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(1590) 【東を向くロシア プーチンの思惑】(1)実利狙い「冷水」と「厚遇」

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【東を向くロシア プーチンの思惑】
(1)実利狙い「冷水」と「厚遇」
2012.08.15

(http://sankei.jp.msn.com/world/news/120815/erp12081507420001-n1.htm)




「領土は一寸たりとも渡さない」


ロシアのメドベージェフ首相が2010年11月に次いで北方領土の国後島乗り込み
挑発的な言葉を述べたのは7月3日のことだった。

それから1カ月もたたない同月28日、
国家元首のプーチン大統領玄葉光一郎外相をロシア南部のソチに招いて会談した。

日本の外相との個別会談は10年ぶりのことだ。


一見、相反するようにみえる2つの事象が意味するものは何か。


プーチン政権は9月初旬、極東のウラジオストクで
アジア太平洋経済協力会議(APEC首脳会議初めて主宰するのを機に、
アジア重視外交かじを切ろうとしている

ダイナミックに発展するアジア太平洋地域との経済統合を深め、
プーチン政権優先課題とする極東地域の発展結びつける戦略を描いているのだ。


日本からの投資技術移転はロシアにとって大きな魅力に違いない。


だが、「領土問題は別物」というのがロシアの認識だ。

ラブロフ外相は最近、国連憲章まで持ち出して北方四島の領有権主張し、
要人が北方領土訪問を「控えることはない」言い切っている


「対日強硬派」のメドベージェフ氏が冷や水を浴びせ、
「柔道家で親日派」のプーチン氏が異例の厚遇で応じる。

役割分担背後に、
日本から経済協力という「実利」だけを獲得する戦術が透けてみえる。


          ◇


ロシアが「東」に熱い視線を注いでいる。

北方領土問題を抱えるわが国は、どう向き合おうとしているのか

プーチン流「東方政策」の実態と背景を極東から報告する。(遠藤良介)



中韓台頭…色あせる日本の優位


ソ連時代には
外国人の立ち入りが許されない「閉鎖都市」だった沿海地方の中心都市、
ウラジオストクに、今、建設ラッシュのつち音が響いている

太平洋艦隊の司令部が置かれる軍港もあるこの地で、
9月開催のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて
大規模な再開発が急ピッチで進んでいるのだ。


APEC会場となる沖合のルースキー島に向けては
「世界最大」とされる斜張橋が完成し、
島では極東連邦大学新キャンパスが建設されている。

空港から市街地へは鉄路が敷設され、
初めて下水処理施設も9月中に完成する見通しだ。


APEC関連のインフラ整備で同市に投じられた総額は
6千億ルーブル(約1兆4800億円)

5月に発足したプーチン政権は極東発展省なる役所まで新設し、意気込みを見せた。


「今後10~15年間の世界経済最も大きな不安定要因欧州だ。
その欧州ロシア資源輸出など貿易の半分を依存している」。

ウラジオストク太平洋戦略研究センターのテルスキー所長(61)はこう語り、
アジア太平洋地域「窓」を開くことで経済を多角化する必要性を強調する。


          ■   ■

石油マネーに支えられた旺盛な消費欲が注目されるロシアだが、
発展の中心モスクワサンクトペテルブルクといった西部に偏っており
極東はその流れから大きく取り残されてきた

ソ連時代に存在した「辺境」住民への割り増し給与などの特典が消え
極東はむしろ激しい人口流出産業衰退に苦しんだ。


極東連邦管区ロシアの国土の36%を占めながら、
人口は628万人と全体の4%強にすぎない。

域内総生産国全体の5・4%
平均月収は3万ルーブル(約7万4千円)にとどまる。


他方、ウラジオストクの周辺には
日本中国韓国といった巨大な経済圏があり、
3カ国の国内総生産(GDP)の総額ロシアの8倍にのぼる。

プーチン政権の「東方政策」は、
旧ソ連・ロシアが地の利を生かしてこなかった反省に立ったものにほかならない。


APEC関連のほかにも極東では大型プロジェクトがめじろ押しだ。

ウラジオストクにはロシアで2番目となる液化天然ガス(LNG)プラント、
ナホトカには石油化学コンビナートを建設する計画がある。

テルスキー氏は、
極東発展には「技術と資金、製品販路確保のためのパートナーが不可欠だ」
とし、とりわけ韓国日本期待を寄せる


          ■   ■

日本企業も、こうした流れに乗って商機をつかもうと躍起になっている。

ウラジオストクLNGプラントについては
資源エネルギー庁が陣頭指揮をとり、伊藤忠商事など日本企業の参入を後押しする。

重工大手のIHI(旧社名:石川島播磨重工業株式会社)は
APEC会場への斜張橋建設で技術協力し、さらなるロシア市場参入への足がかりを得た。


だが、ロシア市場でも中国や韓国の企業が急速に台頭し、
日本の経済力が絶対的優位にあるわけではない。

極東の日露関係筋
「日本の国内需要はこれから縮小し、先進国相手だけでは十分な利益を挙げられない。
自発的に動かねば(ロシア市場は)中国や韓国に食われてジリ貧になるだけだ」
と危機感を示す。


東アジアの勢力図変わりつつある今
経済協力をテコに
北方領土交渉を動かそうとしてきた日本の戦略は、
もはや実態と乖離(かいり)しているようにみえる

そうした事情を見越しているからこそ、ロシア領土問題強気の姿勢をみせるのだ。


だが、矛盾を抱え、焦りを覚えているのは、決してわが国だけではない。(遠藤良介、黒川信雄)



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APEC開催に向け、再開発が進んだウラジオストク。
市内の金角湾にも橋が架けられ、渋滞の緩和が期待されている。




  
  
  


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