昨年(2011年)7月に、20年以上もの内戦を経て、「南スーダン」が分離独立した「スーダン」。
今は国連平和維持活動(PKO)がインフラ整備などを主体に派遣され、日本からも自衛隊が参加していますが、そのすぐ近くで、未だに政府軍だの反政府軍だの他民族入り乱れだので、噴煙が上がり、多くの民衆が飢餓にあえいでいます。
その「スーダン」と中国のつながりを、池上彰氏の『大衝突』から抜粋します。
池上 彰 著
『大衝突』
巨大国家群・対決の行方
(2008.09.30 発行)より
米中の世界戦略
「ジェノサイドオリンピック」
北京オリンピックの芸術顧問として、開会式と閉会式の総合演出プロデューサーを引き受けていたハリウッドの映画監督スティーブン・スピルバーグは、2008年2月、芸術顧問を辞退しました。
スピルバーグは2007年4月、アフリカ・スーダンのダルフール紛争に関して、中国がスーダン政府に肩入れする政策を改めるように手紙を胡錦濤に送っていましたが、聞き入れられなかったとして、辞退を発表したのです。
実はスピルバーグが手紙を送る直前の2007年3月、アメリカの女優ミア・ファローが、スーダン政府を支援する中国が開こうとしている北京オリンピックを「ジェノサイド(虐殺)オリンピック」と批判し、スピルバーグに対しても、「虐殺に手を貸すな」と求めていました。
スピルバーグは、この批判を受けて、胡錦濤に親書を送ったのですが、効果がなかったと判断したようです。
ミア・ファローの言葉は威力を発揮。これ以降、アメリカではこの言葉で中国を批判する動きが加速します。
2007年6月にはアメリカ下院会議で、中国に対し、ダルフールでの大虐殺をやめさせるようにスーダン政府に影響力を行使することを求める決議が採択されました。
スーダン政府を支援する中国
アフリカ北東部に位置するスーダン。
この西部のダルフール地方では、大虐殺が進行中です。
ダルフール地方では、2003年に黒人主体の反政府組織が反乱を起こして以来、政府軍と反政府組織による内戦状態が続いています。
この内戦がさらに民族浄化にまでエスカレートしました。
反政府組織の地盤と目される黒人集落を、アラブ系遊牧民の民兵(ジャンジャウィード)が襲撃。
これをスーダン政府軍が全面支援しているのです。
黒人の多くはキリスト教徒です。
対する武装民兵やスーダン政府は、アラブ系イスラム教徒です。
政府による反政府運動弾圧が、アラブ系イスラム教徒による黒人キリスト教徒絶滅作戦の様相を呈しています。
2003年から2007年までに20万人もの人々が殺害され、210万人が難民となっています。
難民の一部は西隣のチャドに流れ込み、今度はチャドが政情不安に陥っています。
国連はスーダン政府に対して虐殺をやめるように求めていますが、停止される気配はありません。
スーダン政府の態度に怒ったアメリカやヨーロッパ諸国は、怒りの矛先を中国に向けました。
中国がスーダン政府の最大支援国だからです。
2007年、中国はスーダン政府に1,700万ドルもの無利子融資を決定し、さらに大量の武器をスーダンに売却しました。
この武器が、黒人住民の殺害に使われていると見られているのです。
米英両国は、国連の場でスーダンに対する経済制裁を下そうとしてきましたが、その都度、中国の反対で挫折しました。
中国は国連安全保障理事会の常任理事国。
拒否権を持っていますから、国連安保理としての方針を打ち出すことができません。
中国はスーダン政府の後見人を任じているのです。
アフリカに投資する中国マネー
中国は、なぜ世界の反対を押し切ってまでスーダン政府を支援するのか。
理由は明快。
資源目当てです。
急速に経済発展を遂げる中国は、世界中で原油を確保するために血眼になっています。
中でもアフリカを最重点に、資源外交を繰り広げています。
2006年11月、中国は北京で「中国・アフリカ会議」を開催し、アフリカから48カ国もの首脳を集めました。
アフリカへの経済支援を強化する一方で、アフリカの原油など資源の確保に努めています。
この会議で温家宝首相は、
「中国の援助は誠実無私であり、いかなる政治条件もつけない」
と演説しました。
つまり、アフリカに多い独裁国家に対して、
「独裁政治に文句をつけないから原油を供給してくれ」
と働きかけたのです。
日本のODA(政府開発援助)では、援助が軍事目的に使われないこと、人権を迫害している独裁政権への援助をしないことなどの条件がありますが、中国政府の方針に、そんなものはありません。
「軍事に使ってもらっても結構、独裁者の懐に入っても構わないから、わが国に原油や資源を売ってくれ」というわけです。
アフリカからの輸入量は、いまや中国の原油輸入量の3分の1を占めるまでになっています。
中でも、スーダンが輸出する原油の7割を中国は買い上げています。
さらに中国の中国工商銀行は2007年10月、南アフリカのスタンダードチャータード銀行の株式の20%を取得すると発表しました。
この銀行は、アフリカ各国を舞台に業務を展開しています。
中国は、この銀行に資本参加して足場を築くことによって、アフリカへの経済進出を加速しようとしているのです。
エネルギー爆食の中国
猛烈な勢いで経済発展を遂げつつある中国。
それに伴って、資源を大量に必要としています。
爆食という言葉がふさわしいかもしれません。
たとえば原油の需要量は、2000年段階では1日あたり490万バレルだったものが、2020年には940万バレルにまで増加しそうだと推定さrています。
実に2倍。
かつては石油輸出国だった中国が、いまでは巨大な輸入国に変貌しました。
中国の経済構造は、効率性が低く、エネルギー大量消費型です。
いずれエネルギー効率型に発展するにせよ、当分の間は、エネルギーをカブ飲みするしかありません。
そのためのエネルギー源確保に血眼になっているのです。
問題は石油にとどまりません。
中国は石炭の大量消費国でもあります。
国内のエネルギー需要の実に約7割を石炭に依存しています。
2005年には世界の石炭消費量の37%にあたる21億7,900万トンを消費しました。
中国の石炭は硫黄分の多い低位炭が多く、深刻な大気汚染を引き起こしています。
今度は、燃料効率がよく環境への悪影響も少ない高品位炭を大量に輸入することになるでしょう。
石炭も中国が買いあさることになるのです。
「人権より資源」の中国
中国は、アフリカのスーダンばかりでなく、ムガベ大統領の独裁が続いてきたジンバブエに対しても大量の武器を輸出してきました。
2008年4月には、中国からアフリカ内陸部のジンバブエに売却された武器を近隣の港に陸揚げしようとして、周辺各国から拒否され、武器を積んだ貨物船が中国に引き返す事態も起きています。
ナイジェリアにも接近しています。
2006年には胡錦濤国家主席がナイジェリアを訪問し、経済援助と引き換えに、原油採掘の権益を確保しました。
ナイジェリアでは、「人民の共有財産である石油が海外に持っていかれる」ことに反発するゲリラがたびたび石油施設を襲撃。
中国人労働者が負傷する事件も起きています。
アジアで人権問題が深刻なのは、東南アジアのミャンマーです。
軍事政権による独裁が続き、いったんは選挙で勝利した民主勢力の国民民主連盟の活動を停止させ、指導者のアウン・サン・スーチーを自宅軟禁にしていました。
さらに2007年9月、ガソリンや軽油など燃料代の突然の値上げに怒った市民や僧侶が抗議デモをしたところ、軍事政権は軍を使って弾圧。
取材中の日本のジャーナリスト、長井健司さんが兵士に射殺されました。
この弾圧に対して国連の安全保障理事会が経済制裁を科そうとしましたが、中国はロシアと共に反対にまわり、制裁は実行されませんでした。
中国は、国際社会の非難をよそにミャンマーの軍事政権との関係を強化し、ミャンマーでの2つのガス田の天然ガスの供給権を獲得してます。
まさに「人権より資源」なのです。
アメリカと対立
中国は、さらに南米にも触手を伸ばしています。
ベネズエラで石油鉱区の開発を進め、アルゼンチンやチリ、ペルー、ボリビアなどで鉄鉱石の開発交渉などを進めています。
南米では、ベネズエラのチャベス政権など反米色の強い政府が次々に誕生しています。
中国は、こうした反米政権との関係強化に力を入れています。
これがアメリカには気に食わないのです。
中国が、将来アメリカと対立・対決することになる日を想定して、アメリカの手の届かない地域で資源を確保することを狙っているのではないかというわけです。
中国には、
「中国石油天然気集団公司」(CNPC・ペトロチャイナ)
「中国石油化工集団公司」(SINOPEC・シノペック)
「中国海洋石油集団公司」(CNOOC・シ―ノック)
の3大国有石油会社が存在します。
この3社は、「中国版メジャー」と呼ばれています。
この3社が先頭に立って、世界中で原油の権益を買い漁っているのです。
中国の資源開発としては、東シナ海のガス田もありますが、これは「日本 VS 中国」になります。
中国、カンボジアに援助攻勢
334億円の融資、航空機供与
2012.06.13
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120613/chn12061320470006-n1.htm
中国の人口は、日本の10倍以上です。
日本では一軒の家に夫婦と子供が2人の4人家族あたりが普通ですが、
そこに、あと36人が加わって、
40人家族になったようなものです。想像してみて下さい\(◎o◎)/!
エアコンも1台で良かったのに、10台、要るんです。
車も1台で足りていたのに、10台、要るんです。
お菓子も1袋しか食べなかったのに、10袋、食っちゃうんです(^^;
「まあ、そのくらいは、いいんじゃないかなぁ・・・」
なんて遠慮してお人好しをやってると
トンでもないことになるんです。(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
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(1447) エネルギー“爆食”の中国(『大衝突』池上彰著より)
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