ONE OK ROCK ~ Taking Off (映画 『ミュージアム』 主題曲)
ONE OK ROCK 『AMBITIONS』 (2017.01.11)
(http://natalie.mu/music/news/209804 )
パトリック・J・ブキャナン著
宮崎哲弥監訳
病むアメリカ、滅びゆく西洋
2002年12月5日 成甲書房
第十章 分断された国家
(5) 離脱方法はあるか
アメリカが正義の国でなくなったら、われわれはいかなる態度をとるべきか。
答えはマタイ伝 22章 21 節にある。
「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」。
伝統主義者はローマ改宗者を見習うべきだ。
帝国は依然忠誠に価する存在だったが、文化は荒廃していると彼らは見た。
そんなものからは逃れるに限る。
そこで彼らはかつての同志や慣習とは縁を切り、
家族と改宗者仲間で新たなキリスト教文化を創出。
ローマ帝国への忠義を維持しつつお多神教文化とは袂を分かった。
新文化からの離脱方法はいろいろある ――
テレビや映画は観ない、
自宅学習にする、
堕胎医に抗議の声をあげる、
より汚染度の少ない地域へ移る。
アマン派はかなり昔に離脱した。
ユダヤ正統派も分派した。
モルモン教徒はブリガム・ヤングに率いられグレート・ソルトレークに移住した。
19世紀、カトリック信者は子供を公立学校から私立へ転校させた。
1980年代、福音派と聖書根本主義派は
代替文化とそれに合致する枠組みを創りはじめた ――
キリスト教学校、テレビ番組、雑誌、ラジオ局、放送網、書店、出版社。
現在、無数の児童がカトリックまたはキリスト教学校へ通い、
自宅学習の子は100万人を超える。
コラムニストのジェイムズ・K・フィッツパトリックは 「ワンダラー」 誌で
カトリック伝統派に向かって語りかけた。
「今度はサブカルチャーとしての生活に順応していくしかないだろう・・・
もう一つの選択技は、
ハリウッドのポルノ商人の形成した新生アメリカと仲直りすることだが・・・
それは考えられない選択だ」
大人は本や CD を買うことにより支配的文化を離脱できる。
町のビデオショップは 「成人映画」をお薦めするかもしれぬが、
昔の超大作には名画がごまんとある。
ハリウッドはかつては英雄や信義や愛国心を讃える映画を作っていた。
2000年の 『グラディエーター』 『パトリオット』 『13デイズ』 は前向きな良作だ。
1999年、AFI (アメリカ映画協会) が発表したアメリカ映画百選によると、
1982年以降の作品でトップ 50に入ったのはわずか 1 作だった。
常に物笑いの種とされる 1950年代からはトップ 20に 7策も選出された ――
『波止場』 『雨に唄えば』 『サンセット大通り』 『戦場にかける橋』
『お熱いのがお好き』 『イヴの総て』 『アフリカの女王』。
その他 50年代でベスト 100入りを果たしたのは ――
『真昼の決闘』 『裏窓』 『欲望という名の電車』 『地上 (ここ) より永遠 (とわ) に』
『理由なき反抗』 『めまい』 『巴里のアメリカ人』 『シェーン』 『ベン・ハー』
『ジャイアンツ』 『陽の当たる場所』 『捜索者』
1998年、ランダム・ハウスの 「モダン・ライブラリー」 編集部選出の
(英語で書かれた) 20世紀のベスト小説 100は、
カウンターカルチャー優勢ではあるが、
『ロード・ジム』 『闇の奥』 を含むコンラッドの 4作品のほか、
オーウェルの 『動物農場』 『1984年』、
ハクスリーの 『素晴らしき新世界』、
ケストラーの 『真昼の闇』、
ロバート・ベン・ウォーレンの 『すべて王の臣』、
ウィリアム・ゴールディングの 『蝿の王』、
ウォーカー・パーシーの 『映画好き』、
キブリングの 『キム』
が選ばれている。
ノンフィクション・ベスト 100は左よりではあるが、
T ・S・エリオット、H・L・メンケン、シェルビー・フット、トム・ウルフ、
ウィンストン・チャーチル、ポール・フッセル、英国の戦史家ジョン・キーガン
が選に残った。
伝統主義者は
高校・大学の読書リスト、フィルムライブラリーその他あらゆる手段を駆使して
若い世代に最良のアメリカを伝えていけばいい。
そう難しいことではない。
貯水池に汚水が捨てられたら水は買って飲めばいい。
汚濁文化にも同じことが言える。
インターネットは政治的・宗教的コミュニティの声を総動員できる。
大人は良質の伝記・歴史・政治・ニュースを
書物だけでなくケーブルテレビでも発見できる。
ラジオからは馬鹿話やイカれたロック、ヒップホップ、過激なラップのほかに、
クリスチャンや保守派のトーク、クラシックやポピュラー音楽も流れてくる。
子供たちの離脱は大人より困難だ。
快楽主義は彼らの触れる音楽・映画・テレビに染み渡っている。
雑誌にも、本にも、どこにも逃げ場はない。
親がわが子に人生の価値をじっくり説いて聞かせ、あとは
どうかこの 21 世紀の大湿地 (デイズマル) 文化を抜け出せますように
と祈る。
おそらくそれしか道はないであろう。
◇
目 次
(http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2016-08-15 )
日本版まえがき
序として
第一章 西洋の遺言
第二章 子供たちはどこへ消えた?
第三章 改革要項
第四章 セラピー大国はこうして生まれた
第五章 大量移民が西洋屋敷に住む日
第六章 国土回復運動 (レコンキスタ)
第七章 新たな歴史を書き込め
第八章 非キリスト教化されるアメリカ
第九章 怯える多数派
第十章 分断された国家
著者あとがき
監訳者解説