SHINEDOWN ~ Simple Man (2009)
―― LYNYRD SKYNYRD (1973)
暴言王トランプ氏を支える 「普通の白人」
ニューヨーク駐在編集委員 松浦肇
2016.10.20
(http://www.sankei.com/world/news/161020/wor1610200007-n1.html )
トランプタワーの前に集まったトランプ氏支持者ら=8日、ニューヨーク (AP)
10月初旬のニューヨーク市マンハッタン。
米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ氏が所有する高層ビル
「トランプタワー」 の前に同氏の支持者が集合した。
ニュージャージー州やワシントンなど、参加者の出身はバラバラだ。
ちょうど前日に
トランプ氏が女性を蔑視するわいせつな発言をしていた過去が明らかになったのだが、
地元メディアにカメラを向けられた参加者は意に介さない。
「彼は米国を愛している」
「(対抗馬で民主党候補の) ヒラリー・クリントンの過去を洗うべきだ」
と口々にトランプ氏への思いを訴えていた。
女性蔑視発言だけではない。
大胆な節税術や複数回にわたる不適切な性的行為疑惑。
このところのトランプ氏は 「恥ずかしい過去」 が続々と明らかになっており、
大統領選の得票率を占う世論調査では、クリントン氏に後塵を拝している。
それでも、トランプ氏は意気軒高だ。
下がったとはいえ、35~40% 台の支持率を死守しているためだ。
仮に、日本の与党の党首選で
ここまでの不祥事が噴出したら、候補者は即座に出馬を辞退するだろう。
本人の半生を描いた 「暴かれたトランプ」、
支持層を分析した 「増殖する大衆迎合主義者」 に 「新しい社会的少数者」。
米国では、トランプ氏の根強い人気を研究する本が相次いで出版されている。
「通常なら支持率が急落するはずの暴言を吐いても、
『コアの支持層』 が離れないどころか、逆に奮い立つ特殊性」
(ニューヨーク市立大学バルーク校のデビッド・バードセル教授)
に社会が驚いているからだ。
既存の政治や支配階級に対する不満、
事業家としての成功体験への憧れなど、
トランプ人気の分析は諸説あるが、
米国の社会心理学者、アーリー・ホックシールド氏が唱える
「割り込み理論」 が注目されている。
ホックシールド氏は
トランプ氏の支持者が多い南部州で潜行調査し、
その体験記をまとめた 「かの地に住む異邦人」 をこのほど刊行した。
書き起こしたインタビューが 4千ページ超に及んだという力作である。
マンハッタンを最近訪れたホックシールド氏によると、
「トランプ氏支持の中核は、
仕事で成功し、子供を立派に育てて、幸せな老後を送りたいと思う、
普通の白人たち」
だという。
とはいえ、格差社会の米国は中産階級泣かせである。
子供を大学に入れるにも、医療保険を購入するにも多額のお金がいる。
「白人の中産階級は
『いつかは自分たちも…』 とこつこつと働き、
まるで列で並ぶかのように成功する順番を辛抱強く待っていた」 (ホックシールド氏)
だが、オバマ政権は
移民にも保険を与え、
同性愛者も結婚することで税控除が可能になった。
入学から就職まで、
黒人や女性を優先する積極的差別是正措置が米国を席巻している。
このため、
「『移民、女性、黒人、同性愛者が自分たちが昔から並んでいた列に割り込んだ。
これは米政府の裏切りだ』
と白人の中産階級は怒っており、この怒りにトランプ氏が応えた」
というのがホックシールド氏の切り口である。
「違法移民の取り締まりなど、秩序を取り戻してくれる」。
ニューヨーク州在住のジョン・ライリー氏は、交通機関に勤める典型的な白人中産階級だ。
4月の同州予備選に続き、11月の本選にはトランプ氏に一票を投じる予定だ。
「割り込みは許さない」 との主張が正当かどうかは別として、
トランプ氏は 「コアな支持層」 の怒りを背負っているのである。
◆ パトリック・J・ブキャナン著 『病むアメリカ、滅びゆく西洋』
(http://hawkmoon269.blog.so-net.ne.jp/2016-08-15 )
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◆ 暴言王トランプ氏を支える 「普通の白人」
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