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◆ 久々に現れた米国大統領らしい人物

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正論
久々に現れた米国大統領らしい人物…
価値の転換訴えたトランプ氏
評論家・西尾幹二

2017.11.16
(http://www.sankei.com/column/news/171116/clm1711160006-n1.html )

評論家・西尾幹二氏(提供写真)
評論家・西尾幹二氏提供写真


トランプ米国大統領のアジア歴訪を主にテレビを通じてじっくり眺めた。

私は子供の頃から大統領といえば米国大統領のことだと思っていた。

そのイメージは
・ 大きい、
・ 強い、
・ 堂々としている
などで、象、戦艦、甲虫、大資本家、帝国主義者などである。


フィリピンや韓国やトルコの代表も「大統領」の名で呼ばれているが、
ピンと来ない。

体が大きく、断固たる「意志」の表明者であるトランプ氏は、
久々に現れた米国大統領らしい人物である。


自己自身のために生きる時代


そこに「粗野」とか「軽率」とか「無遠慮」といった
礼節の欠如を示す形容がついて回るのが、彼の特性とされるが、
果たしてそうだろうか。

彼の風貌をくりかえし見て、
どこか憎めない、愛嬌(あいきょう)のあるところが
常に感じられた。


言葉の使い方も緻密で、外国での演説の全文を翻訳で読んだが、
あれだけの分量を情熱を込めて語り切った能力は大変なものだと思った。


白人比率が下がり続ける今の米国社会は、人種間対立が激しい。


南北戦争における南軍の将の銅像
人種平等の過激派の暴徒によって
引き倒される事件があった。


中国の文化大革命を思い出させる
歴史破壊
米国で起こったのだ


しかも米国でも日本でも
メディア
歴史破壊を非難せず
暴徒に味方した


トランプ氏はそうではなかった

彼は白人至上主義者も過激派の暴徒もどちらもいけないと両方を叱責した。

メディアはそれすらも許さなかった。

白人至上主義者を一方的に非難することを
トランプ氏に求め、
それをしない彼を弾劾した。


遠くから見ていた私は彼に同情し、
米国社会の深い病理
深淵(しんえん)を覗(のぞ)き見た。

トランプ氏は
米国社会に、
ひいては全世界に
「価値の転換」を求めているのである。


今度のアジア歴訪で
彼は機会あるごとに「アメリカ・ファースト」を叫んだ。

ベトナムでは米国を他国に利用させないとまで言った。

米国に依存する弱小国の甘えを
もうこれ以上認めない、という宣言である。

実は、今の世界は
あらゆる国々が自己自身のために生きることを、
臆面もなく主張する時代に入っているのである。


感傷に満ちた世界を拒絶する


米国も例外ではない、と彼は言いたいまでだ。

トランプ氏の物言いの臆面のなさは、
今直面している世界の現実の、
歯に衣(きぬ)を着せない表現だと思えばよい。

エゴティズム(自己愛)を認め合うことの方が、
人道や人権の仮面をかぶったグローバリズムより
よほど風通しがよいと言いたいのだろう。


彼はストレートで、非妥協的で、不寛容ですらある。

米国社会に、ひいては全世界に
「反革命」の狼煙(のろし)を上げているので、
改革とか革命とか共生とか協調とか団結といった、
人類が手を取り合う類いの感傷に満ちた世界に
NO!を突きつけ、
あらゆる偽善に逆襲しようとしている。


今度のアジアの旅で笑ってしまった場面は、
11月9日に習近平国家主席と対座して、
28兆円の取引が公開された際の習氏の演説内容である。

自国を世界に開放しすぎた結果の米国の
引き締め策が「アメリカ・ファースト」だが、
自国を世界にいっさい開放しない強権と専制の国である中国が、
これからの開かれた国際社会の協調をリードするのは中国だと
あえて言ったことである。


これは笑い話であり、誰も信じまい。

しかし28兆円に驚かされて
本気にする愚かなメディアもあるかもしれない。

28兆円の交換文書は契約書でも何でもなく、
大まかな計画メモにすぎないのに。


日本には胆力備えた意志が必要


国際会議における日本は残念ながら存在感が薄かった。

各国が
自己自身のために生きる意志を
何のためらいもなくむき出しにし始めた時代であるのに、
日本にはこの意志がない


極東の運命を決める会議で
日本は20世紀前半までは主役であった。

今はわずか
東南アジア諸国連合(ASEAN)や豪印との友好によって
米国に協力する
  ――それは外交的には好感されているが――
以外には力の発揮のしようがない。


何よりも、安倍晋三首相は
北朝鮮の脅威に対抗する政策において
「日米は完全に一致」したと
日米会談の直後に公言した。

「一致」という言葉は
こういう場面では言ってはならない禁句のはずだ。

これは日本がどんなに理不尽なことを言われても、
百パーセント米国の命令に従います、
と今から誓約しているような言葉遣いである。


安倍内閣は「人づくり革命」とか「働き方改革」とか
革命や改革を安易に乱発し、
左翼リベラル政治の臭いを漂わせている。

一体どうなっているのだろう。


米国と日本はいま、半島有事ばかりを気にしているが、
それは尖閣の危機でもある。

中国は尖閣を落とせば台湾を軍事的に包囲できる。

台湾奪取の布石となるこの好機を習氏が見逃すはずはない。

あらゆる点で「意志」を欠いている日本に求められているのは、
必ずしも首相の雄弁ではなく、
胆力であり、決断力である。(にしお かんじ)


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