プーチン氏 VS 元石油王、新たな対決幕開け
「革命は不可避」 との発言に国際手配で応酬
2015.12.24
(http://www.sankei.com/world/news/151224/wor1512240034-n1.html )
ロシアのプーチン大統領 (63) の政敵として約 10年間を獄中で過ごし、現在は海外に住む元石油王、
ホドルコフスキー氏 (52) が(2015年) 12月 23日、17年前の地方市長殺害を首謀した容疑で
『露連邦捜査委員会』 から国際指名手配された。
同氏が最近、「ロシアでは革命が不可避だ」 などと発言し、政権打倒を支援する姿勢を鮮明にした
のを受けた動きだ。
ロシア経済の低迷が深刻化する中、プーチン氏とホドルコフスキー氏の新たな対決の幕が開けた。
『連邦捜査委員会』 は 12月 22日、ホドルコフスキー氏を支持する団体 「開かれたロシア」 のモスクワ
事務所などを家宅捜索。
12月 23日には、西シベリアの産油地、ネフチユガンスクの市長が 1998年に殺害された事件を首謀した
として、ホドルコフスキー氏を国際手配した。
「ユコス事件」 で収監されたホドルコフスキー氏は 2013年 12月、ソチ冬季五輪を前にプーチン氏の恩赦
で釈放された。
事件から 17年を経ての立件には 「事実無根だ」 と反論している。
同氏は英国やスイスに居住しており、身柄がロシアに引き渡される可能性は低いとみられる。
ホドルコフスキー氏は恩赦の際、「政治活動に携わらないこと」 をプーチン氏に約束。
しかし、判決上の刑期が終わった 2014年 8月以降は 「ロシアで起きていることを傍観できない」 と
プーチン政権批判を強めてきた。
最近のロンドンからの遠隔記者会見では、プーチン政権の民主主義破壊を 「反憲法クーデターだ」 とし、
合法的な政権交代の可能性が奪われている以上、「革命」 は避けられないと発言。
政権が持ちこたえるための財政的資源は、「国際原油価格の下落」 と 「米欧の対露制裁」 が重なって
いる現状では、2017年までしか続かないだろう ―― と指摘した。
ホドルコフスキー氏は、「革命」 を平和的なものにするには 「権力の代替となりえる人々を支援せねば
ならない」 とし、2016年夏の 「下院選」 に向け、候補者の育成や選挙監視活動への援助を行う方針。
同氏の現在の資金力には不明点が多いが、ロシア経済が悪化する中で動向が注視される。
これに神経をとがらせているのがプーチン政権だ。
ホドルコフスキー氏をはじめ、ソ連崩壊後の 1990年代に富を築いたオリガルヒ (新興寡占資本家) への
国民感情は総じて良くない。
政権には、新たな国際手配によって、同氏は 「犯罪者」 や 「敵」 であるというイメージを国民に浸透させ
る狙いがありそうだ。
ユコス事件は、プーチン政権が政治・経済の国家統制を強める分水嶺だった。
反政権派やリベラル派識者には、現在のロシアが 「システム危機」 に陥ったとの見方が強まっている。
(モスクワ=遠藤良介)
露の国家基金 「2019年初めに底つく」
資源頼み、欧米制裁… プーチン政権さらに窮地
2016.01.11U
(http://www.sankei.com/world/news/160110/wor1601100036-n1.html )
2008年のリーマン・ショック時にロシア経済を下支えた、「石油や天然ガスの税収を基盤とする
露政府の基金」 が 2019年にも枯渇する見通しであることが明らかになった。
財政赤字を補填 (ほてん) するための 「基金」 からの支出に歯止めがかからないことが原因だが、資源
収入頼みの経済政策の行き詰まりが背景にある。
欧米の制裁で基金に要請が急増している企業支援も困難になる可能性があり、プーチン政権にも痛手と
なりそうだ。
露政府は石油・ガスの採掘・輸出税収が潤沢な際にその一部を積み立てており、赤字補填に使う 「予備
基金」 と、景気刺激策に利用する「国民福祉基金」の 2つの国家基金を抱えている。
ロシアはリーマン・ショックの直撃で 2009年には経済成長率がマイナス 7.9% に落ち込んだが、その後
政府が実施した巨額の景気対策の原資となったのが、これらの基金だ。
しかし露中央銀行がこのほど発表したリポートによると、政府は 2015年 1 月~ 10月に赤字の埋め合わ
せに予備基金から 1 兆 5600億ルーブル (約 2兆 4400億円) を使い、2016年にはさらに 2兆 1370億
ルーブルを使うと予測。
このペースで支出を続ければ、2017年には国民福祉基金も赤字補填が必要となり、「2019年初めには
両者が底をつく」 と指摘した。
露政府の見通しの甘さも事態の悪化に拍車をかけた。
政府が昨年 (2015年) 10月に承認した予算原案は原油価格を 1 バレル=50ドルに設定。
現在は同 30ドル台で推移し、この水準が維持されれば、石油・ガス関連の税収が想定を大幅に下回る
のは確実だ。
さらに基金には欧米の経済制裁で資金調達が困難になった企業から 「次々に支援要請が来ている」
(日露貿易筋) 状況とされる。
制裁発動後、国営石油最大手ロスネフチや独立系天然ガス企業ノバテクなどが相次ぎ露政府に支援を
要請。
ドボルコビッチ副首相は 「石油や輸送、農業分野の企業まで支援の原資として基金に言及しているが、
すべてに足りる訳がない」 と警告したが、企業や金融機関向けの複数の支援が承認されたもようだ。
経営危機にある政府系の 『開発対外経済銀行』 (VEB) も、基金からの支援が見込まれている。
融資は返済を前提としているが、金額が増大すれば基金の運用が圧迫されるのは必至。
基金の存続が困難になれば国家による企業支援も難しくなり、露経済には大きな痛手となる。
(モスクワ=黒川信雄)
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