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◆ (66) 第十章 ⑥ 政治 (c) 老兵は排除せよ

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METALLICA ~ Atlas, Rise !

商品の詳細
METALLICA
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パトリック・J・ブキャナン著
宮崎哲弥監訳
病むアメリカ、滅びゆく西洋
2002年12月5日 成甲書房

第十章 分断された国家



(6) 政治 (c)

老兵は排除せよ




ヴェトナム戦争中、ジョージ・エイケン上院議員は
「さっさと勝利宣言して引き揚げよう」
と洒落を飛ばし大顰蹙 (だいひんしゅく) を買った。

エイケンは負けを認めようと言いたかったのだ。

米国を信じて命を預けてくれたヴェトナムとカンボジアの人民に勝利を捧げようと。



そのエイケン流ユーモアの通じぬ人が多かった。

ところが昨今の新保守主義派のなかには、
このエイケン方式を好んで使う向きが見受けられる。


「パット・ブキャナンには気の毒だが、
すでにこの (文化) 戦争は終わり、左翼が勝った」。

例のヒューストン党大会での私の演説後、
アーヴィング・クリストルはこうぶち上げた。

ガートルード・ヒンメルファーブ (クリストル夫人) は
『一つの国、二つの文化』 のなかでこう主張する ――

   二つの文化は
   多少の緊張感と軋轢 (あつれき) を孕 (はら) みながらも
   深刻な衝突・混乱なしに共存している。

   その時何時に満足しようではないか。

   わが国には寛容主義の伝統がある・・・

   その寛容精神が両者間の真の食い違いを尊重しつつ、
   緊張を緩和し、激情を抑え、両者のバランスを取っている。



失礼ながらミセス・クリストル、
年に百万人の胎児が殺され幼児殺しまで合法とされ、
カトリックのシンボルは冒涜され
児童は学校でこじつけの快楽主義を説かれ、
文化は汚染され英雄は泥道を引きずられても、
激情が抑えられていると?

そうした現状にわれわれは 「満足」 すべき?

両者の間にあるのは互いに尊重すべき 「食い違い」 なのか?



ナチスが銃声一つなくパリ進軍を果たしたあと、
アンドレ・ジードはこう書いた ――

「昨日の敵と折り合うのは卑怯に非ず、分別である。
運命の甘受と同様に」 と。

それは間違いだった。



かたやクリストルがエイケン方式をとったのに対し、
同じく新保守主義派のノーマン・ポドレッツはヤルタ方式を採用。

自画自賛の著書 『わが愛しのアメリカ』 において、
文化戦争は
「いまだ双方から何の和解案の提示もないが・・・
事実上、休戦」 状態だと明言する。

さらに休戦に監視に関し、マーク・リラの一節を引用して
「米国人は・・・
ウィークデーはグローバルな自由解放誌上
―― レーガン主義者の夢にして左翼の悪夢 ――
を維持し、
週末になると 60年世代の創出した倫理文化世界に浸って過ごすことに
何の矛盾も感じないようだ」
という。

だがその 「60年世代の創出した倫理文化世界」 が下水溝なのだ。



ポドレッツは役割モデルとしてヒュー・ウェルドンを引き合いに出す。

元 BBC テレビ社長で、プロデューサーや放送作家に
「猥褻 (わいせつ) な言葉や軽いポルノタッチの性的描写をそれとなく散りばめ」
させた人物だ。

なぜそんな戯 (たわ) けた指示を?

そうでもしないと番組が 「つまらなくて視聴率が落ちる」 から。

どうりでわれわれは負けそうなわけだ。

これでは T・S・エリオットの言う 「生き甲斐」 を賭けた戦いで
降伏するも同然だ。



さらにポドレックは
ヴェトナム後のパリ交渉でヘンリー・キッシンジャーが述べた有名な台詞
「和平は近い」 を真似ている。

ヘンリー自身、後悔しているに違いない一言を。

「20世紀終焉を前に」 ポドレッツは語る。

「私は感じた・・・和平は近いと」



その台詞をボーイスカウトに向かって言ってみろ!

こうした新保守主義派の態度はサム・フランシスに言わせれば
「あたりさわりのない口説き文句」 である。

クリストルやポドレッツのような連中は
文化戦争におけるサマータイム・ソルジャーでしかない。

負けたら取り返しのつかぬ戦いなのだ。

わが軍はより気骨ある闘志満々の兵士を求む。


          ◇


目 次
(
http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2016-08-15 )

日本版まえがき
序として

第一章 西洋の遺言
第二章 子供たちはどこへ消えた?
第三章 改革要項
第四章 セラピー大国はこうして生まれた
第五章 大量移民が西洋屋敷に住む日
第六章 国土回復運動
 (レコンキスタ
第七章 新たな歴史を書き込め
第八章 非キリスト教化されるアメリカ
第九章 怯える多数派
第十章 分断された国家
著者あとがき
監訳者解説


  


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