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◆ 今も尾を引く 「古代性」。韓国宗教家の国政介入事件

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RAGE ~ The Devil Tours Again (2016.11.10 公開)

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韓国宗教家の国政介入事件
今も尾を引く古代性
筑波大学大学院教授・古田博司
2016.11.09
(
http://www.sankei.com/column/news/161109/clm1611090005-n1.html )



韓国が女性実業家にして宗教家、崔順実容疑者の国政介入疑惑で揺れている。
これは簡単に言えば
李氏朝鮮が朱子学を国教とする儒教国家だったにも関わらず、
宮中に巫術師が出入りしていた伝統の回帰である。
口寄せや占いを専業とする巫女 (ふじょ) は王朝としては禁令だったが、
宮中がこの密儀の誘惑に勝てたことはなかった。



また、朴槿恵大統領一宗教人との関係がこれほどずぶずぶになってしまうのは、
コリアという不信社会チョン・トゥルダ情が入る) 」 の間柄になると、
このような結末に終わることが多いということで、これは後述しよう。



不信社会が生んだ強権政治



不信社会なのは南のみならず北も同様である。
朝鮮半島は東部には山地があるが、西側は平坦 (へいたん) で、
17世紀に侵攻した満洲軍は、
奉天 (瀋陽) を出発してソウルを陥落させるまで 2週間しかかからなかった。
地政学的に行き止まりの廊下なので国を守ることができない
契丹族、モンゴル、豊臣秀吉、満洲族いずれの侵攻のときも王は真っ先に逃げた。
朝鮮戦争では南も北も為政者が遁走とんそう した。



致命的な地形であり、
日本の隣にあるのは
イタリア半島やバルカン半島ではなく、
少しましなパレスチナと思ったほうが良いだろう
ましというのは、
南北からしか侵攻できず、
すそが海で切れて行き止まりになっているからである。
そこに溜 (た) まった民衆
伝統的に為政者に不信感を持っているので言うことを聞かない。
支配するには強権政治しかないのである。



李朝時代では刑政の官以外にも各役所に牢獄 (ろうごく) があり、
不服従だとみなされるとその場で獄に繋 (つな) がれた。
これを 「濫囚の弊」 という。
みだりに捕らえる伝統があり、
産経新聞ソウル支局長の名誉毀損 (きそん) 起訴事件でも、
私はこの伝統を指摘しておいたのだ。



伝統だった告げ口と威嚇



朴槿恵大統領の告げ口外交は、
コリアの宮廷のイガンヂル離間策が起源である。
王は朝から晩まで臣下たち相互のイガンヂルを聞かなければならない。
史料を読むと、役人の嫁の不倫まで王の裁定を仰ぐ形で言いつけている。
臣下同士すべて不信の関係である。
ゆえに朝鮮政治は王権と官僚群のシーソーゲームとしてあらわれ、
後者は武人と組んで、王を廃することもあった。



今の北朝鮮一番これを恐れているのが金正恩氏であり、
家臣団に排除される恐怖からの威嚇と、
国威発揚による人気獲得のため、
すでに父を超える 2倍のミサイルを日本海に発射したのである。



このイガンヂルは東洋の国際関係にも有用だった。
明の時代を例にとれば、
朝鮮も満洲族もモンゴル族も
互いに相手の悪口を明に言いつけるのだ。
内容は
突然、李朝が攻めてきて大量虐殺されたとか、
満洲族が国境を越えて民を奴隷として拉致したとか、
そういう文書による告げ口なのである。



明の裁定で埒 (らち) があかないと、
満洲族は李朝に朝貢して臣下になってしまうこともする。
そうすると、明が礼の違反だとして李朝を叱責する。
汝は明の東藩 (東の王侯) ではないか、
満洲族はあくまで 「外の人」 だと牽制 (けんせい) する。
つまり華夷秩序とは、
王国内の日々の君臣関係国同士の関係にまで拡大したものなのである。



忠貞の厚い臣下と薄い臣下、
臣下同士の告げ口引きずり落とし
王の牽制と威嚇。
伝統的にこのような関係しかなかったので、
中国今も威嚇と牽制の国際政治しか知らないのである。



進歩史観では歴史を被えない



コリアに戻れば、前述の不信社会なので、
韓国ではひとたび情が入る関係になると
すべてを許し合う魅惑の信頼関係へと変ずるのである。
朴槿恵氏と崔容疑者の関係がこれであり、
こうなると底がない関係になることはすべての韓国人が知っている。
この関係を築くために、
崔容疑者の父の宗教団体の創設者、崔太敏氏が
朴槿恵氏の家族関係を故意に破壊したというのはあり得る話である。



要するに、日本以外の東洋諸国は、
ほんの 100年前は古代王朝だったのであり、
その古代性がいまも尾を引いている。
その伝統の桎梏 (しっこく) はあまりに強力で、
中国や北朝鮮は過去を反芻 (はんすう) し、
韓国まで先祖返りを起こしているということなのである。



われわれは明治以来、ドイツ渡来の進歩史観に支えられ、
古代・中世・近代へ直線的に発展する自己像を描いてきた。
それでうまくゆけたのは、ヨーロッパと同じ中世があったからだ。
全土が王土で所有権などなく、商業活動も自由でなく、
貧しく非衛生な古代が近代まで続いた国があったことは
歴史の例外ではないのである。



のみならず、古代がいつ始まるかもわからない。
古代エジプトは前 40世紀、
古代ギリシアの都市国家ができてくるのは前 9世紀、
古代インカ帝国の前身のクスコ王国ができるのは後 13世紀である。
歴史には遅速がありジグザグしている
まずは、
進歩史観では歴史を被 (おお) いきれないという認識と反省から始めないと、
これからの世界はますます分からなくなるだろう。(ふるた ひろし)



  


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