすれば、
「財源はどうするのか」と自民、公明両党やメディアから突っ込まれる。
小池百合子代表は苦し紛れに「ワイズスペンディングで」と横文字で答える。
何のことはない。公共事業など財政支出の削減で捻出する、というわけで、
やはり財政均衡主義に引きずられている。
いわば、与野党とも財務官僚のシナリオ通り、
「PB均衡劇」を衆院選という大舞台で踊らされている。
予想される結末は悲惨だ。
安全保障能力は現状維持、子育て・教育支援は小出しに終始する。
待機児童は相変わらずだ。
経済は慢性デフレで、税収は減り、財政健全化は遠のく。
国難を招くPB均衡主義の呪縛から自らを解き放つ。
経済の原点に立ち返る。
日本には成長の原資になるカネは有り余っている。
カネが回らなければ経済は萎縮する。
企業が手元に留め置く利益剰余金は
今年6月末で388兆円、
年間で20兆円以上も増え続けている。
企業は経常利益のうち6割弱しか設備投資に使わない。
民間設備投資が利益を上回るのが正常な経済の姿であり、
日本も2008年(平成20年)に起きた「リーマンショック」前までは
そうだった。
一方、家計は現預金だけでも残高が6月末で944兆円に上り、
これもまた年間で20兆円以上も増えている。
企業は海外企業の合併・買収(M&A)を盛んに仕掛けては、
東芝や日本郵政のように大失敗する。
利益蓄積にばかり目が向き、
品質検査にカネを惜しんでごまかした神戸製鋼所のように、
「モノづくり日本」の国際信用も揺らぐ。
× × ×
政府はPB黒字化を金科玉条に掲げて、
増税と緊縮財政で国内需要を細らせてきた。
企業が国内投資や賃上げを渋るのは当然だ。
米有力誌の論文によれば、
先進国で過去100年間、
政府支出を減らして成長を呼び込めた事例は
一つもない。
日本は1997年(平成9年)の橋本龍太郎政権の緊縮財政以来、
財政健全化と経済成長にも失敗してきた。
民間の手ではカネが動かないなら、
政府がカネを吸い上げて、実体経済に行き渡らせるしかない。
国債は経済の成長によって返済可能になる。
成長をもたらすインフラ投資用の建設国債は該当する。
将来の人材を育成するための教育国債も、
防衛技術を開発するための防衛国債もあって当然だ。
コンピューター、インターネットなど
米国発のイノベーションの原動力は
国防予算による。
PB均衡至上主義を廃棄すれば、
一夜にして日本再生の方策が一斉に開花する。
国難のときだからこそだ。(敬称略)
(↑)
とは言っても、小池百合子氏のように「内部留保に課税」とかって、
「内部留保」というのは税金を払った残りですから、
それにまた税金をかけるなんていう悪どいことは・・・(^^;
安保妨げる「財政均衡」の呪縛…
財務官僚のシナリオ捨てて積極財政で成長を
特別記者・田村秀男
2017.10.15
(http://www.sankei.com/politics/news/171015/plt1710150008-n1.html )
自民党候補の応援演説を行う安倍晋三首相
=12日、長岡市大手通のアオーレ長岡前(松崎翼撮影)
安全保障、少子化と「国難」への対処が待ったなしだというのに、
衆院選は今一つ、切迫感に欠ける。
与野党とも財務省が仕掛けた「財政均衡」に
文字通り金縛りになっているからだ。
大局を忘れ、ちまちましたカネのやりくり談義に終始する。
選挙後、日本再生は大丈夫なのか。
一触即発の危機は北朝鮮の核・ミサイルによる威嚇ばかりではない。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)では武装船を含め、
月間延べ平均10隻以上の中国公船が領海に侵入している。
これに対し、憲法に「自衛隊」を書き込むのは至極当然だが、
唱えるだけで相手が引き下がるはずはない。
効くのは防衛システムであり、必要なのは軍資金だ。
なのに、防衛費を国内総生産(GDP)の1%にとどめることに、
主要政党は異議を唱えない。
財政支出拡大はタブーなのだ。
昭和57年、アルゼンチン沖の英国領
フォークランド諸島(アルゼンチン側の呼称はマルビナス諸島)に
侵攻したアルゼンチン軍に対し、
英首相のマーガレット・サッチャーは軍を出動させ、撃退した。
サッチャーは「費用の観点から考えてはならない」と言い、
戦時内閣メンバーから財務相を外した。
× × ×
日本では財務官僚が財政を仕切る。
長年、用意周到に政財界やメディアに対し、財政均衡主義を浸透させてきた。
増税と歳出削減による緊縮財政によって、
借金せずに政策経費を税金でまかなう
「基礎的財政収支(プライマリー・バランス=PB)ゼロ」の考え方だ。
策謀にまんまと乗せられたのは、平成21年に発足した民主党政権だ。
2010年(平成22年)6月、
カナダ・トロントで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議で
首相の菅直人に2020年(平成32年)度のPB黒字化を、
翌年のフランス・カンヌでのG20では
首相の野田佳彦に消費税増税を、
それぞれ国際公約させた。
国際公約なら政権が代わっても、破棄できないと踏んだのだ。
官僚に洗脳された野田は
自民・公明両党を巻き込んだ「3党合意」で
消費税増税法案を成立させた。
× × ×
2012年(平成24年)に自民、公明両党が政権復帰し、
首相の安倍晋三は「国際公約とは言っていない」と距離を置くが、
副総理兼財務相の麻生太郎はPB黒字化、消費税増税とも
「国際公約に近い」と繰り返す。
財界も主要メディアも「国際公約」の大合唱だ。
安倍はこの包囲網に抗しきれず、
2014年(平成26年)4月、消費税率を8%に引き上げた。
結果は個人消費の萎縮、デフレ圧力再燃を招いた。
家計消費は
安倍が2012年(平成24年)12月に「アベノミクス」を打ち出し、
めざましく回復した。
だが、8%に増税した途端に急落し、
いまだに東日本大震災後の不況時よりも低い。
一般会計の歳出増減額から税収増減額を差し引いた値をみると、
民主党政権、安倍政権とも緊縮を基調としている。
安倍政権は2014年(平成26年)度から3年間の
消費税増収分の4割強を社会保障に回している。
安倍は予定通り2年後に消費税率を10%に引き上げ、
増収分の半分相当を教育・社会保障に振り向けるというが、
心持ち還元率を引き上げるだけだ。
安倍は「2020年(平成32年)度黒字化」目標を無視したものの、
PB均衡論に縛られている。
× × ×
希望の党などの「消費税増税凍結」はどうか。
増税をしないで教育や福祉を充実させようとすれば、
「財源はどうするのか」と自民、公明両党やメディアから突っ込まれる。
小池百合子代表は苦し紛れに「ワイズスペンディングで」と横文字で答える。
何のことはない。公共事業など財政支出の削減で捻出する、というわけで、
やはり財政均衡主義に引きずられている。
いわば、与野党とも財務官僚のシナリオ通り、
「PB均衡劇」を衆院選という大舞台で踊らされている。
予想される結末は悲惨だ。
安全保障能力は現状維持、子育て・教育支援は小出しに終始する。
待機児童は相変わらずだ。
経済は慢性デフレで、税収は減り、財政健全化は遠のく。
国難を招くPB均衡主義の呪縛から自らを解き放つ。
経済の原点に立ち返る。
日本には成長の原資になるカネは有り余っている。
カネが回らなければ経済は萎縮する。
企業が手元に留め置く利益剰余金は
今年6月末で388兆円、
年間で20兆円以上も増え続けている。
企業は経常利益のうち6割弱しか設備投資に使わない。
民間設備投資が利益を上回るのが正常な経済の姿であり、
日本も2008年(平成20年)に起きた「リーマンショック」前までは
そうだった。
一方、家計は現預金だけでも残高が6月末で944兆円に上り、
これもまた年間で20兆円以上も増えている。
企業は海外企業の合併・買収(M&A)を盛んに仕掛けては、
東芝や日本郵政のように大失敗する。
利益蓄積にばかり目が向き、
品質検査にカネを惜しんでごまかした神戸製鋼所のように、
「モノづくり日本」の国際信用も揺らぐ。
× × ×
政府はPB黒字化を金科玉条に掲げて、
増税と緊縮財政で国内需要を細らせてきた。
企業が国内投資や賃上げを渋るのは当然だ。
米有力誌の論文によれば、
先進国で過去100年間、
政府支出を減らして成長を呼び込めた事例は
一つもない。
日本は1997年(平成9年)の橋本龍太郎政権の緊縮財政以来、
財政健全化と経済成長にも失敗してきた。
民間の手ではカネが動かないなら、
政府がカネを吸い上げて、実体経済に行き渡らせるしかない。
国債は経済の成長によって返済可能になる。
成長をもたらすインフラ投資用の建設国債は該当する。
将来の人材を育成するための教育国債も、
防衛技術を開発するための防衛国債もあって当然だ。
コンピューター、インターネットなど
米国発のイノベーションの原動力は
国防予算による。
PB均衡至上主義を廃棄すれば、
一夜にして日本再生の方策が一斉に開花する。
国難のときだからこそだ。(敬称略)
(↑)
とは言っても、小池百合子氏のように「内部留保に課税」とかって、
「内部留保」というのは税金を払った残りですから、
それにまた税金をかけるなんていう悪どいことは・・・(^^;